定義上、主体は女性に限定されてませんので、男性による売春も可能と解釈されています。
話としては聞きますけど 裁判例では見つかりません。
売春防止法
第二条(定義)
この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。
第三条(売春の禁止)
何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない
1審判決
尼崎簡裁s29.5.29
被告人aを罰金五千円に、同b子を罰金弐千円に各処する。
右罰金を完納することが出来ないときは金弐百円を壱日に換算した期間その被告人を労役場に留置する。
理由
罪となるべき事実
第一、被告人aは昭和二十八年十一月二十四日頃同被告人肩書住居の旅館営業所内第五号室において雇人である相被告人bが米国軍人pから金千五百円貰う約束で売春するためその場所を提供し
第二、被告人bは前記同日頃前記同場所において不特定の相手方である米国軍人pから報酬として金千五百円貰う契約の下に同人と性交し以て売春し
たものである
・・・・
尼崎市売春等取締条例違反被告事件最高裁判所第2小法廷決定/昭和30年(あ)第155号昭和32年6月8日
【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集11巻6号1638頁
最高裁判所裁判集刑事119号409頁
刑事裁判資料229号199頁
主 文
本件各上告を棄却する。
理 由
被告人両名の上告趣意について。
所論尼崎市売春等取締条例三条は、「売春をした者は五、〇〇〇円以下の罰金又は拘留に処する(一項)、常習として売春をした者は三月以下の懲役又は五、〇〇〇円以下の罰金に処する(二項)」と規定しているのであるが、この売春の意義に関し、同二条は「この条例で売春とは報酬を受け若しくは受ける約束で不特定の相手方と性交又は性交類似行為をすることをいう」と規定しているのであつて、この所罰の対象となるものは必ずしも女性のみに限らないこと原判示のとおりであるから、女性のみを処罰の対象とするが故に同条が憲法一四条に違反するとの論旨は、ひつきょう右条例二条の趣旨を正解せざるにもとずくものと云わなければならない。
また同条例には、売春行為の相手方となるものを処罰する規定を欠くことは所論のとおりであるけれども、右条例三条は、「報酬を受け若しくは受ける約束で」性交又はこれと類似の行為をするものを処罰するのであり、(この行為者に関するかぎり男女を差別しないことは前述のとおりである)すなわち「報酬を受け若しくは受ける約束で」ということは同条による処罰要件であつて、対価を払つて、その相手方となるものとはもとより、行為の態様を異にすることであり、かかる要件の有無によつて一方を処罰し、他方を処罰しないとするのも、一に刑事政策上の理由にもとずくものに過ぎず、所論のように、男尊女卑の思想に出でて、性別の故に、かかる区別をしたものでないことはきわめて、明瞭である。所論違憲の主張は、所詮その前提を欠くものというの外なく論旨は刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
昭和三二年六月八日
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 藤 田 八 郎
裁判官 河 村 大 助
裁判官 奥 野 健 一
この判例の1審も女性売春婦の事件です。
売春防止法違反被告事件
最高裁判所第3小法廷決定/昭和37年(あ)第1838号
昭和37年12月18日
【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集16巻12号1713頁
最高裁判所裁判集刑事145号577頁
刑事裁判資料229号3頁
【評釈論文】 法曹時報15巻2号125頁主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人山口貞夫の上告趣意第一点について。
所論は、売春防止法五条は女性のみを対象として売春の予備的行為を処罰するものであつて、両性の本質的平等に反する規定であり、憲法一四条に違反する旨主張するが、売春防止法五条は女性のみを処罰の対象とするものではないから、所論違憲の主張は、その前提を欠き、適法な上告理由に当らない。
同第二点について。
所論は、量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
昭和三七年一二月一八日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 河 村 又 介
裁判官 垂 水 克 己
裁判官 石 坂 修 一
裁判官 五 鬼 上 堅 磐
裁判官 横 田 正 俊