児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

高松高裁H27.9.15と「年齢を知らないことを理由として〜処罰を免れることができない」という規定

 e-govで検索すると、次の3法にしかない規定で、いずれも主体が使用者・営業者に限定されており、そういう者は継続的な関係があるので、重い年齢確認義務を負わせるという趣旨です。

児童福祉法
第六十条
○4 児童を使用する者は、児童の年齢を◆知らないことを理由◆として、前三項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
第五十条
2第二十二条第三号若しくは第四号(第三十二条第三項において準用する場合を含む。)、第二十八条第十二項第三号、第三十一条の三第三項第一号、第三十一条の十三第二項第三号若しくは第四号又は第三十一条の十八第二項第一号に掲げる行為をした者は、当該十八歳未満の者の◆年齢を知らないことを理由として◆、前項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第九条
 児童を使用する者は、児童の◆年齢を知らないことを理由として◆、第五条、第六条、第七条第二項から第八項まで及び前条の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。

 未成年者喫煙禁止法違反の行為主体は営業者に限定されていないので、故意犯となっています。重い年齢確認義務を科す根拠がないので、年齢確認義務がないということです。

改訂特別刑法〔4:風紀・防犯、警察取締、労働〕(安西温著・警察時報社・平成3年)
煙草および器具の販売
酒類の未成年者に対する場合と異なって、販売する主体になんらの制限がなく、営業者であってその業態上煙草および器具を販売する者に限らず(菓子小売業者につき、長崎家裁昭和三八・九・九家裁月報一六・三・二ハ四)、また、営業者であると、はたまた営業者・代理人・同居者・雇人その他いずれ従業者であるとを問うところなく、刑事責任能力がある限り、すべての人が処罰の対象となる(喫茶店のウエイトレスが未成年の客の求めに応じて買いおき煙草を販売した事案につき、名古屋高裁昭和四0・三・一八)。
従って、営業者たる販売者がその代理人その他の従業者の違反によって責任を負うとする未成年者飲酒禁止法四条二項のごとき規定はない。また、販売のみを処罰し供与を処罰しないこと、販売の相手方が未成年者でなければならないことも同法と異なる。しかし、相手方が未成年者であること、その未成年者じしんがその自用に供するものであることを未必的にせよ認識して販売することを必要とする

未成年者喫煙禁止法
(明治三十三年三月七日法律第三十三号)
最終改正:平成一三年一二月一二日法律第一五二号
第一条  満二十年ニ至ラサル者ハ煙草ヲ喫スルコトヲ得ス
第二条  前条ニ違反シタル者アルトキハ行政ノ処分ヲ以テ喫煙ノ為ニ所持スル煙草及器具ヲ没収ス
第三条  未成年者ニ対シテ親権ヲ行フ者情ヲ知リテ其ノ喫煙ヲ制止セサルトキハ科料ニ処ス
○2 親権ヲ行フ者ニ代リテ未成年者ヲ監督スル者亦前項ニ依リテ処断ス
第四条  煙草又ハ器具ヲ販売スル者ハ満二十年ニ至ラザル者ノ喫煙ノ防止ニ資スル為年齢ノ確認其ノ他ノ必要ナル措置ヲ講ズルモノトス
第五条  満二十年ニ至ラサル者ニ其ノ自用ニ供スルモノナルコトヲ知リテ煙草又ハ器具ヲ販売シタル者ハ五十万円以下ノ罰金ニ処ス
第六条  法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ従業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ前条ノ違反行為ヲ為シタルトキハ行為者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ対シ同条ノ刑ヲ科ス

 丸亀簡裁は、故意犯であるにもかかわらず、あたかも過失犯であるかのように解釈したと思われます。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S11769127.html?ref=nmail_20150523mo&ref=pcviewpage
店員に罰金、店は無罪 たばこ、15歳に販売 丸亀簡裁で判決
2015年5月23日05時00分
 コンビニにあるタッチパネル式の年齢確認システムで、「私は20歳以上です」と答えた15歳(当時)の少年にたばこを売った行為は、犯罪にあたるのか。この点が争われた裁判で、香川県の丸亀簡裁が40代の元店員の男性に、求刑通り罰金10万円の判決を言い渡していたことがわかった。少年が「ほおににきびがあるなど、あどけない顔」だったのが決め手となった。
 男性が問われたのは、未成年者喫煙禁止法違反の罪。監督を怠ったとされた店も同罪で起訴されたが、システムを導入していたなどとして、無罪(求刑罰金10万円)とされた。店員と検察の双方が控訴。高松高裁で審理が続いている。
 少年にたばこを売ったのは、大手コンビニ「ローソン」(本社・東京都品川区)のフランチャイズ店。昨年10月の判決によると、男性は2013年4月22日夜、少年(当時高校1年生)が未成年で、喫煙するかもしれないと認識しながら、たばこ「メビウス」2箱(820円)を売った。
 公判で男性は「未成年だとわからなかった」などと起訴内容を否認した。しかし東根正憲裁判官は、少年が「一見して未成年者であるとわかる顔立ち」と指摘し、証言などから、男性は少年が年齢確認ボタンを押すころに顔を見たと認め、「レジ対応が忙しいなどとして、身分証を確認せずに販売した」と結論づけた。

