児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「ひそかに児童ポルノ製造罪」が検討されそうな事案

 実はH26.7.15から「ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造」という罪が施行されています。「H26改正法の5項製造罪(ひそかに製造)」と命名します。
 「ひそかに」というのは軽犯罪法にだけ見られる用語ですので同様に解釈されると思われます。児童ポルノなのに、承諾あればいいんだ。
 13歳未満であれば、強制わいせつ罪(176条後段)になりそうですが、H26改正法の5項製造罪(ひそかに製造)との罪数関係はどうなりますかね。

軽犯罪法新装第2版」伊藤栄樹・勝丸充啓P168
(2) 『ひそかに』
「ひそかに」とは,見られないことの利益を有する者に知られないようにすることをいう。見られる者以外の者に知られると否とを問わない。不特定多数の人の面前で、行っても,見られる者に知られないようにすれば,「ひそかに」のぞき見たことになる。見られる者の承諾があれば,「ひそかに」には当たらないことはいうまでもない。

H26改正法の5項製造罪(ひそかに製造)の予想される解説
(2) 『ひそかに』
「ひそかに」とは,描写されないことの利益を有する者に知られないようにすることをいう。描写される者以外の者に知られると否とを問わない。不特定多数の人の面前で、行っても,描写される者に知られないようにすれば,「ひそかに」描写されたことになる。描写される者の承諾があれば,「ひそかに」には当たらないことはいうまでもない。

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20140718-00000049-nnn-soci
容疑者は今月15日から17日までの間に、勤め先の中学校の女子トイレに盗撮用のカメラを設置する目的で侵入した疑いが持たれている。17日午前、女子トイレでカメラが見つかり、警察の捜査が進む中、夜になって、容疑者が校長に、自分がやったと名乗り出たという

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正)
児童ポルノ所持、提供等)
第七条
1  自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、同様とする。
2  児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4  前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5  第二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

軽犯罪法の解説

軽犯罪法新装第2版」伊藤栄樹・勝丸充啓P168
(2) 『ひそかに』
「ひそかに」とは,見られないことの利益を有する者に知られないようにすることをいう。見られる者以外の者に知られると否とを問わない。不特定多数の人の面前で、行っても,見られる者に知られないようにすれば,「ひそかに」のぞき見たことになる。見られる者の承諾があれば,「ひそかに」には当たらないことはいうまでもない。

軽犯罪法101問P156
「ひそかに」とは、見られないことについて利益を有する者の承諾ないし推定的承諾を得ずに、という意味である。見られる者以外の者に知られるか否かは関係なく、不特定多数人の面前で行った場合でもこれに当たる。「のぞき見た」とは、物陰や隙間などからこっそり見ることをいい、何の作為もしないのに自然に見えた場合には、これに当たらない。双眼鏡や望遠銭で見たり、カメラで写真撮影する場合もこれに当たる。「見た」ことを要するから、テープレコーダー等で他人の夫婦生活をひそかに録音しても、本罪に当たらないことはいうまでもない(伊藤一八〇頁、俵谷一四七頁〉。

軽犯罪法解説 警察庁警備局編s34
○のぞかれている本人に知られぬようにとの意である。第三者が知っていることは差支えない。本人が人に見られていないと思っているのにのぞき見るところに権利の侵害が成立寸るのである。(野木外)
○自分がのぞき見んとすることを気付かれないようにとの意である。「ひそかに」のぞき見るところに、行為者の下劣な性情が見え行為の反社会性を色濃くしているものと剖耐えよう。(磯崎)
○本人に気付かれないように身をかくしてという意味である(福原外)
○本人の承諾か得ることなぐ、見られる側に気付かれないように寸る場合である。(三堀)
○その場所の見られないことの利益を有するものに見付からないようにしてこっそりと行うことである。必ずしも他の罰号にいわゆる「公然」の正反対に当るのではない。不特定または多数の人の面前で行っても、見られないことの利益を有する者自身に秘して行えば本罪となるのである。多数の通行人が面白がって交互に節穴から覗き見することは、見る者同士の問だけ考えれば公然とやっているわけであるが、見られる者の側に気付かれないよう行っている限り「ひそかに」の条件に当るのである。またこれと反対に見られる者の方で承諾して居れば独りで覗き見ても「ひそかに」の要件を欠くことになるから本罪とはならない。世上往々行われると聞く風紀上の非行として、対価をとって覗き見させる特殊の見せ物の如きもこれと同様の意味において本罪とはならないが、見せ物の内容からいって、公然猥褻罪(刑法一七四条)を構成する。〈植松)

実務のための軽犯罪法解説P159
(5) 「ひそかに」とは,見られないことについて利益を有する者の承諾ないし推定的承諾なしにという意味である。
現に見られないことの利益を有する者又はそれ以外の第三者に知られているかどうかを問わない。例えば,公衆便所の壁の隙間などからのぞき見すれば,その直前,用便中の者に対して,のぞき見ることを予告したとしても,その承諾を得ていない限り本号に該当する。また,不特定多数人の面前で行っても,見られる者の承諾なしに行えば,本号に該当する。例えば,公衆浴場内に入浴客として入り,カメラをタオルで隠、して他の入浴客の裸体を撮影すれば,本号に当たると解する。