児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

<コンピューターウイルス>作成者ら3人逮捕 京都府警

 著作権法違反って、万能ツールみたいですね。
 庶民感情としては、ウイルスによる個別の業務妨害を処罰したいところですが、適用法条としては
  電子計算機損壊等業務妨害罪→5年
  著作権侵害罪→10年
  (刑法改正法案の不正指令電磁的記録作成等→3年)
という法定刑の罪があって、著作権法侵害罪で着手したということです。
 今後、具体的な被害・被害を立証できれば、電子計算機損壊等業務妨害罪も立件されるんでしょうが、不正指令電磁的記録作成罪の議論(法制審議会)が参考になりそうです。
 最近では、winnyのファイルの発信源というのは、かなり特定できるようですね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080124-00000051-mai-soci
<コンピューターウイルス>作成者ら3人逮捕 京都府
1月24日12時20分配信 毎日新聞
 京都府警ハイテク犯罪対策室と五条署は24日、ファイル交換ソフトWinnyウィニー)」で人気アニメ映像の入ったコンピューターウイルス「原田ウイルス」の一種を不特定多数に配布したとして、同ウイルスを作成した大阪府泉佐野市の20代の大学院生ら3人を著作権法違反容疑で逮捕した。ウイルス作成者の逮捕は国内で初めて。情報漏えいを引き起こすなど、ウイルス被害がインターネット社会でまん延する中、大きな反響を呼びそうだ。
 作成者以外は、同府と兵庫県内の30代の男。3人は容疑を認めている。
 調べでは、大学院生は昨年10〜11月ごろ、感染したパソコンの画面に発売前の人気アニメが現れるウイルスを作成。不特定多数にばらまいて、アニメの著作権を侵害した疑い。別の2人はウィニーを使ってこのアニメを配信した疑いが持たれている。
 関係者によると、原田ウイルスの「原田」は実在の人物で、表示される写真などから作成者の知人の可能性があるという。

著作権法第119条 
著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項の規定により著作権若しくは著作隣接権(同条第四項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第三号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第五項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第四号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者(第百十三条第三項の規定により著作者人格権又は実演家人格権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)
二 営利を目的として、第三十条第一項第一号に規定する自動複製機器を著作権、出版権又は著作隣接権の侵害となる著作物又は実演等の複製に使用させた者
三 第百十三条第一項の規定により著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者
四 第百十三条第二項の規定により著作権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者

刑法
第234条の2(電子計算機損壊等業務妨害
人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

http://www.moj.go.jp/HOUAN/KEIHO5/refer01.html
犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案
八  不正指令電磁的記録作成等
1  人の電子計算機における実行の用に供する目的で、イ又はロに掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処するものとすること。(第百六十八条の二第一項関係)
イ  人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
ロ  イに掲げるもののほか、イの不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録
2  1イに掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、1と同様とすること。(第百六十八条の二第二項関係
3  2の未遂は、罰するものとすること。(第百六十八条の二第三項関係)
九  不正指令電磁的記録取得等
八1の目的で、八1イ又はロに掲げる電磁的記録その他の記録を取得し、又は保管した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処するものとすること。(第百六十八条の三関係)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080124-00000072-jij-soci
PCウイルス作成者逮捕=日本初、大学院生ら3人−自宅など捜索・京都府
1月24日12時31分配信 時事通信
 「原田ウイルス」は、感染すると「原田」と名乗る男性の画像を表示する間に、パソコンに保存されている動画や音楽などのファイルをこの男性の画像に置き換える。インターネットエクスプローラーなどのファイルを削除する悪質なものも存在するという。今回摘発の対象となったのは、男性の画像の代わりにある特定のアニメの画像が使われている。 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080124-00000910-san-soci
調べによると、3人は大阪府泉佐野市の20代の大学院生と、兵庫県内の30代の男2人。ウイルス「Antinny(アンチニー)」の一種で、破壊型とされる通称「原田ウイルス」の亜種を作成した疑いが持たれている。
 「原田ウイルス」は、感染すると「原田」と名乗る男性の画像を表示する間に、パソコンに保存されている動画や音楽などのファイルをこの男性の画像に置き換える。インターネットエクスプローラーなどのファイルを削除する悪質なものも存在するという。
 今回摘発の対象となるのは、男性の画像の代わりにある特定のアニメの画像が使われているタイプ。ファイル共有ソフトWinnyウィニー)」のネットワークで流通。感染するとパソコンに保存されている動画などのファイルが、特定のアニメの画像に置き換えられ、破壊される恐れがあるという。

 器物損壊もいけそうですよね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080124-00000059-mai-soci
府警は当初、ウイルス感染でパソコンが作動できなくなる点に着目し、器物損壊罪の適用を検討した。だが「インストールし直せば使える」として断念するなど、難航。刑法ではなく特別法を俎上(そじょう)に載せ、ようやく立件に向けて動き出した。捜査員の間には「ウイルス罪があればこんな苦労をしなくて済む」との声が強い。

 園田寿・甲南大法科大学院教授(刑法・情報法)は「著作権法違反容疑での逮捕は苦肉の策だろう。本来は電子計算機損壊等業務妨害罪だが未遂規定がなく、ウイルスの作成や配布だけでは処罰されない」と指摘する。


 前例としては、メールにウイルスを添付した偽計・威力業務妨害罪の事件があったはずです。
 以前、警察の人に聞いたのは3件。

ウイルスの刑事事件
①【平成12年2月・警視庁検挙】
②【平成12年2月山形県検挙】
③【平成14年6月警視庁検挙】

なお、電子計算機損壊等業務妨害について。

手段
 1 人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊
 2 人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、
 3 又はその他の方法により
中間結果
 電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて

結果
 人の業務を妨害した者

第234条の2(電子計算機損壊等業務妨害
人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。


米沢「刑法等一部改正法の解説」
「指令ヲ与へ」る具体例としては、例えばキーボードから個別にコマンドを入力する場合のほか、プログラムに含まれる一定のインストラクションを実行させる場合がある。したがって、他人のを妨害する意図で、プログラムに予め一定の仕掛(例えば、一定の時点で、すべてのファイルを消去する命令等) を組み込んでおくということも、本罪の手段となり得る。この点に関連しては、このような故意による業務妨害プログラマー等の過失によるプログラムの欠陥(バグ)等に起対する障害との区別が曖昧であり、国会における審議の過程においても論議がなされたところである。具体的ケースにおいては、障害の原因(発生過程)を分析することによって、それがプログラム作成上の過失による欠陥によるものか、あるいは故意の工作によるものかは、技術的、客観的に明らかにすることができるものと考えられる