 控訴審判決は、故意犯であると正解したものだと思われます。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150915-00050063-yom-soci
昨年10月の1審判決は「少年は頬ににきびがあるあどけない顔で、一見して未成年者とわかる顔立ちだった」として有罪にした。

 控訴審判決は、〈1〉元店員が少年を見たと確認できるのは2秒だけ〈2〉少年は身長1メートル67で成人でもおかしくなく、黒いジャージー姿で、未成年者と気づかないこともある――などとし、「未成年者と認識して販売したと認めるには合理的疑いがある」と指摘した。

 コンビニ店も同法違反で起訴されたが、1審判決は未成年者に販売しないよう注意を尽くしていたとして無罪。控訴審判決は元店員が無罪で処罰できないとし、検察側の控訴を棄却した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150915-00000021-asahi-soci
15歳にたばこ販売、コンビニ店員に逆転無罪 高松高裁
朝日新聞デジタル 9月15日(火)10時21分配信

 当時15歳の少年にたばこ2箱を売ったとして、大手コンビニ「ローソン」(本社・東京)のフランチャイズ店を運営していた香川県内の会社と40代店員が、未成年者喫煙禁止法違反に問われた事件の控訴審判決が15日、高松高裁であった。半田靖史裁判長は、店員に求刑通り罰金10万円を宣告した一審判決を破棄し、逆転無罪を言い渡した。会社も一審判決通り無罪とし、検察側の控訴を退けた。

 一審判決によると、少年は店内のタッチパネル式年齢確認システムで「20歳以上」と答え、店側も身分証の提示は求めなかった。全国のコンビニ11社が加盟する日本フランチャイズチェーン協会によると、同様のシステムは加盟6社の約4万店舗が導入。今後は、未成年へのたばこ販売を防ぐ実効策が問われそうだ。

 半田裁判長はこの日の判決で、防犯カメラの映像などから「店員が少年の顔を見た時間は極めて短時間」と指摘。当時の少年の身長が約167センチで成人男性でもおかしくなく、「未成年者と判断、認識していたと認めるには、合理的な疑いがある」と述べた。

 自白させられています

http://digital.asahi.com/articles/ASH9C3D32H9CPLXB008.html

店員が捜査段階で、未成年者と認識していたと繰り返し認めた点については、その認識が処罰の要件とは知らず、それほど重大な罪になるとも思わなかったため、妥協したことが十分考えられると判断。いったん認めた以上、否認は困難であるとして自白にいたったと考えられると結論づけた。会社についても、店員に違反行為がない以上、処罰できないとして、一審の無罪判決を維持した。

 昨年10月の一審・丸亀簡裁判決は、少年が当時高校1年生で「ほおににきびがあり、あどけない顔で、一見して未成年者とわかる顔立ち」だったと指摘。店員が2013年4月、少年の顔を見て、自ら喫煙するかもしれないと認識しながら、忙しいなどの理由で身分証を確かめず、たばこを売ったとして有罪を言い渡した。

 一方、会社は年齢確認システムの導入に加え、店員に未成年者への酒やたばこの販売禁止を周知する「確認表」に毎月、署名させるなど「事業主として必要な注意を尽くした」として、無罪とした。

 検察側と弁護側の双方が控訴。検察側は、年齢確認システムは「従業員が、未成年者だと知りながらたばこを販売するのを防ぐ措置としては、全く効果がない」と主張。確認表による注意喚起も形式的なもので、刑事責任は免れないなどとして、一審判決の破棄を求めた。弁護側は、店員が少年の容貌(ようぼう)を確認したのは一瞬で、「未成年者だと認識していた」とする一審判決には合理的な疑問が残ると指摘。さらに店員が捜査段階で「見た感じ未成年だとわかった」と話したのは、少年にたばこを売った1週間後であり、1日千人を接客する中で少年のことを覚えているはずがなく、自白に信用性はないと主張していた。

 高松高検は「主張が認められず遺憾。今後は判決内容を精査し、上級庁と協議した上、適切に対応したい」との談話を出した