性犯罪の損害賠償の認容額が公表されることも希ですよね。
6まとめ
損害賠償命令の利用はあまり多くない。しかし,先述のとおり,損害賠償命令は,犯罪被害者が自らの声や,思いを刑事裁判に反映させたいとの要望に後押しされて創設されたものである。被害者参加をすることにより,その目的を達しているものも少なくないのであろう。また,大阪では刑事弁護活動が充実している。無罪主張がされている場合でなければ,可能な限り被害弁償等のための努力がされるのが通例である。確かに,そこで提示等される金額が満足のいかないものであることも少なくないであろう。
しかし,被告人の側から誠意ある示談の申し入れ等がされれば損害賠償命令にまで至らない場合も多いのではないだろうか。そうすると,損害賠償命令の申立てが少ないということは充実した刑事弁護活動が行われている裏返しともいえよう。もっとも,本格的に損害賠償を求めようとする事案の場合には,刑事事件では被害者参加だけにとどめて,先行して民事訴訟を提起しているものにも複数件遭遇した。損害賠償命令制度の縛りを受けずに腰を落ち着けて自由かつ十分な訴訟活動をしたいとの意思の現れであろう。損害賠償命令は,このように被害者側のニーズが多様化する中,犯罪被害者がその権利を実現するための手段,選択肢を増やしたという点で十分にその役割を果たしているといえるであろう。
平成21年度損害賠償命令決定例
3 決定例3(番号8事件)
平成O年(損)第O号刑事損害賠償命令事件(基本となる刑事事件・平成O年(わ)第O号わいせつ誘拐,強姦未遂被告事件)
主文
I 相手方は,申立人に対し,金500万円及びこれに対する平成年月日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
・・・
第1 請求の趣旨
相手方は,申立人に対し,金1000万円及びこれに対する平成年月日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。