投稿者(B他3名)と管理者Aは連絡なく、投稿者が児童ポルノを投稿し、管理者が故意に放置した場合については、同一事実を前提にしても疑律が分かれます。
名古屋方面の実務では、だれが投稿したのかは問わず、管理者が陳列しているという単独正犯(記載例3)として起訴されています。
違法画像は管理者の掲示板やサーバーにおいて閲覧可能な状態になっているという点に着目したものと推察しますが、これだと、起訴状と判決書を見る限りでは、管理者の責任が裁かれたのかがわかりませんから、裁判例として残りません。
東京高裁H16は掲示板設置行為を公然陳列の実行行為としたものですが、名古屋では
無料掲示板「児童ポルノようこそ」
の設置行為は、公然陳列の実行行為とはされていません。
記載例1(幇助)
Aは不特定多数の者がインターネットを利用して、児童ポルノ画像及びわいせつ画像を投稿し、公然と陳列することを知りながら、平成年月日午前時分頃に、××宅において、無料レンタル掲示板を開設している某県が管理する某県所在のサーバコンピュータ内に、無料掲示板「児童ポルノようこそ」を開設し、同掲示板にインターネットを利用して児童ポルノ画像及びわいせつ画像を不特定多数のインターネット利用者に対して閲覧させようと企てた、B他3名が、平成月日から同年月日の間に、前記「児童ポルノようこそ」に対し、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激する児童ポルノ画像かつ女性器を露骨に撮影したわいせつ画像のデータ及び同児童ポルノ画像のデータを送信のうえ記憶蔵置させ、インターネットの接続設定を有する不特定多数のインターネット利用者が、電話回線等を利用し上記データを受信して当該画面を閲覧することが可能な状況を設定し、平成年月日、同年月日に、愛知県C警察署から上記データにアクセスしたDに、わいせつな児童ポルノ画像2画像及び児童ポルノ画像9画像を受信させて同画像のデータを再生閲覧させ、もって、わいせつな児童ポルノ画像及び児童ポルノ画像を公然と陳列することを容易にして、これを幇助した
記載例2(共謀共同正犯)
AはB他3名と共謀の上、同年月日ころから同年月日ころまでの間,ほか3か所において,上記4名が,こもごも,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したものである児童ポルノ画像合計11画像を,上記無料掲示板「児童ポルノようこそ」に送信して記憶・蔵置させ,不特定多数のインターネット利用者に対し,上記画像の閲覧が可能な状況を設定し,同年月日及び同年月日,上記画像情報に接続したDら不特定多数の者に対し,上記情報を送信して再生閲覧させ,もって児童ポルノを公然と陳列したものである。
記載例3(単独正犯)
Aは同年月日ころから同年月日ころまでの間,において,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したものである児童ポルノ画像合計11画像を,上記無料掲示板「児童ポルノようこそ」に送信して記憶・蔵置させ,不特定多数のインターネット利用者に対し,上記画像の閲覧が可能な状況を設定し,同年月日及び同年月日,上記画像情報に接続したDら不特定多数の者に対し,上記情報を送信して再生閲覧させ,もって児童ポルノを公然と陳列したものである。
この記載例3の構成では、違法画像がUPされた瞬間に、管理者についても、公然陳列罪の実行行為が観念できて、違法画像を認識した瞬間に、故意が備わるので、公然陳列罪が既遂になります。
見つけたら即削除しない限り、躊躇してちょっと後で削除しても、公然陳列罪は既遂になります。
まさにプロバイダー必殺の構成です。