児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

風俗営業の既得権

 奥村は、この既得権保護が理解できません。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110430/dms1104301531009-n1.htm
女の子は…老舗ソープ店、津波で営業再開にメド立たず
 津波の威力はすさまじく、建て替えが必要なほど損傷した。だが、ソープランドは法律で建て替えが禁じられている。改修でしのぐしかない。
 「役所に罹災証明書を申請しているけど、認められてもこういう業種だから銀行の融資を受けられるかどうか…。ざっと1500万〜1600万円はかかる」とこぼす。
 震災から2週間後に水道は復旧。同業他店は都市ガスやプロパンで湯をわかし、1つまた1つと営業を再開した。
 「湯遊 鎌倉御殿」では「地震前は常連客と観光客が柱だった。いまは、観光客の代わりに、復興支援の作業員の来店が増えてます」(店員)と話す。
 日中、被災者のために無料で浴室の開放も始めたという。
 だが、津波に襲われた「いとはん」では再開どころかボランティアさえできる状態ではない。肩を落とすオーナーの背後から、内装業者の大きな声とトンカチの音が響いてくる。
 「13人いた女の子は、みんな他の店や他の地域に移って行ったよ。彼女たちも毎日食べなきゃなんないから仕方ないけどね」
 再開は早くても2カ月先になる。前途は多難だが、店とともに歩んだ半生。「必ず復活しますよ」。常連客も待ち望んでいる。

 この立法目的にてらすと所定の地域内の風俗営業は一定期間内で禁止すべきであって、既得権保護とか、震災なら再開可能というのは理解できません。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
第1条(目的)
この法律は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする。
第4条(許可の基準)
2 公安委員会は、前条第一項の許可の申請に係る営業所につき次の各号のいずれかに該当する事由があるときは、許可をしてはならない。
一 営業所の構造又は設備(第四項に規定する遊技機を除く。第九条、第十条の二第二項第三号、第十二条及び第三十九条第二項第七号において同じ。)が風俗営業の種別に応じて国家公安委員会規則で定める技術上の基準に適合しないとき。
二 営業所が、良好な風俗環境を保全するため特にその設置を制限する必要があるものとして政令で定める基準に従い都道府県の条例で定める地域内にあるとき。
三 営業所に第二十四条第一項の管理者を選任すると認められないことについて相当な理由があるとき。
3 公安委員会は、前条第一項の許可又は第七条第一項、第七条の二第一項若しくは第七条の三第一項の承認を受けて営んでいた風俗営業の営業所が火災、震災その他その者の責めに帰することができない事由で政令で定めるものにより滅失したために当該風俗営業を廃止した者が、当該廃止した風俗営業と同一の風俗営業の種別の風俗営業で営業所が前項第二号の地域内にあるものにつき、前条第一項の許可を受けようとする場合において、当該許可の申請が次の各号のいずれにも該当するときは、前項第二号の規定にかかわらず、許可をすることができる。
一 当該風俗営業を廃止した日から起算して五年以内にされたものであること。
二 次のいずれかに該当すること。
イ 当該滅失した営業所の所在地が、当該滅失前から前項第二号の地域に含まれていたこと。
ロ 当該滅失した営業所の所在地が、当該滅失以降に前項第二号の地域に含まれることとなつたこと。
三 当該滅失した営業所とおおむね同一の場所にある営業所につきされたものであること。
四 当該滅失した営業所とおおむね等しい面積の営業所につきされたものであること。

 無届けの無店舗型風俗営業店(デリヘル)の事件で、そう思って主張したことがあるんですが、大阪高裁も既得権保護を合憲としています。

大阪高等裁判所
平成 19年8月29日宣告 
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律違反被告事件
判 決
弁護人 奥村 徹(私選)
主 文
 本件控訴を棄却する。
理 由
 (1)憲法違反の主張について
風営法 28条 1項が店舗型性風俗特殊営業について禁止区域を設定していることは弁護人主張のとおりであるが、同規定は、店舗型性風俗特殊営業が性的なものであることから、周辺の善良な風俗又は清浄な風俗環境、あるいは少年の健全な育成を害することのないように、学校等の特定の施設の周辺におけるその営業を禁止しているのであって、かかる規制は、公共の福祉のために合理的に営業の自由を制限するものであり、憲法22粂 1項に違反するものではない。また前記大阪府条例は、風営法 28条 1項後段に基づいて、病院、診療所等の施設を指定しているのであり、これも上記風営法による規制の趣旨に照らして合理的なものであって、同様に憲法22条 1項に違反するものではない。さらに、風営法 28条 3項は既存の業者に対して場所的規制を適用しないとしているが、これは、店舗型性風俗特殊営業を規制する改正法施行の際許可を得て現実に同営業を営んでいたものに対し、その既得権を尊重し、特にその営業を引き続いて行うことを認めた趣旨のものであって、既存の業者に禁止区域における営業を独占させようとする趣旨のものではないから、同規定は憲法 14条 1項に違反するものではない。
 したがって、上記風営法憲法違反をいう弁護人の主張には理由がない。

 上告審では、どっちみち無届けで違反のくせに、既得権云々言うなという判断が出ています。
 被告人の希望は判決確定の引き延ばしでしたが、1審判決はh19.3で、控訴審判決がH19.8.29で、上告審決定がH21.9.25で、2年6月も稼いだのでこれでいいのです。
 上告を見越してうまく控訴理由をひねり出せばこういうことも可能です。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律違反被告事件
最高裁判所第1小法廷決定
平成21年9月25日
LLI/DB 判例秘書登載
裁判集刑 297号291頁

       主   文
 本件上告を棄却する。
       理   由
 弁護人奥村徹の上告趣意のうち,違憲をいう点は,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律が,店舗型性風俗特殊営業の規制に係る改正規定の施行に関し,いわゆる既存業者の営んでいる営業については改正規定を適用しないこととしていることが,合理的根拠を欠く差別的扱いであるから,憲法14条1項に違反し,また,憲法22条1項に違反するというものであるが,仮に既存の業者を規制の対象としないことが不合理な差別に当たるとしても,そのために本来の規制の対象としている新規の業者に対する規制が許されないこととなるものではないから,所論は,原判決の結論に影響を及ぼさない違憲の主張に帰するものであり,その余は,単なる法令違反,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 よって,同法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 涌井紀夫 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 宮川光治 裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志