判示第1の2の3郷ポルノの事実摘示は「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」という法2条3項3号の法文を丸写ししただけで、具体的な事実が記載されていないので理由不備ですよね。
3号ポルノの児童は全裸か半裸ですから具体的には「乳房を露出する姿態」とか「陰部を露出する姿態」となるはずで、「衣服の全部又は一部を着けない」という記載になるはずがありません。
刑事判決書起案の手引き
第2 事実摘示の方法・程度一般
153 1 罪となるべき事実は,それがいかなる構成要件に該当するかが,一読して分かるように,明確にこれを記載しなければならない。そのためには,当言葉犯罪の構成要件要素に当たる事実のすべてを漏れなく記載しなければならない。そのほか,事案に応じいわゆる犯情の軽重を示す事実をも記載する方がよい。
154 他方,他の犯罪をも認定したのではないかと疑わせるおそれのある表現は,できる限り避けなければならない(例えば,屋内での強盗被告事件において,住居侵入の点については有罪の認定をしない事案で.「A方に押し入り」などの言葉を用いることは,たとえ情状を明らかにするつもりであっても,むしろこれを避けるべきである。)。
155 2「( 罪となるべき事実)」の見出しの下に摘示される事実は,それが本来の罪となるべき事実に当たるときはもとより,そうでない事実であっても,証拠によって認定されたものでなければならない。「(犯行に至る経緯)」等の見出しの下に摘示される事実についても同様である。
156 3 罪となるべき事実は,できる限り具体的に,かっ,他の事実と区別できる程度に特定して,これを摘示しなければならない。そのためには,犯罪の日待・場所はもとより,犯罪の手段・方法・結果等についてもできる限り具体的にこれを記載しなければならない。このことは既判力の及ぶ範囲や訴因との同一性を明確にするためにも必要である。
157 4 包括ー罪においては,犯罪の日時・場所・手段等について包括的な判示が許される。
158 5 事実はできる限り明確に摘示しなりればならない。したがって,日時・場所・数量等が証拠によって明らかに認められるのに「ころ」「付近」「等」「くらい」などの言葉を用いることは慎むべきである。
6 被害者の年齢については,それが構成要件に関する事実(刑176後等)である場合を除き,必ずしも檎示の必要はないが,犯罪の成否(脅迫・恐喝・強盗罪等)及び犯情(殺人・傷害罪等)に影響を与えるような場合には,これを摘示するのが通例である。
その方法としては, 「A (当時00歳)」とするのが通例である。 「B(当00年)」, 「C (平成O年O月O日生)」とする例もないではないが, 「当」は,犯罪時の年齢か判決時のそれかが必ずしも明確ではない。
7 犯行に用いた凶器等を罪となるべき事実の中に判示する場合,それが主文で没収を言い渡した物であるときは,河一性を明示するため,裁判所の押収番号(96参照)を記載することが望ましい(168参照)。没収を言い渡さなかった物であるときでも,証拠の標目中に掲げた証拠物との同一性を明示するため,その押収番号を記載する例が多い。
8 事実の摘示は,冗漫にならないように留意しなければならない。
9 事実摘示の末尾に,認定した事実に対する裁判所の法律的評価を明らかにする趣旨で,例えば, 「もって,自己の職務に関し賄賂を収受し」「もって横領し」等の言葉を記載する事例が多いが,この場合, 「自己の職務に関し賄賂を収受し」,「横領し」等の言葉は法律的評価を示すものにすぎないのであって,それ自体犯罪行為の事実的表現ではないことに留意すべきである。
10 併合罪の場合には,各個の犯罪事実ごとに,第1,第2というように番号を付け,かつ,行を改め,科刑上のー罪の場合には,そのようにせずに各事実を続けて摘示するのが通例である(なお, 214, 319参照)。
11 事実を摘示するに当たっては,起訴状等に記載された事実を引用することが許される(規218)。しかし,起訴状等の記載は裁判所の最終的な判断に必ずしも完全に一致するとは限らないから,漫然とこれを引用することがないように留意しなければならない。
【判例番号】 L07451418
児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,わいせつ略取,強制わいせつ致死,殺人,死体遺棄,死体損壊,電汽車往来危険被告事件【事件番号】 新潟地方裁判所判決
【判決日付】 令和元年12月4日
【掲載誌】 LLI/DB 判例秘書登載
主 文被告人を無期懲役に処する。
未決勾留日数中370日をその刑に算入する。理 由
(罪となるべき事実)
第1 被告人は,自分の性的好奇心を満たす目的で,平成29年11月27日,新潟県上越市(以下略)所在の新潟県上越警察署において,以下の各動画データを記録した児童ポルノである記録媒体を内蔵した携帯電話機1台を所持した。
1 他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データ1点
2 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データ1点
第2 被告人は,下校中の■■■(当時7歳。以下「A」という。)に対して強いてわいせつな行為をしようと考え,平成30年5月7日午後3時20分頃,新潟市西区(以下略)付近路上(以下「略取現場」という。)において,その場所を歩行中のAの背後から軽自動車を運転して接近し,車の右前部をAに衝突させ,転倒したAを抱きかかえて車の後部座席に乗せ,その首を手で絞め付けてAを気絶させ,車をその場所から発進させてAを連れ去り,もってわいせつの目的でAを略取するとともにAの反抗を抑圧した。そして,その日の午後3時28分頃からその日の午後3時59分頃までの間に,同区(以下略)所在の「□□広場」(以下「広場」という。)駐車場に駐車中の車内において,Aが13歳未満であることを知りながら,Aのズボンとパンツを脱がせて,その膣内に手指を挿入するなどし,もって強いてわいせつな行為をした。さらに,その頃,その場所において,Aが意識を取り戻して声を上げたことから,Aを気絶させるため,Aが死ぬかもしれないと認識しながら,Aの首を手で絞め付けて圧迫し,よって,その頃,その場所において,Aを頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害した。
第3 被告人は,その日の午後10時25分頃,同区(以下略)付近のB株式会社新潟支社△△線内において,Aの死体を同線軌道上に置いて放置し,その日の午後10時30分頃,同社○×駅方面から同社×○駅方面に向けて走行してきた電車にAの死体を轢過させて,その頸部を離断させるなどし,もって死体を遺棄,損壊するとともに,電車の往来の危険を生じさせた。