児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

罪数処理を誤っており訴因不特定と思われる事例(名古屋地裁)

 こういうのがありますが、併合罪説によれば、訴因不特定だと思います。控訴すればいいのに。
 併合罪が原則で、観念的競合は例外だから疑って欲しいものです。

名古屋地裁H21.8. 実刑
被告人はh23.2.25 親族関係の16歳に性交類似行為させ、その姿態をとらせてこれをデジカメで撮影し その画像データをメモリスティックに記録した上、同日デジカメをpcに接続し、前記データをpcの内蔵hddに記録させ、もって、児童に淫行させるとともに、児童ポルノを製造した

最高裁判所第1小法廷決定平成21年10月21日
最高裁判所刑事判例集63巻8号1070頁
裁判所時報1494号305頁
判例タイムズ1326号134頁
判例時報2082号160頁
LLI/DB 判例秘書登載
       主   文
 本件上告を棄却する。
       理   由
 弁護人奥村徹の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でないか,実質は単なる法令違反の主張であり,その余は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論にかんがみ,児童福祉法34条1項6号違反の児童に淫行をさせる罪と児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)7条3項の児童ポルノ製造罪の罪数関係及びこれに関連する管轄の問題について,職権で判断する。
 1 原判決及びその是認する第1審判決の認定によれば,本件の事実関係は,次のとおりである。
 (1) 被告人は,中学校の教員として勤務していた者であるが,平成16年1月25日から平成17年5月29日までの間,前後20回にわたり,当時の被告人方ほかにおいて,犯行開始当時に被告人が勤務する中学校に生徒として在籍していた被害児童(被害当時14から15歳)が満18歳に満たないことを知りながら,同児童をして,被告人を相手に性交させ,又は性交類似行為をさせ,もって,児童に淫行をさせる行為をするとともに,上記20回の淫行の機会のうちの13回において,同児童をして,性交等に係る姿態をとらせ,これをデジタルビデオカメラで撮影して,それら姿態を視覚により認識することができる電磁的記録媒体であるミニデジタルビデオカセットに描写し,もって同児童に係る児童ポルノを製造した。
 (2) 被告人は,上記事実により児童福祉法違反,児童ポルノ法違反として札幌家庭裁判所小樽支部に起訴され,同支部は,上記事実を認定し,両罪の罪数関係について観念的競合の規定を適用して,被告人に有罪判決を言い渡し,被告人が控訴したが,原判決はこれを棄却した。
 2 所論は,上記両罪は併合罪の関係にあるから,児童ポルノ法違反の事実については,平成20年法律第71号による改正前の少年法37条によれば,上記家庭裁判所支部は管轄を有しない旨主張する。そこで,検討するに,児童福祉法34条1項6号違反の罪は,児童に淫行をさせる行為をしたことを構成要件とするものであり,他方,児童ポルノ法7条3項の罪は,児童に同法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ,これを写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより,当該児童に係る児童ポルノを製造したことを構成要件とするものである。本件のように被害児童に性交又は性交類似行為をさせて撮影することをもって児童ポルノを製造した場合においては,被告人の児童福祉法34条1項6号に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは,一部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,両行為の性質等にかんがみると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから(最高裁昭和47年(あ)第1896号同49年5月29日大法廷判決・刑集28巻4号114頁参照),両罪は,刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはなく,同法45条前段の併合罪の関係にあるというべきである。そうすると,児童ポルノ法7条3項の罪についても上記改正前の少年法37条により家庭裁判所の管轄を認めて審理,判決した第1審判決を是認した原判決は,法令に違反するものである。
 しかしながら,被告人については,いずれにしても児童福祉法34条1項6号違反の罪の成立が認められ,児童ポルノ法7条3項の罪についても家庭裁判所が判断したことによって被告人に特段の不利益があったとはいえないことなどに照らすと,上記法令違反を理由として原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。