「単純所持罪で逮捕される」と不安をあおる弁護士がいるので再掲しておきます
警察庁人事課教養旬報h27年9号
自己の性的好奇心を満たす目的による児童ポルノ所持罪の新設
B課長:「自己の性的好奇心を満たす目的による児童ポルノ所持罪」(第7条第1項)は、一般的には「単純所持罪」と呼ばれている罰則だが、「自己の性的好奇心を満たす目的」が要件となっているため、警察庁では「自己性的目的所持罪」という略称を使っている。
A巡査:「自己の性的好奇心を満たす目的」は、どのように立証すればいいのでしょうか。
B課長:所持の態様、分量、所持している対象の内容等の客観的状況からの推認によって立証する必要があるとされている。
したがって、例えば、十数年前に発刊された少女ヌード写真集1冊が押入にほこりをかぶって保管されていたような場合には、自己の性的好奇心を満たす目的が客観的状況から推認されるとは言えないだろうね。
A巡査 ごの罰則では、「自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者でありかっ当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。」と定められていますが、第三者から嫌がらせなどで児童ポノレメをメールで送りつけられた後に、引き続き自己の性的好奇心を満たすために所持した場合は、「自己の意思に基づいて所持するに至った者」に該当しないのでしょうか。
B課長:それは、個別具体的な証拠により認定すべき事柄だが、一般論としては、送りつけられた時点では「自己の意思に基づく」ものでなかったとしても、その後、メールに添付された児童ポルノ画像を聞き、当該ファイルが児童ポルノであることを認識した上で、自己の性的好奇心を満たす目的で、これを積極的な利用の意思に基づいて自己のパソコンの個人用フォルダに保存し直すなどしたときは、その時点で新たに「自己の意思に基づいて所持するに至った者」 に該当すると考えられている。
A巡査:この罰則は、附則第1条第2項において、改正法施行の日から1年聞は適用しないこととされているので、罰則の適用開始は平成27年7月15日からということになりますね。
B課長そうだね。
7月14日までは、この罰則は適用できないことに留意する必要があるんだ。
ただし、「自己の意思に基づいて所持するに至った」時点が改正法施行前及び施行後1年間の猶予期間内であっても、猶予期間経過後に引き続き「自己の性的好奇心を満たす目的」で所持している場合には、猶予期間経過後の所持をもって処罰し得るんだ。
A巡査・では、例えば、地域警察官が職務質問に伴う所持品検査で児童ポルノを発見した場合には、自己性的目的所持罪で現行犯逮捕できるんでしょうか。
B課長:地域警察官が所持品検査で発見した児童ポルノ、正確には児童ポルノと恩われるものの被写体が18歳未満かどうかは、医師の鑑定又は被写体の特定を待たなければ、はっきりしないし、自己性的目的所持罪は、「自己の性的好奇心を満たす目的」及び「自己の意思に基づいて所持するに至った者」を客観的・外形的証拠により立証することが必要とされているため、それらが明白でなければ、現行犯逮捕は困難だろうね。
A巡査:他に注意すべきことはありますか。
B課長:提供等の目的を伴わない児童ポルノ所持の処罰化については、これまで数度にわたり改正法案が発議されたが、プライパシーを侵害するおそれがあることや捜査機関の権限の濫用のおそれを指摘する意見等もあったことから、成立するに至らなかったんだ。
このような経緯から、今回新設された自己性的目的所持罪は、「自己の性的好奇心を満たす目的」、「自己の意思に基づき所持するに至った者であり、かっ、当該者であることが明らかに認められる者」と処罰範囲が限定されたんだ。
また、改正法案を審議した参議院法務委員会においては、「第7条第1項の罪の適用に当たっては、同項には捜査権の濫用を防止する趣旨も含まれていることを十分に踏まえて対応すること。」との附帯決議がなされている。
したがって、本罪の適用を慎重に行うため、警察庁では、皇旦生色目的所持罪の適用に当たっては、全ての事案について事前報告を求めていることから、認知した段階で本部少年担当課に速報して指示を受ける必要があるんだよ。