150円払って富山地検で閲覧してきましたが、TKCに出てました。
保育園の身体検査画像の乳首に興奮しちゃうのが一般人だということです。
大阪高裁の言い回しとは違うので、裁判官が有罪前提で編み出したと思われます。
「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」という3号ポルノの事件なのに、2号ポルノとか児童買春罪の「乳首」を持ち出してきたのが唐突感です。「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」であれば乳首隠しても3号は3号なのに、なぜ「乳首」にこだわるのか。奥村なら即刻控訴して帰るところですが、一審で確定しています。
【文献番号】25483144
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反並びに強制わいせつ被告事件
富山地方裁判所
平成24年10月11日刑事部判決判 決
理 由(罪となるべき事実)
被告人は
第1 B(平成17年○月○○日生,当時6歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,平成年月日所在の社会福祉法人Ca保育園において,「みんな身体計測するから,服脱いで。」と申し向けて同児童に上半身に衣服を着けず乳首を露出した姿態をとらせ,これをデジタルカメラで動画として撮影し,その動画データを同デジタルカメラに装着されたSDカードに記録させて保存し,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。
(事実認定の補足説明)
1 弁護人は,〔1〕被告人がデジタルカメラで撮影した動画データに描写されたB(以下「B」という。)の上半身に衣服を身に付けない姿態は,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」(児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)2条3項3号)に当たらず,〔2〕被告人がBに対し「みんな身体計測するから,服脱いで。」と申し向けて上半身の脱衣を指示したのは身体測定のためであり,撮影のためではなかったのであるから,被告人が上記「姿態をとらせ」(児童ポルノ法7条3項)たとはいえないと主張し,被告人も〔2〕について,弁護人と同様の主張をするとともに,撮影中にBに対して「ごめん,こっちもう1回」「しっかり前向いて」などと申し向けて再び同人の身長を測定したのは,撮影時間を少しでも長くしようと思った面もあったが,もう1回身長を測ろうと思ったためであった旨主張している。そこで,当裁判所が,被告人が撮影し,SDカードに記録された動画データ(以下「本件動画データ」という。)に描写されたBの姿態は「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に当たり,かつ,被告人がBに上記「姿態をとらせ」たと認定した理由を説明する。
2 被告人が撮影したBの姿態が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に当たることについて
(1)児童ポルノ法2条3項3号にいう児童ポルノとは,〔1〕「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」であって,〔2〕「性欲を興奮させ又は刺激するもの」を,〔3〕視覚により認識することができる方法により,〔4〕写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写したものをいう。本件では,〔1〕,〔3〕及び〔4〕の要件を満たすことは証拠上明らかであるが,前述のとおり,本件動画データに描写されたBの姿態が〔2〕「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に当たるかが争われている。そこで,まず,〔2〕「性欲を興奮させ又は刺激するもの」の意味内容について検討する。
児童ポルノ法が児童ポルノの販売・製造等児童ポルノに係る行為を禁止している趣旨・目的は,これらの行為は児童に対する性的搾取及び性的虐待であり,対象となった児童の心身に有害な影響を与え,児童の権利を著しく侵害するからである(児童ポルノ法1条参照)。このように,児童の権利を保護することの重要性にかんがみて,児童ポルノ法は,刑法におけるわいせつの定義(徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ,かつ,普通人の正常な性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反するもの。最高裁昭和32年3月13日大法廷判決・刑集11巻3号997頁参照)とは異なる観点から処罰の対象を定め,性欲を興奮させ又は刺激する点は必要であるが,「徒らに」ないし過度に興奮させ又は刺激することまでは不要とし,かつ,普通人の正常な性的羞恥心を害するものであることや,善良な性的道義観念に反するものであることも要しないとし,刑法のわいせつ物や図画などよりもかなり広範に処罰の対象としたものと考えられる。
