児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「原判決の言い渡した刑は原判決の法令の適用から導かれる処断刑の下限を下回るものであるから、原判決には理由不備の違法がある」という主張は、不利益主張ではない。(東京高裁S63.5.16)

 控訴審弁護って、原判決をあの手この手で論難するので、こういうのもありですよね。
 酌量減軽しないと処断刑期の下限は3年で、2年6月にできないのに、酌量減軽を書き忘れたような事案です。

東京高等裁判所判決昭和63年5月16日
東京高等裁判所判決時報刑事39巻5〜8号17頁
判例タイムズ681号220頁
       主   文
 原判決を破棄する。
 被告人を懲役二年六月に処する。
 原審における未決勾留日数中二〇日を右刑に算入する。
       理   由
一 弁護人の控訴趣意第一について
所論は、原判決の言い渡した懲役二年八月の刑は原判決のした法令の適用から導かれる処断刑の下限を下回るものであるから、原判決には理由不備の違法がある、というのである。
 よって判断するに、原判決は、原判示各罪となるべき事実に対する法令の適用として、被告人の原判示第一の所為につき刑法一三〇条前段、罰金等臨時措置法(以下罰臨法という。)三条一項一号、刑法一八一条(一七六条前段)を、同第二の所為につき同法一三〇条前段、罰臨法三条一項一号、刑法一八一条(一七七条前段)を、同第三の所為につき同法一三〇条前段、罰臨法三条一項一号を各適用し、同第一及び同第二の各罪につき、いずれも刑法五四条一項後段、一〇条により牽連犯の処理をしたうえ有期懲役刑を、同第三の罪につき懲役刑を各選択し、以上の各罪につき、同法四五条前段、四七条本文、一〇条、一四条を適用して併合罪の加重(原判示第二の罪の刑に法定の加重)をした刑期の範囲内で、被告人を懲役二年八月に処する旨を判示しているところ、右法令の適用によって導き出される処断刑の下限は懲役三年であるから、原判決は刑を量定するに当り、処断刑の範囲を逸脱して宣告刑を定めた誤りを犯していることが明らかである。そして右の誤りは刑の減軽に関する規定、すなわち、法律上の減軽事由が存しないことの明らかな本件においては、刑の酌量減軽に関する刑法七一条、六八条三号の規定の適用を遺脱したことによると認められ、これは法令の適用に誤りがあり、その誤りが判決に影響を及ぼすことの明らかな場合にあたるというべきである。してみると、その余の論旨につき判断するまでもなく、右の誤りに基づいて原判決の破棄を求める論旨は結局理由がある