児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

東京高裁判決に従って主張した控訴理由が「弁護人独自の見解」とされた事例(名古屋高裁h19.7.6)

 さっき届きました。
 弁護人に失礼じゃないか!
 有罪にする理屈がわからなかったら、被告人に有利に解釈して、無罪のはずですよ。

名古屋高裁h19.7.6(誤変換はわざと残してある)
主任弁護人の控訴理由第 2 (原判示 2の行為は,幇助ではなく正犯の未遂である。)について
論旨は,要するに,原判示 2につき,電子掲示板開設行為は,児童ポルノ公然陳列罪の正犯の未遂であり,これを公然陳列罪の常助と認定した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があり,ひいては法令適用の誤りがある,というのである。そこで,本件のようにインターネットの電子掲示板を利用しての児童ポルノ公然陳列罪における電子掲示板開設行為の性質を検討すると,後記 2で説示するとおり,電子掲示板に児童ポルノ画像を送信して記憶,蔵置させ,不特定多数のインターネット利用者に対し,その画像データの閲覧が可能な状況を設定する行為が,児童ポルノ公然陳列罪の実行行為に当たると解されるところ,①電子掲示板開設者が児童ポルノ画像をその電子掲示板に送信する場合 (原判示 1の場合),電子掲示板開設行為は,自らが行う児童ポルノ公然陳列のための準備 (予備)行為となるにとどまり,また,②投稿者らが児童ポルノ画像を電子掲示板に送信する場合 (原判示 2の場合),電子掲示板開設行為は,実行正犯である投稿者らが行う上記実行行為を,それ以外の方法で容易にする行為であって,自らのためにするものではないから,幇助行為に他ならない。したがって,原判示 2について,電子掲示板開設行為を封助と認定した原判決に事実の誤認はないし,それに基づく法令適用の誤りもない。
なお,所論は,原判決の法令適用の前提となる事実認定が,同種事案における他の裁判例と異なるから,法の下の平等 (憲法 14条 1項)に違反し,また,罪刑法定主義 (憲法 31条)にも違反する,という。しかレ同種事案における他の裁判例の判断と異なることとなった場合,直ちに法の下の平等 (憲法 14条 1項)違皮や,罪刑法定主義 (憲法 31条)違反の問題が生ずるわけではないから,所論は,独自の見解であって,採用できない (もとより,同種事案における判断が裁判体ごとに異なる事態は望ましいことではないが,このような場合,上級審による見解の統一が図られ,又は多数裁判例の集積により自ずから一定の結論に収束していくこととなる。)

判例集積しろ、上告しろって、この事件の被告人は有罪になっちゃうし、東京高裁事件では正犯で確定しちゃった被告人もいるわけで、それじゃ、刑事裁判所の仕事放棄じゃないかと思うんですよ。場当たり的に有罪判決書いてるからこういうことになる。
 正犯で2人目起訴しちゃった横浜地検の立場がなくなるじゃん。
 たまには奥村弁護士の言うことを聞け。


追記
 名古屋高裁に「独自の見解」と評された東京高裁判決。
 東京高裁判決で「独自の見解」と評されている幇助犯説が、名古屋高裁の結論であり、奥村説。
 「独自の見解」というのは、世間の言葉で言えば「屁理屈」という意味なんですが、要するに、名古屋高裁と東京高裁とがお互いに「屁理屈だ」とののしりあっているような構図です。そんなの、法廷の裏でやって欲しいですね。

東京高裁H16.6.23
2当裁判所の基本的な判断
(2)原審以来被告人の行為の作為・不作為性も問題とされているが,被告人の本罪に直接関係する行為は,本件掲示板を開設して,原判示のとおり,不特定多数の者に本件児童ポルノ画像を送信させて本件ディスクアレイに記憶・蔵置させながら,これを放置して公然陳列したことである。
 そして,本罪の犯罪行為は,厳密には,前記サーバーコンピュータによる本件ディスクアレイの陳列であって,その犯行場所も同所ということになる。したがって,この陳列行為が作為犯であることは明らかである。そして,原判示の被告人の管理運営行為は,この陳列行為を開始させてそれを継続させる行為に当たり,これも陳列行為の一部を構成する行為と解される。この行為の主要部分が作為犯であることも明らかである。確かに,被告人が,本件児童ポルノ画像を削除するなど陳列行為を終了させる行為に出なかった不作為も,陳列行為という犯罪行為の一環をなすものとして,その犯罪行為に含まれていると解されるが,それは,陳列行為を続けることのいわば裏返し的な行為をとらえたものにすぎないものと解される。
 なお,更に付言すると,被告人は,児童ポルノ画像を本件ディスクアレイに記憶・蔵置させてはいないが,前記のように,金銭的な利益提供をするなど,より強い程度のものではなかったとはいえ,本件掲示板を開設して前記のように前記送信を暗に慫慂・利用していたのである。この行為は,陳列行為そのものではないから,開設行為以外の点は原判決の犯罪事実にも記載されていないが,陳列行為の前段階をなす陳列行為と密接不可分な関係にある行為であるから,これも広くは陳列行為の一部をなすものと解される。そして,これが作為犯であることは明らかである。
・・・
(3)所論は,要するに,児童ポルノ公然陳列罪は,状態犯と解すべきであって,被告人が本件児童ポルノ画像を認識する以前に既遂に達しているから,被告人を事後従犯に問うこともできないし,仮に本罪が継続犯であるならば,被告人には幇助犯が成立するにすぎないのに,被告人に児童ポルノ公然陳列罪の正犯が成立するとした原判決には,判決に影響を及ばすことの明らかな法令適用の誤りがある,と主張する(控訴理由第14)。
 しかし,児童ポルノ公然陳列罪は,いったん陳列罪として既遂に達しても,その後も陳列がなされている限り法益侵害が続いており,また,陳列行為も続いているものと解することができるから,所論のように状態犯ではなく,継続犯と解するのが相当である。また,前記説示したところによれば,被告人は,自らの利益のために本件犯行に及んだものであって,その関与の態様,程度等に照らしても,被告人に児童ポルノ公然陳列罪の正犯が成立するとした原判決の判断は正当であって,所論のように幇助犯にとどまるものと解するのは相当でない。