児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「学校裏サイト」初の立件 ネット掲示板で女子中学生実名中傷 放置の管理人

 幇助というのがしっくり来るんですが、放置したことを捉えるなら不作為犯として構成する必要がありますが、裁判所はその議論を避けて、作為犯の正犯としています(東京高裁H16.6.23→最高裁h19.3.29)。
 作為義務の根拠と内容が問題です。わからないです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070427-00000053-mai-soci
プロバイダーは「掲示板の管理人に言ってほしい」と回答。改めて管理人にメールなどで要求したが、応じてもらえず府警に相談した。府警のサイバー捜査担当者が、書き込んだ女子生徒と管理人の男を割り出した。
 男は「中傷にあたると分かっていたが、これくらいなら削除するに値しないと思った」と供述している。母親が府警に相談した直後の同10月19日、掲示板を削除したという。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/crime/49426/
学校裏サイト」初の立件 ネット掲示板で女子中学生実名中傷 放置の管理人
学校裏サイト」と呼ばれるインターネットの掲示板で、女子中学生の実名を挙げた中傷書き込みを削除せずに放置したなどとして、大阪府警が名誉棄損幇助(ほうじょ)容疑で、掲示板を管理していた大阪市内の会社役員の男(26)を書類送検していたことが26日、分かった。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070427-00000075-jij-soci
ネットの中傷書き込みで、掲示板の管理人の刑事責任が問われるのは異例。同署はいじめの助長につながると判断し、立件に踏み切った。男は容疑を認めているという。 

 削除義務もわからないし、実は正犯の一部なのに幇助とされて、なにを認めているのかわかりません。

 これが有罪なら、2ちゃんねるにも飛び火します。

東京高裁平成16年6月23日
2当裁判所の基本的な判断
(1)本件で問題とされているのは,児童ポルノの陳列であるが,陳列行為の対象となるのは,前記のような児童ポルノ画像が記憶・蔵置された状態の本件ディスクアレイであると解される。
(2)原審以来被告人の行為の作為・不作為性も問題とされているが,被告人の本罪に直接関係する行為は,本件掲示板を開設して,原判示のとおり,不特定多数の者に本件児童ポルノ画像を送信させて本件ディスクアレイに記憶・蔵置させながら,これを放置して公然陳列したことである。
 そして,本罪の犯罪行為は,厳密には,前記サーバーコンピュータによる本件ディスクアレイの陳列であって,その犯行場所も同所ということになる。したがって,この陳列行為が作為犯であることは明らかである。そして,原判示の被告人の管理運営行為は,この陳列行為を開始させてそれを継続させる行為に当たり,これも陳列行為の一部を構成する行為と解される。この行為の主要部分が作為犯であることも明らかである。確かに,被告人が,本件児童ポルノ画像を削除するなど陳列行為を終了させる行為に出なかった不作為も,陳列行為という犯罪行為の一環をなすものとして,その犯罪行為に含まれていると解されるが,それは,陳列行為を続けることのいわば裏返し的な行為をとらえたものにすぎないものと解される。
 なお,更に付言すると,被告人は,児童ポルノ画像を本件ディスクアレイに記憶・蔵置させてはいないが,前記のように,金銭的な利益提供をするなど,より強い程度のものではなかったとはいえ,本件掲示板を開設して前記のように前記送信を暗に慫慂・利用していたのである。この行為は,陳列行為そのものではないから,開設行為以外の点は原判決の犯罪事実にも記載されていないが,陳列行為の前段階をなす陳列行為と密接不可分な関係にある行為であるから,これも広くは陳列行為の一部をなすものと解される。そして,これが作為犯であることは明らかである。
(3)被告人の故意は,前記認定から明らかなように未必的な故意であって,本件陳列行為開始時点からあったと認定でき,この点の原判決の判断は正当である。

(3)所論は,要するに,児童ポルノ公然陳列罪は,状態犯と解すべきであって,被告人が本件児童ポルノ画像を認識する以前に既遂に達しているから,被告人を事後従犯に問うこともできないし,仮に本罪が継続犯であるならば,被告人には幇助犯が成立するにすぎないのに,被告人に児童ポルノ公然陳列罪の正犯が成立するとした原判決には,判決に影響を及ばすことの明らかな法令適用の誤りがある,と主張する(控訴理由第14)。
 しかし,児童ポルノ公然陳列罪は,いったん陳列罪として既遂に達しても,その後も陳列がなされている限り法益侵害が続いており,また,陳列行為も続いているものと解することができるから,所論のように状態犯ではなく,継続犯と解するのが相当である。また,前記説示したところによれば,被告人は,自らの利益のために本件犯行に及んだものであって,その関与の態様,程度等に照らしても,被告人に児童ポルノ公然陳列罪の正犯が成立するとした原判決の判断は正当であって,所論のように幇助犯にとどまるものと解するのは相当でない。

このように、掲示板開設〜放置(削除しない)は作為の正犯と評価されますから、開設行為とか削除しなかった行為とかその一部分を切り取っても、それは正犯の実行行為の一部であって、幇助ではありません。

追記
 これまで、大阪府警は個人が被害者となった掲示板の名誉毀損の被害申告を受け付けなかったのですが、変わりますかね?
 テレビ報道によると、管轄は「大阪府南警察署」でした。