児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

伊藤亜沙子 他2名「なぜ少女たちは援助交際に走るのか」Sexuality 第30号(増刊)

 被告人に読ませようと集めてきました。
 不可逆的変化だとすると救いようがないですよね。
 これを強調すると、罰金刑というのがおかしいですね。

◆ 少女たちが援助交際に走る理由
1.『女子中高生の援助交際の目的動機』においては、「知識不足による援助交際への誘惑」および「居場所追求」が主であった。
女子中高生は援助交際や性に対する誤解や知識不足のため援助交際について興味や期待を抱いていることが判明した。その動機としては、金銭欲求や物欲であり、自分の洋服やファッション購入のため、交遊費を得るためであった。ピアプレッシャーの強いこの発達期において、短時間で大金を得られるということから、また性への関心興味もあることから援助交際に走ってしまう場合がある。このような少女たちにとって援助交際は単なるアルバイト感覚であることも分かった。
一方、「居場所追求」では、家庭や学校に問題を抱える女子中高生が、家庭や学校に居場所が無いことから、援助交際の相手から自分の存在価値の認識が得られた。また家庭や学校にない自分の居場所が見つかったと錯覚する。一度体験すると、多額な報酬を得ることから金銭感覚が麻痺し、金銭依存症が出るため、止めようと思ってもなかなかできなくなる場合がある。また、サービスを提供しての金銭報酬を受けた結果、労働意識が芽生え学校へ行かなくなり、これまで抱いていた将来への抱負や期待も援助交際を様に変わることがある。

援助交際の危険性
援助交際の危険性として、「社会的危険件」と「感染症の危険性」が挙げられる。若い女性がファッションをきそいあうため、衣類、バッグ、靴などブランド品の所持年齢の低下などについてマスメディアがかきたてる風潮がある。また、援助交際の裏にアンダーグラウンドの組織が存在していることもある。特にこの集団に関わる未成年女性が行う性行為は、犯罪の温床となる。相手の名前や健康状態も分からない不特定多数の男性を相手にすることから、性感染症の蔓延を引き起こす可能性が高いという公衆衛生問題へも発展する。
このように、援助交際には身体的危険性が伴う。身体的危険性の例として強姦、暴力、監禁、麻薬、性感染症、望まない妊娠、金銭感覚麻痺などが本調査インタビューアーから挙げられた。さらに、路上生活を強いられる、援助交際の習慣化、暴力団など組続とのつながり、人間不信、異性との健全な交際ができない、孤立傾向になりやすく、ひきこもりや抑うつなどの精神疾患、向こう見ずな思考パターン、絶望と無気力の中ー自己他者を尊重できない、不健全な生活様式のため社会的敗北者となり得る。特にこの発達段階の課題として、異性と意義ある関係づくりもできなくなり、男性不信に陥り、また人間不信にも陥りやすくなるといった危険性が潜んでいる。
援助交際は双方の同意の下、行われる行為とすると、性的虐待にはならないが、身体的および精神的性的被害を受ける確立が高くなるという報告がある。それによると、自己否定症候群、低い自己評価と下手な社交術、抑うつ状態、蓋恥心、自己感情の対処能力の低下、性行為に対する嫌悪感や不全感、加害者に対する怒りや敵意恐怖感、他人に対する不信感、社会的技術の不足、大人になって性的虐待を行う加害者を配偶者や恋人にする傾向を示す、性的虐待者になるといった具体例が掲示された。さらに依存性が起こる場合もあり、援助交際の回数を重ねるにつれ、身体的・精神的感覚が麻痺することで、危険度が感知できなくなり、適切な判断力に欠け、さらには漠然とした不安や恐怖に耐えられず、精神的に自分を追い詰め、それを回避しようと、援助交際を操り返し、悪循環を引き起こしてしまうと考えられる。
援助交際にはこのように多種多様な危険が潜んでおり、その危険性が、少女たちに伝わっていない。