無罪主張に失敗すると「慰謝の措置は全くとられていない」「不合理な弁解に終始し,反省の態度は全く窺えない」と評価されるので
(罪となるべき事実)
被告人は,茨城県において,「B施術院」の名称で施術院を営んでいた整体師であるが,・・・もって同女の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。(量刑の理由)
本件は,整体師である被告人が,自らの営む施術院において,整体の施術であると誤信させて女性にわいせつ行為を行った準強制わいせつの事案である。
被告人は,一人で施術院にいる際に若い女性が来院したことを奇貨として劣情を催し,性的欲求を満たすため,被害者が明確に拒絶,抵抗をしないことに乗じて犯行に及んだものと認められ,犯行に至る経緯やその低劣な犯行動機に酌量の余地は全くない。
犯行態様は,整体の施術を装いながら,卑わいな言動を織り交ぜて,着衣越しに被害者の乳房や陰部周辺をなで回し,被害者が整体施術か否か半信半疑の状態で明確に拒絶,抵抗しないことに乗じて犯行をエスカレートさせ,性交類似の動作をして自らの陰部を着衣越しに被害者の陰部にこすりつけたり,直接被害者の胸を触ったりし,さらに,いったん帰ろうとした被害者を呼び止め,胸や下腹部を触るなどしたもので,自らの職業を悪用し,約1時間半もの間断続的に行われた,巧妙,卑劣かつ執拗な犯行で悪質である。
被害者の精神的打撃は大きく,犯行後眠れなくなって精神科に通うことを余儀なくされ,また,被告人に似た人を避けたり,密室に一人でいるのが怖くなるなどの影響も出ており,本件犯行の結果は重い。慰謝の措置は全くとられていない。被害者の処罰感情が厳しいのも当然である。
被告人は,不合理な弁解に終始し,反省の態度は全く窺えない。
以上によれば,被告人の刑事責任は到底軽いものではない。
他方,わいせつ行為の多くが着衣の上からのものであるなどその程度が強烈なものとまではいい難いこと,被告人にはこれまで前科がないことなど,被告人のために斟酌すべき事情もある。
そこで,諸般の事情を考慮し,主文の刑を量定した。