児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被害女性に知的障害、裁判所「告訴能力なし」(宮崎地裁延岡支部H21.9.16)

 告訴権者をちゃんと選ばないからこうなるんでしょうね。
 親告罪については、有効な告訴があるのかを確認しましょう。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090930-00000028-yom-soci
宮崎地裁延岡支部が、わいせつ目的誘拐と強制わいせつ罪に問われた男について、公訴棄却の判決を言い渡していたことが分かった。
 両罪とも被害者の告訴が必要な親告罪で、同支部は被害者女性に知的障害があり「告訴能力がない」と判断した。
 宮崎地検延岡支部は29日、判決を不服とし福岡高裁宮崎支部控訴した

 どの程度の知的能力かについては、判例を見てください。

条解刑事訴訟法第3版増補版P403
告訴の意思表示
告訴は意思表示を内容とする訴訟行為であるから.当該法律行為の意味を理解する能力がある者の告訴でなければ有効とはいえない。
判例は.強姦罪につき13歳11か月の女子の告訴を有効とLている。
また告訴は,告訴人の自由意思によるものでなければならないが.必ずしも自発的になされたものであることは要せず,他人の誘導によってなされたものであっても、その告訴は有効であり、告訴をするに至った動機等は.告訴の効力に影響を及ぼすことはない。

最高裁第一小法廷昭和32年 9月26日
刑集 11巻9号2376頁
裁判集刑 120号549頁
足立勝義・判解118事件・曹時 9巻11号163頁
高窪貞人・判タ別冊 9号61頁(警察関係基本判例100)
たとえ、右被害者が昭和一六年一〇月三〇日生れで、中学二年生であったとしても、告訴の訴訟能力を有していたものと認めるのが相当である。

東京地裁平成15年 6月20日
判時 1843号159頁
【訴訟条件に関する弁護人の主張に対する判断】
 本件においては、被害児童のC子及びその姉のD子から告訴がなされているところ、弁護人は、C子には告訴能力がなく、他方、D子は捜査官から被害の内容を間接的に聞かされたにすぎないなどとして、各告訴の効力について疑問がある旨主張するので、検討する。
 まず、C子による告訴について見ると、C子作成の告訴状(甲一)及びC子の検察官に対する供述調書抄本(甲五、六)によれば、C子は、判示日時場所において、被告人から、自分のおしっこの出る所に無理やりおちんちんを入れられて気持ち悪くてたまらなかった旨述べるとともに、被告人を処罰してほしい旨や、許すことはできないのでできるだけ長く牢屋に入れてほしい旨述べているのであるから、本件被害の内容を具体的に認識しつつ、被害感情を持って被告人に対する処罰を求めているものと認められるのであり、C子が告訴当時一二歳三か月の小学六年生であったからといって、自分の供述内容の意義を理解していなかったと疑うべき事情は窺われず、その告訴能力に欠けるところはない。したがって、C子による告訴は有効である。
 また、D子が告訴をした当時、C子の法定代理人である母B子は被告人と婚姻関係にあったのであるから、D子も本件に関し告訴権を有するところ、D子作成の告訴状(甲二)及びD子の検察官に対する供述調書(甲三)によれば、D子は本件被害の内容を理解した上で被告人に対する処罰を求めていることが認められ、弁護人がD子の告訴について指摘するところは、D子が本件被害の内容を知った経緯に関する事情にすぎず、告訴の効力に影響を及ぼすような性質のものではないから、D子による告訴も有効である。
 以上からすれば、本件の訴訟条件に欠けるところはない。

第230条〔告訴権者〕
犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。
第231条〔同前〕
被害者の法定代理人は、独立して告訴をすることができる。
?被害者が死亡したときは、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹は、告訴をすることができる。但し、被害者の明示した意思に反することはできない。
第232条〔同前〕
被害者の法定代理人が被疑者であるとき、被疑者の配偶者であるとき、又は被疑者の四親等内の血族若しくは三親等内の姻族であるときは、被害者の親族は、独立して告訴をすることができる。
第234条〔告訴権者の指定〕
親告罪について告訴をすることができる者がない場合には、検察官は、利害関係人の申立により告訴をすることができる者を指定することができる。