はっきりしないというか、悩みが出ているというか、どっちかに決めてやれというかという結論です。
幼児や強要のような間接正犯の場合はやむを得ないとして、15〜17歳は製造罪の主体ですよ。
撮って販売してる「被害児童」もあるわけで、撮った時点では、児童ポルノはあって製造犯は居ないことになりますよ。
星検事はご存じないようですが、被害児童が共犯になる可能性を示唆した高裁判決もありますよね。
製造罪の既遂時期についても甘いですね。児童ポルノ画像の流出の危険性を強調するなら、最初にできた時に決まってます。事後の複製についてもそれぞれ製造罪(包括一罪)と評価するという考え方もできるが、それだと二次以降の製造罪が姿態要件に欠くと言われるので、最終の製造行為までを単純一罪と評価するしかありません。それでいいんじゃないですか。
3 児童ポルノ製造罪の既遂時期と罪数
(1) 問題の所在
本事例では,被害児童の姿態の画像が視覚により認識可能になる時点として.
1画像データが被害児童の携帯電話のメモリに記憶された時点
2プロバイダー会社のサーバーの被告人が使用する領域に画像データが記憶された時点,
3前記サ-バーからダウンロードした画像が被告人のパソコンのハードディスクに記憶された時点
が考えられるところ.法7条3項の児童ポルノ製造罪が既遂に連するのはどの時点であろうか。
既遂時期については事案ごとの証拠関係によっても異なるであろうが.本事例に限って言えば,1の時点では,画像データは被害児童自身の携帯電話のメモリにとどまっている上被告人は被害児童と電話で連絡をとって指示しているだけで.画像データが記憶された携帯電話のメモリがある場所にはいないのであるから・画像データは末だ被告人が視覚で認識可能な状態にはなっておらず,流通する危険が生じたとも言えないので.既遂には至っていないと考えるべきであろう。
しかし,2の時点では,被告人はいつでも画像データを視覚で認識しうるに至っているので・本事例では2の時点で製造罪が既遂に達したととらえるべきである
保護法益についても星検事の説明もちょっと従来と違いますね。
「姿態をとらせ」の意義
「姿態をとらせ」とは,行為者の言動等により当該児童が当該姿態をとるに至ったことをいい,強制によることは要せず・さらに,被写体となる児童が児童ポルノ製造に同意していたとしても,法7条3項の製造罪が成立すると解されている。
これは,同項の製造罪の保護去益が・第一次的には描写対象となる児童の人格権であり,更に抽象的一般的な児童の人格もその保護法益とすることに由来すると考えられる。
すなわち.法7 条3 項の製造罪に該当する行為は当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為にはかならないことからこれを処罰するものであり,その保護法益は,第一次的には描写対象となる児童の人格権であり.かつ.ひとたび児童ポルノが製造された場合には,流通の可能性が新たに生ずることとなり,このような場合には児童を性的行為の対象とする社会的風潮が助長されることになるので,このような意味において.抽象的一般的な児童の人格権もその保護法益とする。
したがって,児童が強制によらずに児童ポルノに該当する姿態をとった場合や.児童が製造に同意している場合であっても,当該児童の尊厳が害されると言えるし,当該児童ポルノの流通可能性も生じ.一般的抽象的な児童の尊厳をも害すると言えるから当罰性が認められる。
違う裁判例もあるし。
大阪地裁H17.7.15
上記の重なり合う部分が、児童淫行の主要部分をなすことは同罪の材質等に照らして明らかであるから、本件製造行為の主要部分はなにかが問題となる
この点、児童ポルノ法は、2項、3項5項において、児童ポルノ製造を禁止し、児童に対する性的搾取虐待を助長する児童ポルノについて、その流通の危険性の創出を禁圧しようとしているのであるから、その中にあって、7条3項の製造罪は2項の製造罪に比べて、他人に提供等する目的を欠く場合にも成立するところに特色がある。(法定刑は同じ)
これは、本罪が上記のような製造罪全般に通じる趣旨に加えて 撮影対象となった個別の児童について不名誉な永続的画像などを作出されないという個人的法益をも保護対象とするものと解される。しかし、本罪はそのような個別の児童のみだらな姿態にかかる撮影行為のすべてを処罰しているわけではない。すなわち、本罪の成立には児童にみだらな姿態をとらせること、すなわち、犯人による児童に対する何らかの働きかけのあることが必要とされており、結局、本罪の罪質ないし処罰根拠という観点からすれば、上記個人的法益の保護は補助的なものと解される。
してみると、本罪の構成要件的行為のうち、その不法の中核を担い、処罰を積極的に基礎づけるのは、他の製造罪と同様に、撮影行為すなわち、みだらな姿態にかかる映像記録の作出であり、姿態をとらせる行為は、処罰範囲限定のために置かれているにすぎない。
さらに、星検事は道具になっていない場合でも頼んだ側に製造罪が成立するというのですが、それだと、道具になっている場合でもそういう説明で製造罪を肯定しないと一貫しません。
星論文
このように考えれば,カメラのシャッターを押すなどの行為を被害児童自身が行っており.その被害児童を間接正犯の道具とは評価できないような場合でも,児童ポルノ製造罪の成立は認めうると言えよう。
ところが、大阪高裁は間接正犯だと説明していて、星検事の理屈は採用していないようです。
大阪高裁H19.12.4
(2)所論は,次に,原判示第3の児童ポルノ製造罪について,当時13歳の被害児童自身が,携帯電話の内蔵カメラで自分の裸体を撮影し,その'画像をメール送信したものであるから;被告人に本罪の間接正犯は成立しないのに,被害児童を道具とする間接正犯とした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
しかしながら,関係証拠によれば,被害児童は,・・・を恐れる余り,被告人の命じるままにするほかないと考えて,原判示第3記載の画像を送信したものであることが認められるのであって,そのような本件の犯行態様に加えて,被害児童の性別,年齢等諸般の事情に照らすと,被害児童は意思を抑圧されていたと認めるのが相当であり,本件を被告人の単独犯行であるとした原判決に何らの法令適用の誤りもない。
なお,所論は,間接正犯とする場合には,13歳の被害児童が完全に道具となったことを判示しなければならないのに,「同女をして-電子メールで送信させて」と判示したにとどまる原判決には理由不備の違法がある,というが,前述のとおり,原判決の「罪となるべき事実」には,本件犯罪に該当する被告人の行為が具体的に特定明示されており,かつ,「法令の適用」の項における記載とも相まって,それが被告人単独による犯行であることが疑問の余地なく示されているといえるから,原判決に理由不備の違法があるなどということはできない。