他の弁護士からの連絡によると、実際、こんな公訴事実=犯罪事実があるんですが、観念的競合として記載されています。法令適用にも54条1項が挙げられています。
被告人は、平成17月日午後時ころ、において、被害児童(当12年)に対し、同児童が13歳未満の女子であることを知りながら、その着衣を脱がせてるなどするとともに、
その着衣を脱がせて乳房などを露出させる姿態をとらせ、これを所携のデジタルカメラで撮影して同カメラ内蔵のSDカードに記録し、もって13歳未満の女子に対してわいせつな行為をするとともに、2条3項3号該当の姿態をとらせ、これを視覚により認識することができる電磁的記録媒体に描写して当該児童に係る児童ポルノを製造したものである。
しかし、判例によれば、強制わいせつと製造罪は併合罪ですからね。こういう観念的競合的記載は、訴因の単一性に欠けて、訴因不特定の疑いがでてくる。
そういう観点で見ると、先述の公訴事実では、どこまでが強制わいせつ罪で、どこからが製造罪なのかがわかりませんね。
刑事判決起案の手引H19
併合罪の場合には,各個の犯罪事実ごとに,第1,第2というように番号を付け,かつ,行を改め,科刑上の一罪の場合には,そのようにせずに各事実を続けて摘示するのが通例である。
検察講義案H18
公訴事実の罪名が複数の場合の記載要領
a 併合罪(刑45)の関係にある場合
原則として,それぞれの罪に当たる事実を他の罪に当たる事実から区別できる程度に特定し,独立して記載する。
この場合には,犯罪の日時を追って各事実を記載するのが原則であるが,各罪名ごとに分けた上,犯罪の日時・場所,方法,被害者などによって適宜まとめるなどし,一読して理解しやすいものとするよう工夫すべきである。
また,多数回にわたる同種の犯罪の場合には,別表を作成して起訴状に添付する例が多い。
さらに、訴因変更(当初訴因強制わいせつ→強制わいせつ+製造罪)で追加したりすると、公訴事実の同一性が無いわけで、致命的なミスとなります。
大阪高裁H14.9.10
児童ポルノ製造罪の保護法益は上記第1記載のとおりであり, この処罰の目的は,個人の性的自由を保護法益とする強制わいせつ罪のそれとは異なることは明らかであり,児童ポルノ製造罪が強制わいせつ罪の構成要件の一部とはいえず,
東京高裁H19.11.6
まず,児童買春行為それ自体(児童との性交ないし性交類似行為)は,2項製造罪の実行行為の一部であるとは解されず,児童買春罪と2項製造罪は,その実行行為が部分的にも重なり合う関係にはないのである(このことは,児童に対する強姦や強制わいせつの状況を撮影した場合に,強姦行為や強制わいせつ行為が2項製造罪の実行行為め一部とはいえないのと同様である。)。
次に,両罪に該当する行為は,本件においてはほぼ同時的に併存し,密接に関連しているので,自然的観察の下で社会的見解上1個の行為と評価するのが相当か否かが問題となる。判例上,外国から航空機等により覚せい剤を持ち込み,これを携帯して通関線を突破しようとした場合の覚せい剤取締法上の輸入罪と関税法上の無許可輸入罪が観念的競合の関係にあるとされており,両罪は実行行為の重なり合いはないが,このような行為は社会的見解上1個の行為であるとされている(最高裁昭和58年9月29日第一小法廷判決・刑集37巻7号1、110頁)ので,これと本件の場合を比較検討してみると,外国から覚せい剤を携行して通関線を突破して本邦内に輸入しようとする者は,必然的に両罪を犯すことになり,いずれか一方の罪のみを犯すということは考えられない(関税法違反罪の実行の着手前に発覚した場合を除く。)が,本件の場合は,児童買春罪のみを犯し,2項製造罪には及ばないことも,逆に,2項製造罪のみを犯し,児童買春罪には及ばないことも共に十分に可能なのである。覚せい剤輸入の場合は両罪に該当する行為はいずれも「輸入」として同質的なものといえるが,「買春」と「製造」はむしろ異質な行為であって,行為者の動態としての1個性は認めがたいというべきであろう。
さらに,本件の2項製造罪においては,児童の姿態等の撮影とこれに伴う第1次媒体への記録により第1次媒体(児童ポルノ)を製造したものとされているにとどまるが,2項製造罪においては,第1次媒体の製造に引き続き,電磁的記録の編集・複写,ネガフィルムの現像・焼き付け等の工程を経て,第2次媒体や第3次媒体の児童ポルノを製造する行為も実行行為に包含されるのであり,事案によっては,相当広範囲にわたる行為に(包括)一罪性を認めざるを得ないであろうが,児童買春罪との観念的競合関係を肯定するとすれば,いわゆるかすがい作用により,科刑上一罪とされる範囲が不当に広がる恐れも否定できないように思われる(強姦罪等との観念的競合を肯定するとすれば,その不都合はより大きいものとなろう。)。
なお,本件と同様に撮影を伴う児童買春の事案において,児童買春罪と3項製造罪が観念的競合の関係にあるとした裁判例は少なくないようであり,3項製造罪に.ついては,「児童に……姿態をとらせ(る)、」行為もその実行行為に含まれるのか否かという問題が存するのであるが,両罪を併合罪関係にあると解する余地もあるように思われる。
また,撮影者が淫行の相手方と,なる児童淫行罪(児童福祉法60条1項,34条1項6号)の事案についても,児童淫行罪と2項製造罪や3項製造罪が観念的競合の関係にあるとした裁判例も少なくないようであるが,これらについてもなお検討が必要のように思われる。少なくとも,これらの裁判例の結論を動かし難いものとして,本件の児童買春罪と2項製造罪の罪数関係を論ずべきではないであろう。
名古屋高裁金沢支部H17.6.9
6罪数関係の誤りの所論について(控訴理由第8)
所論は,児童買春罪と児童ポルノ製造罪とは,手段結果の関係にあるか,社会的に見て一個の行為であるから,牽連犯あるいは観念的競合となり一罪であるのに,原判決は,これを併合罪としてしており,罪数判断を誤っている,というのである。
しかし,児童買春の際に児童ポルノが製造されるのが通常であるとはいえないから,児童買春罪と児童ポルノ製造罪とは,手段結果の関係にあるとも社会的に見て一個の行為であるともいえない。
名古屋高裁金沢支部H14.3.28
(3)所論は,原判示第3の1の買春行為がビデオで撮影しながら行われたものであることから,上記児童買春罪と原判示第3の2の児童ポルノ製造罪とは観念的競合となるともいうが(控訴理由第21),両罪の行為は行為者の動態が社会見解上1個のものと評価することはできないから,採用することはできない
行為と弁護人は同じなんですが、法令適用が定まりません。