児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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公然わいせつ幇助事件(高松地裁H23.2.9)

 控訴したんでしょうか?

公然わいせつ幇助被告事件
高松地方裁判所判決平成23年2月9日
LLI/DB 判例秘書登載
       理   由
(罪となるべき事実)
 被告人は,インターネットを利用するなどして不特定の参加者を募り,「×××」と称する乱交サークルを主催する者であるが,
第1 平成22年9月25日,香川県東かがわ市(以下略)の□□のロッジ村「○棟」において,同サークルの会合として「△△」と称する乱交パーティを開催中,同サークルスタッフであるA及びBと共謀の上,
 1 同日午後10時ころ,「C’」ことCが,同パーティ参加者ら不特定多数の者が容易に覚知しうる状態で,自己の性器を露出して手いんし,
 2 同日午後11時20分ころ,「D’」ことDが,同パーティ参加者ら不特定多数の者が容易に覚知しうる状態で,自己の性器を露出し,その性器を前記C及び「E’」ことEがなめ,
  もってそれぞれ公然とわいせつな行為をした際,その情を知りながら,前記□□のロッジ村「○棟」居室を使用させるなどし,もって前記Cらの各犯行を容易にさせてこれを幇助し,
第2 同年10月9日,同県仲多度郡(以下略)の◇◇「○棟」において,同サークルの会合として「□×」と称する乱交パーティを開催中,同サークルスタッフである前記A,前記B及びFと共謀の上,
 1 同日午後10時17分ころ,前記Eと「G’」ことGが,同パーティ参加者ら不特定多数の者が容易に覚知しうる状態で,それぞれ自己の性器を露出して性交し,
 2 そのころ,「H’」ことHと「I’」ことIが,同パーティ参加者ら不特定多数の者が容易に覚知しうる状態で,それぞれ自己の性器を露出して,前記Iが前記Hの陰部を口淫し,
  もってそれぞれ公然とわいせつな行為をした際,その情を知りながら,前記◇◇「○棟」居室を使用させるなどし,もって前記Eらの各犯行を容易にさせてこれを幇助し
たものである。
(証拠の標目)
(事実認定の補足説明)
1 弁護人は,判示第1及び第2の各わいせつ行為は乱交サークル「×××」の活動の一環としてなされたものであるから,?不特定多数の者が覚知しうる状態で行われておらず,公然性が認められない,?公然わいせつ罪の保護法益である性的風俗等を殊更害するものではなく,違法性が認められない旨述べ,被告人は無罪であると主張するので,判示のとおり認定した理由を補足して説明する。
2 関係証拠によれば,以下の事実が認められる。
 (1) 被告人は,乱交パーティを開催することなどを目的とするサークル「×××」を主催しており,数名のスタッフとともに,月に一,二回の頻度で,同サークルの会合として乱交パーティを開催していた。
 (2) 同サークルは会員制であり,会員になるには,既に会員である者から紹介を受ける方法と,同サークルのインターネット掲示板に氏名等を記入し,時期によって男性は入会金を払うなどして登録する方法があったが,いずれにしても主催者である被告人の了承を得る必要があった。また,乱交パーティに最初に参加する際,被告人又はスタッフに運転免許証等を呈示するよう求められ,これに応じなければ参加することはできなかった。
 (3) 判示第2のころ被告人により会員として把握されていた者は80名余りであり,会員であるからといって定期的に開催される乱交パーティに毎回必ず参加するものではなく,参加者はその都度入れ替わりがあった。会員同士は,頻繁に乱交パーティに参加する常連であれば顔やハンドルネームを互いに把握していたが,その場合も氏名,素性等は互いに知らないことがほとんどで,また,常連でなければ顔やハンドルネームすら互いに知らない状態であった。
 (4) 判示第1及び第2の各乱交パーティは,そのような同サークルの活動の一環として行われたもので,いずれも参加者は同サークルの会員又は被告人に誘われた者であった。判示第1については,各わいせつ行為時に判示建物内にいた参加者は12ないし15名(潜入捜査のため同サークルに入会した警察官を含む。)で,判示第2については,各わいせつ行為時に判示建物内にいた参加者は50名(前記警察官を含む。)であり,いずれの際も当然他の参加者のわいせつ行為等を自由に見ることが許されていた。
