同一児童に対する数回の撮影行為については、3項製造罪(姿態とらせて製造)を包括一罪にするのが実務らしいですが、改正前からやっている場合、違法じゃなかったのがある日突然違法になるので、違法性の意識があるか・どの程度あるかが問題になります。
製造罪について違法性の意識欠如
1 はじめに
3項製造罪(姿態とらせて製造)というのは、h16.7.8に施行されたが、被告人の撮影行為はそれをまたいで行われているのであるから、製造罪の公訴事実の一部又は全部について3項製造罪の創設を知らなかった。
法務省もいまだに新法を周知していない有様であって、被告人が知らないのも無理はない。
従って、刑法38条3項但書によって、児童ポルノ製造罪については、減軽する必要がある。
弁護人が原審においてもそう主張していたにもかかわらず、原判決は減軽を行っていない。従って、原判決は違法性の意識を欠いた点に刑法38条3項但し書きを適用して減軽しなかった点で重すぎて不当であり、量刑不当により破棄を免れない2 改正法施行と本件製造行為
改正前から被告人が被害児童の裸体などを撮影していたことは証拠上明かである。
法改正後の撮影行為のみを製造罪として立件したことが説明されている。罪刑法定主義から当然である。客観的には3項製造罪(姿態とらせて製造)がh16.7.8に施行されたとしても、被告人が認識する契機もなく、被告人がそれを認識した事実はない。
特に、改正直後の犯行もある。
特別法犯の構成要件の追加など、一般人には知り得ないところである。3 法務省の周知不足
さらに、今日、新法施行の周知として有力なのは官庁のwebページであるが、主務官庁である法務省のWEBサイトは、いまだに旧法を広報している。
形式的には改正法は、公布・施行されているが、実質的には「公布・施行」が欠ける。
http://www.moj.go.jp/KEIJI/h01.html法務省の広報によれば、3項製造罪は存在しないのであるから、違法性の意識の可能性も乏しいと言うべきである。
期待可能性が減少すると評価すべきである。
4 まとめ
以上の通り、被告人は3項製造罪の施行を知らなかったから違法性の意識がなかった。
かつ、法務省もいまだに新法を周知していない有様であって、被告人が知らないのも無理はない。
従って、刑法38条3項但書によって、児童ポルノ製造罪については、減軽する必要がある。
弁護人が原審においてもそう主張していたにもかかわらず、原判決は減軽を行っていない。従って、原判決は違法性の意識を欠いた点に刑法38条3項但し書きを適用して減軽しなかった点で重すぎて不当であり、量刑不当により破棄を免れない
第38条(故意)
罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
2 重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
3 法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。