児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被害児童をして撮影・送信させる行為の擬律

 これを製造罪の間接正犯とする判決があるんですが、理論構成として疑問です。

 http://www.nikkansports.com/general/f-gn-tp0-20070507-195346.html
女子高校生(当時16)に「恥ずかしがり屋の性格を直す」として、上半身の裸の画像などを携帯メールで送信させ・・・た疑い。 

 こんな意見を考えています。
 理論構成上の問題です。別に被害児童に責任追わせようということじゃなくて、こう考えないと被告人の刑事責任が出てこないはずだと思うんですよ。

 常識で考えれば、被害児童の携帯電話→被害児童の携帯電話会社の送信メールサーバ→被告人の受信メールサーバが児童ポルノと化したと思われるが(各製造罪は包括一罪)、その各過程に「姿態をとらせて」など3項製造罪(姿態とらせて製造)の要件を具備しなければならないのであるから、そのように記載しなければならない。

 「姿態をとらせて」は実行行為であるから(東京高裁H17.12.26、札幌高裁H19.3.8)、ダビングの際にも「姿態をとらせて」が満たされなければならない。携帯電話→サーバの複製過程には「姿態をとらせて」がない。

 被害児童自身を利用する間接正犯との構成によれば、被害児童が完全に道具と化したことを記載しなければならないところ、その記載がない。

 メール・電話という間接的な接触では、16歳の児童は被告人の「道具」とはならないし、規範的障碍が認められるから、間接正犯構成は不適切である。刑法理論としては、被害児童自身による製造罪であって、被告人はその共犯と評価されるべきである。

 被害者の携帯電話で撮影した時点で、3項製造罪(姿態とらせて製造)は既遂となり、その後の複製行為(被告人のメールボックスへの送信)は、製造罪としては、不可罰的事後行為である。

 送信行為は被害児童から被告人への提供罪であって被告人はその共犯として評価されるべきである。

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