3 以上の事実関係からすると,まず,判示第1及び第2の各わいせつ行為が,多数の者が認識することのできる状態で行われたことは,詳細に検討するまでもなく明らかである。弁護人は,判示第2の際の建物の構造等を挙げてこれを否定するが,採用の限りではない。
  また,不特定の者が認識することのできる状態という点についても,判示第1及び第2の参加者は,被告人が中心となり,不特定の人を対象に,会員の交友関係やインターネット掲示板を通じて,乱交パーティに参加してわいせつ行為を行うことやそれを鑑賞することを望む者等を募った結果集まった者であり,他の参加者について,自分と同じような目的をもって,自分と同じように被告人の了承を得て同サークルの会員になった者という程度の認識しかない。実際,判示第1及び第2の各わいせつ行為は,顔やハンドルネームすら知らない初対面の者の前でも構うことなく行われている。このような状況からすると,会員制という形をとっていても,参加者同士はまさに不特定というべきであり,また,前記の会員登録状況,募集状況等からすると,参加者は更に拡大する可能性があったのである。弁護人の主張は,要するに,会員になるには被告人の審査を経る必要があるので,全ての参加者に個人的関係があり,不特定ではないというものと解されるが,被告人の供述によっても,同サークルの趣旨に合致する人,すなわち,いれずみをした人や横柄な態度の人,警察官などでなく,楽しくできる人であれば誰でも入会できたというのであり,不特定に募った参加者が,このような被告人の審査やその後の身分証明書の確認等により特定されるものではない。
  以上のとおり,判示第1及び第2のいずれのわいせつ行為も,不特定多数の者が容易に覚知しうる状態で行われたものであるから,公然性が認められる。
4 更に,弁護人は,判示第1及び第2の各行為は,趣味の活動の一環であり,暴力団や薬物等の陰はなく,被告人が積極的に利益を得る目的もなかったのであり,また,既に同様のわいせつ傾向を持ち合わせている者に参加を促しただけであるから,性風俗や性道徳の破壊を殊更広げたものではないなどとして,違法性がないと主張しているが,これらの事情が違法性を阻却する事由でないことは明らかである。なお,本件各犯行により,公然わいせつ罪の保護法益である社会の健全な性秩序が乱されたことについては,論を俟たない。
  加えて,被告人の供述内容等に照らし,公然性に関する故意及び違法性の意識にも欠けるところはない。
5 以上検討したことから,判示のとおり認定した。
(法令の適用)
 被告人の判示第1及び第2の所為は,いずれも包括して刑法62条1項,60条,174条に該当するが,各所定刑中懲役刑をそれぞれ選択し,判示各罪はいずれも従犯であるから同法63条,68条3号により法律上の減軽をし,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の重い判示第2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役4月に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予し,高松地方検察庁で保管中の現金10万1000円(平成22年領第604号符号1)は,判示第2の犯行により被告人の取得した物で犯人以外の者に属しないから,同法19条1項3号,2項本文を適用してこれを没収し,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項本文を適用して全部これを被告人に負担させることとする。
(量刑の理由)
1 本件は,乱交サークルの主催者である被告人が,数名のスタッフと共謀して,2回にわたり乱交パーティを開催し,参加者が他の参加者の前で性交等のわいせつ行為をするのを幇助したという,2件の公然わいせつ幇助の事案である。
  被告人は,インターネット掲示板を作成するなどして新規の参加者を募り,多数の会員を抱え月に一,二回の頻度で定例会と称して定期的に乱交パーティを開催するなど,同サークルの活動を行う中で本件各犯行に及んだものであり,本件は組織的,常習的犯行である。会員制という形をとり,参加者のほとんどは自ら望んで同サークルの会員となって参加し,また,被告人は純粋に趣味として同サークルを主催しており,営利の目的がなかったなどの事情も存するが,参加者が十数名ないし50名という大規模な乱交パーティを常習的に行うことが健全な性秩序を害する程度は甚だしく,社会に与える影響は軽視できない。
省略
(求刑 懲役4月,現金10万1000円の没収)
  平成23年2月9日
    高松地方裁判所刑事部
        裁判官  西山志帆