児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

姿態をとらせて非実行行為説の限界

 お忙しい検事さん、判事さんは聞かなくていいですよ。
 最近の判例によれば、姿態をとらせては実行行為じゃないので、撮影行為の開始時が実行の着手になります。

判例タイムズ1206号93頁
(1) そもそも児童ポルノの製造とは児童ポルノを作成することをいうのであるから,「姿態をとらせること」は製造とは別の行為であって本罪の実行行為には当たらず,製造の手段たる行為にすぎないというべきである(例えば,児童に姿態をとらせてもそれだけで本罪の実行の着手があったとはいえないというべきである。)。

とすると、こうい事案ではいつが着手なんですか?

「携帯電話のサイトで知り合った兵庫県豊岡市の女子中学生(14)に3月22日、わいせつな画像を撮らせて送信させ、携帯電話に保存した疑い。」

 「姿態をとって撮影して送れ」と頼んだメールは着手じゃなくて、児童が撮影した時点が着手になりますよね。でもそれは被害児童の行為であって、被告人の行為ではないですよ。被告人の行為だというには、間接正犯とか共同正犯になります。
 被告人の行為は最初のメールだとして、着手時期を解釈で、撮影時点に遅らせるんですか?
 自殺幇助の着手は自殺行為開始の時だという似たような議論がありますが、あれは、自殺が犯罪じゃなくて自殺罪の正犯がいないから特別の規定を置いているのです。被害児童も1項提供罪・2項製造罪の正犯になりうるという解釈を採ると、自殺幇助の理屈を応用することもできません。
 被害児童が正犯かというと、また保護法益の話に戻りますが、判例は純粋個人的法益説には戻れませんから、児童を正犯にせざるを得ないですよね。