訴因は作為でも、結局、違法画像を削除しなかったという不作為の責任が問われているので(作為義務がなければ放置しても違法にならないから、せいぜい設置行為が作為の幇助でしょ)、作為義務の根拠とか、内容とかが問題になるんですよ。
弁護人はそこを指摘して判断を迫る必要があります。そんな作為義務(「条理」しかないでしょうが)なんて誰も聞いたことがない。
サイト管理者の男を起訴 投稿のわいせつ画像放置
2007.06.13 共同通信
インターネットの掲示板サイト「画像ちゃんねる」に投稿されたわいせつ画像を放置して閲覧可能な状態にしたとして、横浜地検は十三日、わいせつ図画公然陳列罪で、サイト運営会社社長で管理者を起訴した。
また、横浜区検は同日、サイトのプログラムを構築した社員の男(50)=静岡県磐田市=を同罪で略式起訴、横浜簡裁は罰金三十万円の略式命令を出した。同地検は、同容疑で逮捕された残る五人について「関与が従属的」などとして起訴猶予処分とした。
起訴状によると、被告らは今年一−二月の間、投稿されたわいせつ画像三点のデータをサーバーに記憶させ、アクセスした不特定多数に閲覧させた。
なお、不作為犯構成の判決がある。ややこしいでしょ。素人にはわからないでしょう。実は裁判所もよくわからないんですよ。
名古屋地裁h18.1.16
(争点に対する判断)
1検察官は,判示第2の所為について,被告人と一覧表2記載の各投稿者(以下「投稿者」という。)との間に,児童ポルノの公然陳列についての共同正犯が成立すると主張した。
2しかしながら,判示第2の事実について取り調べた各証拠によれば,同事実において被告人の行った行為は,上記のとおり,児童ポルノを掲載した電子掲示板を開設していた被告人が,投稿者らがこの掲示板に児童ポルノを送信して記憶蔵置させ,インターネットを通じて不特定の第三者が閲覧可能な状態にあることを知りながら,これを削除等しないまま蔵置を続けたというものである。そして,同証拠によれば,被告人と各投稿者らとの間には,上記の内容の電子掲示板が開設されていることの認識と,これに対して投稿者らが児童ポルノを送信して記憶蔵置させ,これがインターネットを通じて不特定の第三者に閲覧可能であることを相互に認識していたにとどまり,具体的に相手の行為を利用して各投稿者が送信蔵置させた児童ポルノを不特定の第三者に閲覧させることについての意思の連絡があったとは言い難い。3したがって,判示第2の各犯行lこついて,被告人が共同してこれを実行したというためには,被告人の,上記投稿者らがこの掲示板に児童ポルノを送信して記憶蔵置させ,インターネットを通じて不特定の第三者が閲覧可能な状態にあることを知りながら,これを削除等しないまま蔵置を続けたという行為が,これを怠れば自ら積極的に公然陳列したと評価されるほどに,強度の削除すべき義務に違反する行為と言えることが必要と解される。
(1)この点について上記被告人の役割について検討すると,確かに被告人は,上記電子掲示板を開設し,インターネットを通じて不特定の第三者がこれに児童ポルノを送信して記憶蔵置することを可能にしたものであり,これを管理しうる立場にあったのであるから,不特定の第三者にこのような画像が閲覧されることを防止するために,これを削除する等して管理すべき義務があったというべきものである。
(2)そこで,更に進んで,これを怠ったことが,投稿者と共同して児童ポルノを公然陳列したと評価し得るほどに強度の違法性を有するといえるかについて検討を加える。あ上記のとおり,被告人と投稿者らとの間には,具体的画像を不特定の第三者に閲覧させることについての意思の連絡がないことからすれば,投稿者と被告人との間で,相互に相手方の行為を利用して児童ポルノを公然陳列しようとの意思が形成されていたとは言い難い。
そうすると,被告人が,投稿者から上記掲示板に児童ポルノに該当する画像が投稿されたことを認識したのに,これを削除しなかったことをもって,自ら不特定多数の者に対し公然陳列したと同一に評価されるほどに強度の削除義務違反があったと合理的疑いを入れる余地なく認定することはできない。
いしかしながら,上記の被告人の電子掲示板開設に伴う管理義務を考慮すると,判示第2記載の行為は投稿者らの不特定多数の者への公然陳列を封助したものと認めるのが相当である。
横浜地裁h15.12.15
(犯罪事実)被告人は,平成12年ころから,東京都所在g株式会社が管理するサーバーコンピュータの記憶装置であるディスクアレイに「p掲示板」と称するインターネット上のホームページを開設し,××番地又はその周辺等において管理運営するものであるが,インターネットに接続したコンピュータを有する不特定多数の者が衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像を送信するかもしれないことを認識しながら,あえて,平成13年1月20日ころから平成14年10月29日ころまでコンピュータのディスクアレイに,別紙一覧表記載のとおり,前後22回にわたり,インターネットに接続したコンピュータを有する不特定多数の者が送信した衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像合計22画像分を記憶・蔵置させたままこれらを削除せず,もって,上記児童ポルノをインターネットに接続したコンピュータを有する不特定多数の者に閲覧可能な状況を設定し,上記日時ころ,上記児童ポルノ画像データにアクセスしたAほか不特定多数の者に対し,上記画像データを送信して再生閲覧させ,児童ポルノを公然と陳列した。
(弁護人の主張に対する判断)
児童ポルノ公然陳列罪において不作為の態様による犯罪の成立を否定すべき理由はなく,前掲各証拠によれば,被告人は本件ホームページの開設・管理者としてアップロードされた児童ポルノ画像を削除する作為義務も作為可能性もあったことは明らかであり,にもかかわらずこれを削除しなかった被告人の刑責はアップロード者の刑責とは別に追及されるべきものであると考えられるから,アップロード者の刑責で児童ポルノ画像が公然陳列されたことによる法益侵害が評価し尽くされるとはいえないし,被告人が事後従犯になるものでもない。以上のとおりであるから,弁護人の主張はいずれも理由がない。