児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制わいせつ罪(176条後段)と3項製造罪は観念的競合(神戸地裁尼崎支部H26.7.29)

 保管検察官は閲覧を渋っていましたが、判例秘書に出ました
 共犯は女性なので、強制わいせつ罪につき性的傾向が要件になるはずで、強制わいせつ罪は成立しないのですが、弁護人はなにも指摘していません。控訴すべき事案でした。

強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
神戸地方裁判所尼崎支部判決平成26年7月29日
(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 Aと共謀の上,同人の娘であるB(平成11年○○月○○日生,当時13歳。以下「B」という。)及び家出をしてA方に寝泊まりしていたC(平成11年○月○日生,当時14歳。以下「C」という。)がそれぞれ18歳未満であることを知りながら,平成25年4月6日,兵庫県西宮市(以下略)□□西宮店において,B及びCに乳房を露出した姿態をとらせ,被告人がその状況をデジタルカメラを用いて動画として撮影し,その動画データ3画像を,デジタルカメラに装着した電磁的記録に係る記録媒体であるSDカードに記録させて保存し,もって衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。
第2 Aと共謀の上,同人の娘であるD(平成15年○月○○日生,当時9歳。以下「D」という。)が13歳未満であることを知りながら,平成25年4月21日,兵庫県西宮市(以下略)◇◇西宮今津店において,Dの胸部,陰部等を露出した姿態をとらせ,被告人がその状況をデジタルカメラを用いて動画として撮影し,その動画データ10画像を,デジタルカメラに装着した電磁的記録に係る記録媒体であるSDカードに記録させて保存し,もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をするとともに,衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。

(証拠の標目)
(法令の適用)
罰条
 第1の所為について
  包括して刑法60条,平成26年法律第79号附則2条による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「改正前児童買春,児童ポルノ等処罰法」という。)7条3項,1項前段,2条3項3号
 第2の所為について
  強制わいせつの点 刑法60条,176条後段
  児童ポルノの製造の点 刑法60条,改正前児童買春,児童ポルノ等処罰法7条3項,1項前段,2条3項3号
 第3の所為について
  強制わいせつの点 被害者ごとに刑法60条,176条後段
  児童ポルノの製造の点 包括して刑法60条,改正前児童買春,児童ポルノ等処罰法7条3項,1項前段,2条3項3号
 第4の所為について
  包括して刑法60条,改正前児童買春,児童ポルノ等処罰法7条3項,1項前段,2条3項3号
 第5の1ないし3の各所為について
  被害者ごとに児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律4条
科刑上一罪の処理
 第2の罪について 1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,刑法54条1項前段,10条により,重い強制わいせつの罪の刑で処断することとする。
 第3の各罪について 1個の行為が3個の罪名に触れる場合であるから,刑法54条1項前段,10条により結局以上を1罪として刑及び犯情の最も重いEに対する強制わいせつの罪の刑で処断することとする。
刑種の選択
 第1,第4,第5の1ないし3の各罪について,いずれも懲役刑を選択
併合罪加重
 刑法45条前段,47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い第2の罪の刑に法定の加重
未決勾留日数の算入
 刑法21条
訴訟費用の不負担
 刑事訴訟法181条1項ただし書
  平成26年8月4日
    神戸地方裁判所尼崎支部
           裁判官  堀部麻記子