罪数をつないでくれと言われたり、切ってくれと言われたりで、いろいろ理屈を考えるわけですが、福祉犯の包括一罪は、割合言いやすいですよ。
福祉犯であって保護法益は児童が健全な成長する権利だからである。(青少年条例違反につき名古屋高裁金沢支部H18.12.13、児童買春罪につき東京高裁H20.8.13は包括一罪とする)
(1)東京高裁H17.12.261
2 前回から19日後
3 前回から02日後
4 前回から28日後
5 前回から09日後
6 前回から19日後について包括一罪だとした。28日あいても犯意は継続する。別件で児童淫行罪もあって、被害者との関係が継続的だから。
東京高裁平成17年12月26日(自判部分)
(法令の適用)
被告人の判示別紙一覧表番号1ないし6の各所為は,包括して児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項,1項,2条3項1号ないし3号に該当するので,所定刑中懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役1年に処し,原審における訴訟費用は,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。ちなみに一審判決(地裁浜松支部H17.7.15)は6回を併合罪として併合罪加重していたのであるから、東京高裁h17.12.26はそれを包括一罪に修正したものである。そこにも判例としての意義がある。
(2)札幌高裁H19.3.8
1
2 前回から04日後
3 前回から00日後
4 前回から38日後
5 前回から37日後
6 前回から19日後
7 前回から36日後
8 前回から14日後
9 前回から14日後
10前回から70日後
11前回から00日後
12前回から76日後
13前回から01日後について包括一罪だとした。最長76日でも犯意は継続する。別件で児童淫行罪もあって、被害者との関係が継続的だから。
札幌高裁H19.3.8
3児童ポルノの種類・個数の特定に関する控訴趣意につレいて(控訴理由第9)
論旨は,要するに,本件児童ポルノ製造罪の訴因は,児童ポルノの種類・個数を特定する必要があるにもかかわらず,本件起訴状の公訴事実には.「ミニデジタルビデオカセットに描写し」と記載されているの.みであり,各撮影行為により何個の児童ポルノが製造されたか,どの児童ポルノが製造されたのかが明らかでなく,本件公訴は訴因不特定の違法があるのに,公訴を棄却せず実体判断をし,また,製造された児童ポルノの個数を「罪となるべき事実」に判示していない原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反がある,という。
しかし,本件児童ポルノ製造罪は,被告人が同一児童に対し反復継続したものであるから,包括一罪と評価され,その場合には,訴因を特定するために製造された児童ポルノの個数を明示することは必要でなく,行為の始期及び終期,行為の回数,児童の氏名・年齢,児童ポルノの種類及び描写媒体の種類を明示すれば訴因は特定されていると解されるから,本件起訴に訴因不特定の違法はなく,また,原判決が児童ポルノの個数を「罪となるべき事実」に判示していない点も違法とは認められない。なお,製造された児童ポルノの個数やビデオカセットテ一プは証拠上明らかにされている。.その他,児童ポルノ製造罪は製造された児童ポルノの記録媒体毎に成立すると考えるべきであるとの点を含め,所論がるる主張する点を考慮検討しても,論旨は理由がない。(3)名古屋高裁金沢支部h17.6.9
犯意が継続していれば包括一罪であると判示する。名古屋高裁金沢支部h17.6.9
まず,所論①の点は,法2条3項において,電磁的記録に係る記録媒体が児童ポルノであると規定されていることからすると,記録媒体毎に児童ポルノ製造罪が成立すると考えるべきである(なお,所論は,メモリー スティック3本を用いてハードディスクを製造する場合には3罪が成立するとするが,罪数判断に当たっては,製造行為を基準にすべきではなく,製造された記録媒体を基準に考えるべきであるから,ハードディスクの製造1罪が成立するにすぎない。)。
しかし,一個の機会に児童に姿態をとらせそれを撮影等したものを元にして,その後,複数の記録媒体の製造を行った場合には,被告人の犯意が継続していると解される以上,包括して一罪と解すべきであり,こ れと同旨の考えに基づく公訴事実は訴因不特定であるとはいえないし,これと 同旨の罪数処理をした原判決に違法はない。(4)札幌高裁H19.9.4.
犯意継続を要件として包括一罪となるとするが、その都度児童買春の合意をした場合には、犯意は継続しないとする。
逆に言えば、継続的に被害児童と性交できる関係を背景にしている場合には犯意継続と認められる。札幌高裁判決19.9.4.
3 罪数処理に関する主張について
論旨は、要するに、本件児童ポルノ・児童買春罪は、1罪であるのに、11罪とした原判決には、法令適用の誤りがある(控訴理由第7)、というのであるが、原判決の罪数処理は相当であって、原判決に法令適用の誤りはない。
所論は、①同一被害児童に対する数回の撮影行為は包括一罪である、②児童ポルノ製造罪の個数は、製造された児童ポルノの個数により定まる、③本件の児童ポルノ製造罪と児童買春罪は観念的競合である、という。
①の点を考えるに、なるほど、同一被害児童に対する複数の撮影行為の場合、その場所的時間的近接性、機会の単一性・同一性、犯意の同一性、といった観点から、一つの行為とみることが相当であるとして包括一罪とされる場合は存在する。
しかしながら、本件の場合、各撮影等の行為は買春行為に付随して行われているところ、この各買春行為は、その買春の機会ごとに被告人から新たな買春の申込みがなされ、これに被害児童が個別に応じることによって生じたものであって、それぞれが別個独立した機会、犯意に基づくものである。このような買春行為に付随して行われた撮影等の行為も、買春行為ごとに別個独立の行為とみるのが相当である。(5)星景子「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項3号に該当する姿態を児童自らに撮影させ、その画像を同児童の携帯メールに添付して・・・」研修第720号
星検事の見解では、5ヶ月くらい空いても、一罪として処理できるとのことである。
3項製造罪(姿態とらせて製造)に引き続く複製の場合を製造罪に取り込むためには、「包括一罪」という処理が必要なんですよ。包括一罪であろうと、後の行為が構成要件を備えないと犯罪と評価できないわけで、ちょっとごまかしていると思いますけど。
1回1回併合罪にしてしまうと、複製行為が「姿態とらせて」を欠いて不可罰的事後行為になってしまいます。