児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

擬似的かすがい現象 辻本典央「罪数論と手続法との交錯 かすがい現象について」鈴木古稀下巻p541

 実務家は罪数論と手続法が交錯・倒錯した世界にいます。
 なんか、かすがい現象が人気ですね。
 学者の論文って、判例が雑誌に紹介されてから書き始めるので、出てくるのが遅いですね。東京高裁h17.12.26がh19.5に分析されています。
 札幌高裁h19.3.8も大阪高裁H18.10.20かすがいですよ。

近時'かすがい現象が問題となった事例で、実際に、検察官がかすがいとなるべき犯罪を「呑んで」起訴することで、二重起訴の問題を回避するという事例(東京高判平成一七年一二月二六日刊時一九一八号二三頁)が報告されている。(注30)
この事件は'被告人が平成一ハ年二年二日から平成一七年二月一七日までの間六回にわたり実行した児童ポルノ製造罪(児童買春等処罰法七条一項、三項、二条三項)により地方裁判所に起訴されたが、被告人はすでに別訴にて平成一七年三月二六日に実行した児童淫行罪(児童福祉法六〇条二項、三四条一項六号)により家庭裁判所に起訴されており、この児童淫行罪は'本件で起訴された児童ポルノ製造罪と実体法上観念的競合の関係にある(起訴されなかった)ものと包括一罪の関係にあり、やはり全体が包括一罪の関係にある児童ポルノ製造罪との間でも起訴されなかった児童淫行罪をかすがいとして全体として科刑上一罪の関係となり、したがって少年法三七条二項の適用により全て家庭裁判所に事物管轄が認められるために本件は公訴棄却されるべきものではないかという点が問題となったものである

注30 もっとも、本件は、実体法上二個の、各々が集合犯として包括1罪の関係にある犯罪相互の関係が問題となった事例であり、いわゆる「擬似的かすがい現象」というべき事例である。