児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

かすがい現象

児童淫行罪
1  1/1
2  1/2
3  1/3
4  1/4
5  1/5
6  1/6
7  1/7
8  1/8
9  1/9

児童ポルノ製造罪
1  1/8
2  1/9
3  1/10

という事案だと、
 この場合のかすがい現象というのは、
  1/8 児童淫行罪+児童ポルノ製造罪
  1/9 児童淫行罪+児童ポルノ製造罪
が観念的競合になるのはよいとして、包括一罪となった児童淫行罪全部と、包括一罪になった児童ポルノ製造罪全部とが、観念的競合になって、2罪(12個の行為)全部まとめて科刑上一罪になると言う現象です。

某家裁
(法令の適用)
 被告人の判示所為のうち,別紙一覧表番号1ないし10の児童に淫行をさせた点は,包括して児童福祉法60条1項,34条1項6号に,同表番号1ないし3の児童ポルノを製造した点は,包括して児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項,1項,2条3項1号にそれぞれ該当するところ,児童に淫行をさせた点と児童ポルノを製造した点は、それぞれ1個の行為が 2個の罪名に触れる場合であるから,刑法54条1項前段,10条により1罪として重い児童福祉法違反の罪の刑で処断することとし,

 この論点が事物管轄の問題として主張され、まともに検討して判断した唯一の判例が札幌高裁H19.3.8です。

札幌高裁H19.3.8
第1 管轄違い及び法令適用の誤りの控訴趣意について(控訴理由第4)
論旨は,要するに,本件児童ポルノ製造罪と本件児童淫行罪とは併合罪であって,本件児童ポルノ製造罪の管轄は地方裁判所であるのに,これを観念的競合であるとして本件児童ポルノ製造罪について家庭裁判所に管轄を認めた原判決には不法に管轄を認めた違法があり,また,判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
そこで,検討するに,製造の各行為、は,児童に淫行させながら,その児童の姿態を撮影したというものであり,児童淫行罪であるとともに児童ポルノ製造罪に該当する。これらの児童に淫行させる行為とその姿態を撮影する行為は,法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で,行為者の動態が社会見解上一個のものと評価されるものであるから,一個の行為で二個の罪名に触れる場合に当たり,観念的競合の関係にあると解される。原判決は,これと同旨の判断に基づき,児童淫行罪を専属管轄とする家庭裁判所として本件を処理したものであって,不法に管轄を認めた違法ないし法令適用の誤りはない。論旨は理由がない。

 原判決が科刑上一罪として全部家裁で審理したことを追認したんだから、かすがい現象も認めたことになります。
 奥村弁護士が語る説ではなく、奥村弁護人が「観念的競合+かすがい現象を認めるべきではない」と主張したことに対する高裁のちゃんとした判断なので、みんな従いましょう。