児童ポルノについては、すでに立法者(流動的ですが)の解釈を離れて、裁判所が取締の必要性を強調して独自に解釈しています。
しかし、マスターテープに販売目的を認めたからと言って、CGやアニメが児童ポルノになることはないと思います。いくつか高裁判例で確認しましたから。次の事件でまた確認してもいいですけど「くどい」と言われそうです。
http://www.tkclex.ne.jp/commentary/pdf/2007-3-23.pdf
速報判例解説−TKCローライブラリー
刑法No.5【z18817009-00-070050032】
児童ポルノに該当するわいせつ画像データの販売に備えて光磁気ディスクに保存・所持した行為について、児童ポルノに係る行為等の処罰及び保護に関する法律7条2項(平成16年改正前のもの)及び刑法175条の「販売の目的」を認めた事例 久留米大学助教授森尾亮
《判例の解説》一複製が可能な(それ自体は販売意図のない)オリジナルのわいせつ画像データを保存・所持している場合に、それが刑法175条後段にいう「販売目的所持」に当たるかという点をめぐっては肯定・否定の両説がある。肯定説は、わいせつ画像データの複製が極めて容易になったという事情を背景にすれば、そのわいせつ物が一般社会に広く流布される危険性は高く、販売の目的物を所持する場合とその危険性において大差はなく、また、このように解しても刑法175条後段の文理に反するとはいえないとし、同罪にいう「販売目的所持」と認める2)。これまでの下級審判例は、こうした肯定説の考え方に基づき、オリジナルの所持を同罪にいう所持として処罰することを認めてきた(富山地判平2・4・13判時1343号160頁、東京地判平4・5・12判タ800号272頁)。これに対し、否定説は、刑法175条後段のわいせつ文書等販売目的所持罪にいう所持の対象物と販売の目的物とは同一と解するべきであり、(それ自体は販売意図がない)オリジナルの所持は同罪にいう所持とはいえず、その処罰は175条に規定されていない予備行為の処罰に当たり、罪刑法定主義に反すると主張してきた3)。
二しかしながら、本決定によって、これまでの対立してきた点が解消されたとは到底いえない。本決定は、複製物を作成して販売するためのオリジナルとしてわいせつ画像データを所持することは「販売目的所持」の予備にすぎず、それは罪刑法定主義に反するのではないかという否定説からの批判に対して、これまで下級審判例が示してきたこと以上の回答を示しえていない。こうした状況で、流布の危険性を強調しながら刑法175条後段を実質的に解釈していくとなれば、むしろ様々な矛盾が顕在化してくるのではないかと思われる。例えば、児童ポルノ処罰法7条2項における児童ポルノの「保管・所持」の処罰に関する立法趣旨との間にズレが生じてくる。児童ポルノ処罰法は、広義での児童虐待の防止、換言すれば、被写体とされる子どもの受ける現実的・直接的な性的虐待やそれに伴う精神的被害、撮られた写真が事後的に広範に流通することによって(現実的・直接的な性的虐待の存否にかかわらず)被りうる精神的被害等の防止を目的・根拠とするものである。つまり、当該子どもの個人的法益の保護の重要性ゆえに「保管・所持」段階での処罰が肯定されることとなったのである。したがって、「児童の特定性」が得られないような合成写真やチャイルド・ポルノ・アニメ等については処罰が否定されている4)。これに対し、判例は、周知のごとく刑法175条の保護法益を「善良な性風俗」と解し、近時の下級審ではコミック・ポルノもその規制対象であるとするに至っているが(東京地判平16・1・13)5)、本決定の考え方やこうした下級審判例の動向を併せて考えれば、児童ポルノ処罰法の規制対象には含まれないような「合成写真」や「アニメ・ポルノ」等についても、行為者の「(複製物の作成を含む)販売目的」という主観的要件が認められれば、(それ自体は販売意図のない)オリジナルのわいせつ画像データの所持として刑罰適用が肯定されてしまうことになりかねない。