児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

耐震偽造で懲役5年(東京地裁H18.12.26)

 偽装・偽造と言われつつ、処断刑期は議院証言法違反で決まってるんですよね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061226-00000053-mai-soci
 <結論>
 被告は建築士や建築業界全体の技能、職業倫理に対する国民の信頼をかつてないほど低下させた。建築基準法違反(耐震偽装)で、法益侵害の重大性と法定刑(30万円以下の罰金)の軽さとの間に較差があることは弁護人指摘の通りだが、偽証(法定刑は懲役3年以上10年以下)の罪の犯情が極めて重く、被告を相当期間の実刑に処するに十分と判断した。

姉歯被告の起訴事実〉 
虚偽の構造計算書を作成しマンションやホテルを完成させた=建築基準法違反
衆院国土交通委員会で偽証した=議院証言法違反
秋葉被告に建築士の名義を貸した=建築士法違反幇助

御指摘いただきましたが、法文はこち

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO225.html
議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律
第6条〔偽証の罪、自白による刑の減免〕
この法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。
②前項の罪を犯した者が当該議院若しくは委員会又は両議院の合同審査会の審査又は調査の終る前であつて、且つ犯罪の発覚する前に自白したときは、その刑を減軽又は免除することができる。

 偽証罪の法定刑を借用しようとしているというのは、公判でも指摘されたようです。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/33012/
姉歯被告が起訴された3罪で、法定刑が最も重いのは議院証言法違反罪(3月以上、10年以下の懲役)。建築士法違反幇(ほう)助(じよ)罪は6月以下の懲役で、“本件”の構造計算書改竄(かいざん)を問う建築基準法違反罪は「罰金30万円以下」でしかない。
 弁護側は「求刑は、建築基準法違反罪の法定刑の軽さを、法定刑の重い議院証言法違反で埋めようとするもので、許されない」と主張していたが、判決は偽証が引き起こした社会混乱を重視して「真相解明を妨げたこの罪のみにおいても実刑に処するに十分」と断じた。

新潟監禁致傷+窃盗事件の控訴審・上告審判決が参考になります。

東京高等裁判所平成14年12月10日
以上のような刑法47条の趣旨からすれば,併合罪全体に対する刑を量定するに当たっては,併合罪中の最も重い罪につき定めた法定刑(再犯加重や法律上の減軽がなされた場合はその加重や減軽のなされた刑)の長期を1.5倍の限度で超えることはできるが,同法57条による再犯加重の場合とは異なり,併合罪を構成する個別の罪について,その法定刑(前同)を超える趣旨のものとすることは許されないというべきである。これを具体的に説明すると,逮捕監禁致傷罪と窃盗罪の併合罪全体に対する刑を量定するに当たっては,例えば,逮捕監禁致傷罪につき懲役9年,窃盗罪につき懲役7年と評価して全体について懲役15年に処することはできるが,逮捕監禁致傷罪につき懲役14年,窃盗罪につき懲役2年と評価して全体として懲役15年に処することは許されず,逮捕監禁致傷罪については最長でも懲役10年の限度で評価しなければならないというわけである。原判決は,併合罪全体に対する刑を量定するに当たり,再犯加重の場合のように,刑法47条によって重い逮捕監禁致傷罪の法定刑が加重されたとして,同罪につき法定刑を超える趣旨のものとしているが,これは明らかに同条の趣旨に反するといわざるを得ない。

最高裁判所第1小法廷平成15年7月10日
刑法47条は,併合罪のうち2個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは,同条が定めるところに従って併合罪を構成する各罪全体に対する統一刑を処断刑として形成し,修正された法定刑ともいうべきこの処断刑の範囲内で,併合罪を構成する各罪全体に対する具体的な刑を決することとした規定であり,処断刑の範囲内で具体的な刑を決するに当たり,併合罪の構成単位である各罪についてあらかじめ個別的な量刑判断を行った上これを合算するようなことは,法律上予定されていないものと解するのが相当である。また,同条がいわゆる併科主義による過酷な結果の回避という趣旨を内包した規定であることは明らかであるが,そうした観点から問題となるのは,法によって形成される制度としての刑の枠,特にその上限であると考えられる。同条が,更に不文の法規範として,併合罪を構成する各罪についてあらかじめ個別的に刑を量定することを前提に,その個別的な刑の量定に関して一定の制約を課していると解するのは,相当でないといわざるを得ない。