児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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女子高生に裸の写真送らす 容疑で男逮捕 近江八幡署

 9月には実刑が確定した人もいるそうです(確定してから教わったのでどうしようもないですね。)。
 事実関係は間違いないとして、どうしてこれを3項製造罪で逮捕されて納得して刑に服するのかが疑問です。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090929-00000045-kyt-l25
女子高生に裸の写真送らす 容疑で男逮捕 近江八幡
9月29日20時39分配信 京都新聞
 逮捕容疑は、6月22日、インターネットのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で知り合った県内の高校1年の女子生徒(15)に裸の写真を撮影させ、画像を携帯メールで送らせ保存した疑い。
 同署によると、容疑者は容疑を認めている、という。 .

 児童は一律に正犯とならないという前提を置かない限り、児童は2項製造罪+1項提供罪の正犯、被告人は共犯(教唆・共同正犯)になるはずです。
↓↓
1 最高裁判例解説61巻8号
 判例は「姿態をとらせて」身分犯説とされているが、それによれば、本件のように児童に依頼して撮影送信させた場合は、被告人には実行行為がなく、被害児童に2項製造罪+1項提供罪の実行行為があるから、やはり、被告人の単独正犯としての3項製造罪は成立しない。
 すなわち、最高裁判例解説では、判例は身分犯説であると解説されている。

 撮影させて送らせる行為を分析すると

(1)児童にポースをとらせる言動・・・・・被告人
(2)(1)に基づきポーズをとる・・・・・児童
(3)撮影・・・・・・・・・・・・・・・・児童
(4)児童の携帯電話への記録・・・・・・・児童
(5)送信=被告人の受信サーバへの記録・・・児童
(6)受信=被告人の携帯電話への記録・・・・被告人

になりますが、身分犯説による実行行為は(3)〜(6)で、実行の着手は(3)の時点で、実行行為への被告人の分担はせいぜい(6)の受信行為だけである。

 強要がない場合、児童は道具ではないから(児童を1項提供罪の正犯として検挙した事例もある!)、被告人の言動によって、被害児童の行為が被告人の行為となったと評価することはできない。

2 福岡高裁H21
 また、福岡高裁H21は「姿態をとらせて」は実行行為ではなく身分犯の身分であると判示している。
 これによるときは、単独犯構成を考えると、被告人は児童に姿態をとらせていても、撮影・複製は行っていないので、被告人に実行行為は全くないことになる。あるのは「身分」だけである。
 被害児童は「姿態をとらせ」たのではないから、被害児童には3項製造罪は成立しない。
 結局、被害児童が2項製造罪+1項提供罪の正犯であり、被告人は共犯(教唆・共同正犯)という構成しかない。

福岡高裁H21
しかしながら,?については,そもそも児童ポルノの製造とは児童ポルノを作成することをいうと解されるから,「児童に法2条3項各号の姿態をとらせること」は,児童ポルノを製造するために行われた行為であるとはいえても,それは上記姿態を「写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより児童ポルノを製造」する行為そのものではないから,「児童に法2条3項各号の姿態をとらせること」が3項製造罪の実行行為の一部に当たるとはいえない。また,3項製造罪は,他人に提供する目的を伴わない児童ポルノの製造であっても,児童に法2条3項各号の姿態をとらせ,これを「写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより児童ポルノを製造」する行為は,それが強制によるものでなくても,児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為にほかならず,かつ,流通の危険を創出する点において非難に値することから,平成16年法律第106号による法改正によって新設されたものであるところ,実際に行われる児童ポルノの製造行為としては種々のものが考えられる上,画像データはコピーを繰り返しても当初の画像との均質性が保たれるため流通の危険性は依然として高いといえることなどにも照らせば,3項製造罪によって処罰される「製造」の範囲は,それが,児童に法2条3項各号の姿態をとらせた際にデジタルカメラ等を使って行われた第一次的な製造行為かどうかではなく,その製造主体が児童に上記姿態をとらせた者であるかどうかによって画されると解するのが3項製造罪の立法趣旨に適うというべきである。そうすると,上記第一次的な製造行為についてのみ3項製造罪が成立すると解するのは相当でなく,弁護人の上記?の主張は採用できない。

3 大阪高裁H21
 さらに、大阪高裁H21は「姿態をとらせて」は実行行為ではなく製造手段(身分ではないという)であると判示している。
 これによるときは、単独犯構成を考えると、被告人は児童に姿態をとらせていても、撮影・複製は行っていないので、被告人に実行行為は全くないことになる。
 被害児童は「姿態をとらせ」たのではないから、被害児童には3項製造罪は成立しない。
 結局、被害児童が2項製造罪+1項提供罪の正犯であり、被告人は共犯(教唆・共同正犯)という構成しかない。

阪高裁H21
また,?の点については,原判決の「罪となるべき事実」中には「姿態をとらせて」との摘示があるところ3項製造罪にいう「姿態をとらせる」とは,児童ポルノを作成すること自体を意味する「製造」とは別個の行為で、あって,製造の手段たる行為にすぎず,同罪の実行行為には当たらないと解されるから,これと同趣旨の原判決に,理由の食い違いの違法は何ら存しない。論旨は理由がない。