児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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福井県青少年愛護条例と性犯罪

 「刑法以上の規制」だそうです。

福井県少年愛護条例」福井県青少年総合対策本部編
(趣旨)
一般に青少年は、その心身の未成熟あるいは精神と肉体の発達段階の不均衡から、成人に比し精神的に未だ十分に安定しておらず、反倫理的、反道徳的な行為や体験による衝撃ないしは被影響性が大きく、かつ容易にこれらから回復し難いものである。したがって、このような青少年の特質に鑑み、その健全な育成を図るとともにこれを限害するおそれのある行為を禁じ、もってその福祉の向上を図るため、青少年を対象としてなされるもののうち、特に社会通念に照らして、倫理的な非難を受けるべき性行為等を禁ずることとしたものである。
(解説)
青少年の性的な非行は、大人の心ない行為により、これを知ったことによるものが多く、その責任は、大人にあるといっても過言ではない。したがって、本条は、青少年に対してなされる淫行、わいせつな行為、さらにこれらの行為を教えたり見せたりする行為を禁止するものである。
刑法では、第176条(強制わいせつ)、第177条(強姦)、第178条(準強制わいせつ及び準強姦)等の規定があり、これらの行為は、暴行、脅迫、心身喪失、抗拒不能等の状態下における行為であるが、条例では、前記刑法の規定以上に青少年に対する淫行、わいせつな行為等を禁止するものである。
特に、本条第l項の違反については第51条第1項により、条例中、最も厳しい量刑(2 年以下の懲役または100万円以下の罰金)が科されている。
「みだらな性行為」とは、各県の条例によって、「淫行」「みだらな性行為」など表現の相違はみられるが、この二つの言葉は同義語である。
「みだらな性行為」とは、「健全な常識ある一般社会人からみて、結婚を前提としない、欲望を満たすことのためのみに行う不純とされる行為」 (東京高裁昭39.4.22)をいう。
「みだらな性行為」には、性交類似行為も含まれる(新潟家長岡支決昭40.1.12) が、本条では「わいせつな行為」という用語でもって規定しており、「わいせつな行為」とは、いたずらに性的感情を刺激、興奮させたり、その露骨な表現によって、正常な普通人をして性的差恥や嫌悪の情を起こさせ善良な性的道義感に反するものをいう。
なお、本条は、これまで「親告罪」としてきたが、「親告罪とするか否かはこの種規
定のもたらす現実的影響、地域的特性等を考慮した立法政策上の問題」であることから、平成8年3月の一部改正で、「親告罪規定」 を削除した。
親告罪規定」の有無にかかわらず、本条の適用に際しては、関係者の人権の尊重等細心の民意が不可欠であることは、当然である。
児童福祉法では、児童に対する禁止行為として、同法第34条第1項第6号により、「児童に淫行をさせる行為の禁止」 が規定されている。両者の異なる点は、児童福祉法は、児童に「なさしめる」 ことを禁止しているのであり、本条は、直接、青少年を相手に「淫行をする行為」である。
「何人も」とは、すべての者をいい、「してはならない」とは、青少年を相手として行うことを一切「禁止」 したもので、相手方の同意の有無を問わない。
「教え」とは、相手方とはならないが、当該行為の方法等を教示することで、単なるわい談等の一般的にまん然としたものではなく、具体的に教えることであり、その方法の如何を関わない。例えば、文書、図画、写真、ビデオ等を視聴させる行為等が「教え」に当たる。しかし、学校等法令または正当な業務に基づく「性教育」は、これに該当しないことはいうまでもない。
「見せ」 とは、自己または他人の性行為またはわいせつな行為を青少年に見せることで、前述の文書、図画等を見せることは、ここでいう「見せる」fこは該当しない。
8 本条第2項の違反には、第51条第4項第8号により、罰則(30万円以下の罰金)の適用がある。
9 本条は、青少年に対する行為を対象としたものであり、青少年の行為について本条を適用することは、妥当ではない。また、たとえ青少年以外の者の行為であっても、将来、両者が結婚することが家族等周知の事実であるなど、特定の事情が存在する場合には、本条を適用することは妥当でない。
なお、本条の趣旨から青少年の面前でのわい談などの言動は厳に慎むべき行為である。