児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

年500円で児童ポルノ取り放題 サイト運営の財団法人職員を逮捕

 個人的には提供罪とか提供目的所持罪で正解だと思いますが、大阪高裁H21は反対(公然陳列罪のみ)ですので、提供罪とか提供目的所持罪だと判例違反です。

普通の弁護士だと、「まあ、何罪でもいいでしょ。有罪は有罪だから」と弁護人も被告人も諦めるわけですが、再犯(交通事故とか)で猶予取消なんかになると、「間違ってる」と言い始めるんですが、確定してるから、どうしようもない。
 そういう感じで10年運用してきました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091013-00000520-san-soci
インターネット上で児童ポルノダウンロードサイトを運営したとして、警視庁少年育成課などは、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(提供目的所持)の現行犯で、容疑者(47)を逮捕した。同課によると、鈴木容疑者は「小遣い稼ぎでやった。80人から4万円集めた」と容疑を認めている。
 逮捕容疑は、9月29日午前8時20分ごろ、自宅で14〜16歳の女児の裸を映した動画の入ったパソコン1台を、提供目的で所持していたとしている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091013-00000047-jij-soci
 昨年7月に開設し、「500円で1年間、自由に動画をダウンロードできる」と宣伝。顧客80人から計4万円を得たという

 大阪高裁がここまで言うんだから、公然陳列罪なんでしょうね。

阪高裁H21.9.2
また,弁護人は,本件は,児童ポルノ公然陳列罪ではなく,児童ポルノ提供罪が成立する旨主張するが,本件が児童ポルノ公然陳列罪に該当することは,一審判決が「補足説明」の項で正当に説示するところである。
なお,弁護人の主張にかんがみ,付言するに,児童ポルノ法の平成16年改正で,電磁的記録の提供(同改正後の同法7条4項後段)を新たに処罰の対象として新設し,かつ,児童ポルノの定義(同法2条3項)に「電磁的記録に係る記録媒体」を明記した趣旨は,同改正前の同法において,児童のポルノに係る電子データを記録媒体に記憶させ,これをインターネット上で不特定多数の者に閲覧させた場合には,上記電子データが記憶・蔵置された記録媒体を有体物としての児童ポルノとし,その公然陳列があったとして,児童ポルノ公然陳列罪が成立すると解されていたところ,これを前提として,同改正前の同法では処罰の対象として含めることに疑義があった電子メールにより児童のポルノを内容とする電磁的記録を送信して頒布する行為の処罰を新設するとともに,この改正に伴い,解釈上の疑義が生じないように児童ポルノの定義中に「電磁的記録に係る記録媒体」が含まれることを明示したというものである。このような同法の改正の趣旨にかんがみれば,本件が児童ポルノ提供罪に当たらないことは明白である。
以上のとおり,一審判決に法令の適用の誤りはない。弁護人の主張は,採用できない。

原判決
(補足説明)
1 弁護人は,被告人がパーソナルコンビュータのハードディスク内に記録された児童ポルノに該当する画像情報をファイル共有ソフト「」の共有機能に組み込み,インターネットに接続した状態で同機能を作動させた行為は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。) 7条 4項の公然陳列罪にあたらず,同項の提供罪に該当すると主張するので,以下,検討する。
2 刑法 175条にいうわいせつ物を「公然と陳列した」とは,その物のわいせつな内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいう(最高裁平成 11年(あ)第 1221号同 13年 7月 16日第三小法廷決定・刑集 55巻5号317頁参照)が,児童ポルノ法 7条4項にいう児童ポルノを「公然と陳列した」もこれと同義に解するのが相当である。
 被告人がパーソナルコンピュータのハードディスク内に記録された児童ポルノに該当する画像情報をファイル共有ソフト「」の共有機能に組み込み,インターネットに接続した状態で同機能を作動させた行為は,児童ポルノを不特定又は多数の者が認識できる状態に置いたということができるから,児童ポルノ法7条4項にいう児童ポルノを「公然と陳列した」ということができる。
3 弁護人は,児童ポルノ法 7条4項の「陳列」は相手方から再拡散することはないことを予定しているが,本件では閲覧者からさらに拡散するおそれがあるから同項の「陳列」には当たらないと主張する。しかし,相手方から再拡散される場合には「陳列」に当たらないと解する根拠は見当たらないから,弁護人の主張は採用することができない。
 その他弁護人が縷々主張する点も,独自の見解であって採用することができない。