児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「これまで送ってもらった写真、どうしようかな」。10代半ばの少女は数年前、スマートフォンのゲームで知り合った男にこう脅された。という行為とグルーミング罪と強制わいせつ罪

 画像送信を要求するとグルーミング罪(一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金)だというのです

刑法
(十六歳未満の者に対する面会要求等)
第百八十二条 
3 十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為(第二号に掲げる行為については、当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る。)を要求した者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
二 前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること。

 しかし、脅迫して要求するのは、強制わいせつ未遂(6月~10年)です。強要未遂(~3年)という裁判例もたくさんある。

丸亀支部r29.5.2
第1 Aに対する児童ポルノ製造
第2前記Aが13歳未満であることを知りながら, 同人に強いてわいせつな行為をしようと考え,年月日頃,前記当時の被告人方において,前記SNSを使用して,Aの携帯電話機に「個人情報とか恥ずがしい写メも全部ネットに流す」, 「裸写真を送れ」などと記載したメッセージを送信するとともに,前記第1記載の犯行により製造した同人の性器等が露出した静止画データを同人使用の携帯電話機に送信した上, 「流す」と記載したメッセージを送信するなどし,その頃,都内にいた同人に閲読させ, もしその要求に応じなければその電話番号や住所等の個人情報をインターネット上に流布されるかもしれない旨同人を畏怖させて脅迫し,同人に,裸体にさせてその静止画像等を撮影させるなど強いてわいせつな行為をしようとしたが, 同人がこれに応じなかったため,その目的を遂げなかった
適用法令
1 罰条
(1) 判示第1の所為児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項, 2項, 2条3項3号(2) 判示第4の所為刑法 179条, 176条

 それを、グルーミング罪(一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金)の例とすると、軽く処罰することになります。罰金で済む。
 それはおかしいので、グルーミング罪の趣旨は、強制わいせつ未遂・強要未遂に至らない要求行為を処罰することにあると説明する必要がある。

夏休み、グルーミングに注意! 「写真送って」、巧妙に要求 ―身体的被害に発展も
2023年08月12日07時11分

【図解】グルーミングの手口
悩みがある

相談に乗るよ
親身に話を間<
ぼくも写真送るからあなたも送って

この写真なら

裸の写真も送って

それは無理 これまで送ってもらった写真どうしようかな

脅迫拡散

 わいせつな目的を隠して子どもに接近し、手なずける「グルーミング」の被害が後を絶たない。7月の刑法改正で、16歳未満に性的な画像を要求する行為が禁じられたが、SNSに触れる機会が多い夏休みは被害の増加が懸念される。有識者は「子どもの心理につけ込み、要求を断れなくする」と巧妙な手口に警戒を呼び掛ける。
法務省、「グルーミング」罪新設検討 子どもの性被害防止

 「これまで送ってもらった写真、どうしようかな」。10代半ばの少女は数年前、スマートフォンのゲームで知り合った男にこう脅された。親身に話を聞いてくれていたため、求められるまま写真を送ると要求はエスカレートした。「裸の写真を送って」。これまでに送った写真の拡散をちらつかされ、断れなくなった。写真はその後、SNSで販売されてしまった。
 子どもの心理につけ込むグルーミングの手口はさまざまだ。有識者は「まじめと思われるのを嫌う子どもに『まじめだね』と言って断りにくくし、性的画像を送らせる」と指摘。画像を手に入れるまでは、強要したり脅したりせず、気軽な調子で接する手口も多いという。
 デジタル性暴力の被害者支援などに取り組むNPO法人「ぱっぷす」(東京)の金尻カズナ理事長は、法改正により、16歳未満への性的な画像の要求が罰せられるようになったことを評価。「大人は、写真を送った行為を責めてしまいがちだ。子どもも大人も、写真を要求すること自体が悪いという認識を持てば、周囲に相談しやすくなる」と語る。
 追手門学院大の桜井鼓准教授(犯罪心理学)が昨年までに実施した調査では、20~25歳の男女約1万8000人のうち、18歳までに性的な写真を他人に送ったことがある人は全体の2.4%に上った。性的な写真を送った人の多くがその後、身体的性被害を受けたという海外の調査結果もあるという。
 桜井准教授は「2人だけの秘密」などと口止めする行為は性的グルーミングの特徴だとした上で、「早い段階で相手の意図を見抜き、やりとりをやめることが大切だ」と話している。

「大人は、写真を送った行為を責めてしまいがちだ。子どもも大人も、写真を要求すること自体が悪いという認識を持てば、周囲に相談しやすくなる」というのですが、児童ポルノ提供目的製造罪・提供罪の主体には法文上児童自身も含まれ、児童が裸写真を送る行為も犯罪とされていて、実際にも児童も正犯・共犯で補導・検挙されることがありますよね。よく整理されてないような感じです。