児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

ダメダメな3項製造罪の訴因を見つけたら・・・

 3項製造罪の起訴状の数%でこういう記載を見かけます。

公訴事実
被告人は,被害児童(当時16歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら別表記載のとおり,平成22年12月17日から平成22年12月20日までの間,前後3回にわたり,大阪市北区西天満ホテル客室ほか3か所において,前記児童に全裸でその陰部等を露出した姿態をとらせ,その場面をデジタルカメラで静止画として撮影し,いずれもそのころ,神戸市内の被告人方において,それらの静止画のデータ25点を,前記デジタルカメラに装着したコンパクトフラッシュを経由して,パーゾナルコンビュータに接続された外付けハードディスクに記憶させて蔵置し,もって衣服の全部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノ合計25点を製造したものである。

 CFカードか外付けHDDかが児童ポルノらしいのですが、「児童ポルノ25点」というので、データを児童ポルノとして起訴していることがわかります。
 これは罪になりません。
 さらに、有体物である児童ポルノが特定されていない点で、訴因不特定。
 起訴が不特定無効になるという致命的ミス。
 裁判所が真っ先に気づくべきですが、気づかないことが多い。法廷で指摘すると、裁判官の目が泳いでいるのがわかる。
 軽い事件であれば法廷では指摘しないでこのままで一審判決をもらって、控訴して破棄させるという方法もありますが、実刑もありうる事件の場合は、検察官に指摘して、補正的変更に応じる代わりに、実刑求刑しないという取引をすることがあります。執行猶予判決をもらって控訴せずに確定させ、ミスを葬るのです。これで丸く収まる。
 いままで数人これで実刑を免れています。

 意見書の目次を紹介しておきます

公訴事実に対する弁護人の意見
第1 製造罪の訴因について 2
1 公訴事実の引用 2
2 罪にならないこと・訴因不特定 2
3 文理解釈  3
(1)法文  3
(2)警察庁執務資料*2 5
4 学説 5
(1)甲南大学園田寿教授 5
(2)東京都立大学 木村光江教授 6
(3)東京大学山口厚教授 7
(4)慶応義塾大学 安冨潔教授 8
(5)島戸純検事(当時) 9
5 判例 11
(1)大阪高裁H14.9.10*3 11
(2)大阪高裁H15.9.18*4 12
(3)名古屋高裁金沢支部H17.6.9 13
(4)東京高裁H20.9.18*6(原判決宇都宮地裁H20.2.29*7) 14