児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

無罪判決(函館地裁H19.5.23)

 具体的な供述内容は、ちょっと声に出せない内容です。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070620105616.pdf
主文被告人は無罪。
理由
第1 公訴事実
本件公訴事実は,「被告人は,平成17年6月19日午後8時ころ,函館市a町b丁目c番d号Aアパートe号棟1階中被告人方玄関内において,B(当時10歳,平成7年5月3日生)に対し,同女が13歳未満であることを知りながら,同女のパンツ内に手を差し入れて手指で同女の陰部を弄び,もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をしたものである。」というものである。
第2 争点の概要
上記公訴事実に沿う証拠としては,本件の被害者とされるB本人による供述(公判供述,第4回公判調書中の同人の供述部分,甲3,12ないし16)の他には,同人から被害申告を受けた者の供述(証人Cの公判供述,第3回公判調書中の証人D及び同Eの供述部分,甲11,17)があるのみである。他方,被告人は,そのような行為は全くしていないとして,捜査段階から当公判廷に至るまで一貫して公訴事実を全面的に否認している。そのため,公訴事実の認定は,その被害を受けたとするBの供述(以下,同人による,本件公訴事実及び本件に至る経緯等を含む一連の供述を,「本件被害供述」と総称する。)の信用性に大きく依拠することになる。そこで,以下,本件被害供述の信用性が,合理的な疑いを越えて公訴事実を証明するほど高いと評価できるか否かを中心に検討する。
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総合的な評価
以上のとおり,本件被害供述は,その中核部分についてある程度具体的で一貫した説明がなされている点で一応の信用性を有するとは言えるが,他方,①本件以前は被告人との関係は良好であったとしながら(これは前記 アの認定とも符合する。),本件以前にも被告人から繰り返しわいせつな行為をされていたと述べる点で不自然,不合理である上に,②被害の際に第三者がいたのか否かという重要な点について,単なる記憶の変化とは説明できない不可解な変遷がある。さらに,③Bと被告人の関係からすれば,虚偽の供述をする理由がないとは断定できず,④Bは虚偽供述に対する抑制が弱く,これまでも虚言によるトラブルを頻発させていたのであり,これらの事情を総合すると,B自身にその認識があるか否かはともかく,同人が何らかの理由から公訴事実について虚偽の供述をしているのではないかとの疑念を払拭することができず,その信用性には疑問が残るというべきである。
なお,上記①②の問題については,「本件以前にも被告人からわいせつな行為をされた」「第三者がいた」とする点をBの作話と考えれば理解はできるものの,その場合は当然,公訴事実自体についても,同様の可能性を想起せざるを得ないのであるから,いずれにせよ本件被害供述から被告人の犯行を認定することはできない。
被告人の弁解
検察官は被告人の弁解が不自然であると主張するところ,たしかに同人の供述には,本件当日にBと会った時間帯等の点で疑問もあるが,単なる記憶違いと理解することも可能であり,これにより本件被害供述の信用性が増強される関係にもない。検察官の主張を採用することはできない。