児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

15歳への青少年入れ墨罪で略式命令後、その青少年への入れ墨を含む医療行為を医師法違反として逮捕した事案

 無資格の医療行為は営業犯なので数回でも一罪になると思いますが、青少年条例違反罪は、医師法違反とはかぶらないという判断なんでしょうね。一事不再理とか二重起訴とか疑います。
 同時処理できるんじゃないですか?

入れ墨で医師法違反容疑 彫師の男逮捕、広島県警
2010.09.24 共同通信 
 広島南署は24日、医師法違反の疑い容疑者を逮捕した。同署は、容疑者が主に暴力団関係者を相手にしていたとみており、利益の一部を渡していた可能性もあるとみて金の流れを調べる。
 厚生労働省は2001年、皮膚に針で色素を注入するのは医療行為で、医師免許が必要と通知。同署によると、入れ墨を彫る行為を医師法違反容疑で立件するのは全国的にも珍しいという。
 逮捕容疑は07年3月〜10年7月、医師の免許がないのに広島市中区三川町の店舗で、派遣スタッフの男性(31)ら男女4人の皮膚にバラ模様の入れ墨などを彫った疑い。
 容疑者は2日、少女に入れ墨を彫ったとして県青少年健全育成条例違反の疑いで逮捕され、22日に罰金30万円の略式命令を受けていた。

無資格で入れ墨 容疑の男再逮捕 広島南署=広島
2010.09.25 読売新聞
 医師免許を持たずに客に入れ墨をしたとして広島南署は24日、彫り師を医師法違反(無資格医業)容疑で再逮捕した。県警によると、美容目的以外での同法違反の適用は、全国で2例目という。
 発表によると、容疑者は2007年3月〜今年7月頃、同市中区で経営する入れ墨施術店で、無資格で男性3人と無職少女(15)の計4人に入れ墨を施した疑い。
 同署は今月2日、この少女に入れ墨をしたとして、容疑者を県青少年健全育成条例違反の疑いで逮捕。同店などへの捜索で医療器具や顧客データを押収、医療行為を繰り返していたと判断した。
読売新聞社

http://www.pref.hiroshima.lg.jp/soumu/bunsyo/kenhouki/reiki_honbun/r2000447001.html
広島県青少年健全育成条例
(いれずみを施す行為の禁止)
第四十一条 
何人も、正当な理由がある場合を除き、青少年に対し、いれずみを施し、受けさせ、又は周旋してはならない。
第四十八条 
4 第三十三条の二第二項、第三十九条第二項、第四十条又は第四十一条の規定に違反した者は、五十万円以下の罰金に処する。

医師法
(昭和二十三年七月三十日法律第二百一号)
第十七条  医師でなければ、医業をなしてはならない。
第三十一条  次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  第十七条の規定に違反した者
二  虚偽又は不正の事実に基づいて医師免許を受けた者
2  前項第一号の罪を犯した者が、医師又はこれに類似した名称を用いたものであるときは、三年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

参考までに

岡山県青少年条例の解説
(いれずみを施す行為の禁止)
第23条何人も、正当な理由がある場合を除き、青少年に対し、いれずみを施し、受けさせ、又は周旋してはならない。
[解説}
1 本条は、永久に消えることのないいれずみを青少年の身体に施すことを禁止するものである。
2 「正当な理由がある場合」とは、医学、整形、美容等のために行う場合で、客観的に青少年の健全な育成を害しないと明白に判断することができる場合に限る。
3 「いれずみ」とは、肌に針、小刀等で、傷をつけ、そこに墨、朱等の色料を刺入して着色し、永久的に絵画、文字等を表したものをいう。
4 「施し」とは、いれずみを自ら施す行為であり、「受けさせj とは、第三者をしていれずみを施させる行為をいい、青少年の意思云々を問わない。

医師法違反は包括一罪だというのは感覚的にわかりますね。裁判例でもそうなってる。

東京地方裁判所平成20年2月4日
(犯罪事実)
 被告人は,東京都江戸川区<以下略>所在のAクリニックを開設管理していた医師であるが,同クリニック事務員Bほか5名と共謀の上,同人らが医師でないのに,別紙一覧表記載のとおり,平成19年8月21日ころから同年9月7日ころまでの間,8回にわたり,同クリニックほか1か所において,□□□□ほか5名に対し,問診,薬剤処方等の医行為を行うなどし,もって医業をなしたものである。
(適用法令)
罰条
     (包括して)刑法60条,医師法31条1項1号,17条
刑種の選択  所定刑中懲役刑を選択
刑の執行猶予 刑法25条1項
(量刑の事情)
 本件は,クリニックを営む医師である被告人が,自らが病気入院中,投薬等を希望する6名の通院患者らに対し,のべ8回にわたり,同クリニックの看護師や事務員らをして,問診,薬剤処方等の医療行為をさせたという事案である。

札幌地方裁判所平成16年10月29日
判例タイムズ1199号296頁
(法令の適用)
 罰       条
  判示第1の行為につき 包括して刑法60条,平成13年法律第87号による改正前の医師法31条1項1号,17条

東京地方裁判所平成14年10月30日
判例時報1816号164頁
判例評論545号36頁
  (犯罪事実)
 被告人両名は、東京都港区芝《番地略》甲野四〇一脱毛サロン「乙山」三田店を夫婦で経営するものであるが、従業員C子、同D子及び同E子と共謀の上、医師でないのに、平成一三年五月三一日ころから平成一四年三月一四日ころまでの間、同店内において、業として、F子、G子、H子、I子ほか多数の者に対し、多数回にわたり、店内に設置したレーザー脱毛機器を使用して、その手甲、膝、口、脇等の皮膚にレーザー光線を照射して体毛の毛根部を破壊する方法による脱毛の医行為を行い、もって、医師でないのに、医業を行ったものである。
 (証拠)《略》
 (法令の適用)
 〈被告人両名について〉
罰条 包括して刑法六〇条、医師法三一条一項一号、一七条
刑種の選択 懲役刑及び罰金刑の併科刑を選択

 被疑者側としては、この略式命令を確定させた方が有利になるかもしれない。
 検察官としては、略式命令が確定するとややこしくなります。