そうであるとすれば,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という要件は,「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」を描写したものの中には,医学図書に掲載された児童の身体を撮影したものや,裸の乳幼児が海辺で水浴びをしている自然な姿を撮影したものなど,児童の裸体を撮影する必然性,合理性が認められるなどして性欲を興奮させ又は刺激する度合いが相当程度緩和されているものも含まれるため,そのようなものを処罰の対象から除外するために付されたものであり,同要件は相当程度緩やかに認められると解すべきである。
そして,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に当たるかの判断方法としては,児童の裸体等に特に過敏に反応する者を基準として判断したのでは処罰範囲が過度に拡大してしまうことから,一般人を基準に,姿態,場面,周囲の状況,構図等を総合的に考慮して判断するのが相当である。
(2)本件動画データには,保育園児である当時6歳のBが上半身に衣服を身に付けず,乳首を露出し,下半身にはパンツしか身に付けない状態で体重及び身長を測定されている姿態が,ごく近距離から描写されており,その映像及び音声から保育園等における身体測定を撮影したものであることがわかるものである。撮影時間約34秒間のうち相当部分にわたってBが写っているが,Bの正面以外から写している時間が長く,Bの乳首が写っている時間は短い。Bは特段扇情的なポーズをとっておらず,動画の構図としては,Bの性器等を強調するものにはなっていない。
本件動画データに記録されたBの姿態が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に当たるかについて検討すると,まず,乳首は,性器及び肛門とともに「性器等」(児童ポルノ法2条2項柱書)に含まれ,所定の条件で児童の乳首を触る行為は「児童買春」(同法2条2項柱書)にあたる旨規定する児童ポルノ法の趣旨・目的からすれば,乳首は,性的搾取及び性的虐待から児童の権利の擁護を図る点で重要な部位であること,乳首を他人が覚知し得る状態で露出することは例外的場合を除いて許されないという社会通念が存在すると認められることに照らすと,乳首を露出することは,通常,一般人から見て,相当程度性欲を興奮させ又は刺激するものであるというべきである。そして,身体測定は外界から遮断された状態で行われることを予定しており,公開になじまない性質のものであるといえるから,身体測定という状況は,児童のかわいらしい自然な姿としてほほえましく受け止められるものではないという意味で,性欲を興奮させ又は刺激する度合いを増幅することはあれ,少なくとも性欲を興奮させ又は刺激する度合いを緩和する事情ではないというべきである。この点で,前述の裸の乳幼児が海辺で水浴びをしている自然な姿を撮影したものなど,児童の発育過程を記録するために撮影することが社会通念上一定程度許容されている状況や,医学図書など,児童の裸体を撮影する必然性,合理性がある場合とは異なる(なお,弁護人が主張する,体操や乾布摩擦に係る姿態を撮影した写真等については,前者の類型に該当し得るが,「児童ポルノ」に当たらないとは限らない。)。
以上からすれば,本件動画データに描写されたBの姿態は,6歳の女子児童が,身体測定という本来公開が予定されていない状況において,一定時間,乳首を含む上半身を露出し,下半身はパンツしか身に付けていないというものであるから,一般人をして,徒らにないし過度に性欲を興奮させ又は刺激するとまではいえないものの,一定程度性欲を興奮させ又は刺激するものであるというべきであり,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に当たると解する。
(3)なお,弁護人は,上記の認定において考慮した事情のほか,Bは6歳の保育園児であり,第二次性徴が未だなく乳房が形成されていないので乳首も男児のそれと区別がないことを指摘し,本件動画データは一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものではないと主張する。しかしながら,児童が幼少であり,性的に未成熟であることをもって「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に当たらないと解したり,そのことを同要件を満たすかの判断において過度に重視することは,児童ポルノ法が「児童」の定義を「18歳に満たない者」と定め(同法2条1項),下限を設けておらず,年少の者に衣服を着けない姿態をとらせて児童ポルノを製造する行為を処罰対象として当然に予定していることや,性的搾取や性的虐待から児童の権利を擁護するという同法の趣旨に反し,妥当でない。