児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

3項製造罪「姿態をとらせ」を記載しない訴因はセーフ、判決はアウト(東京高裁H17.12.26)

 起訴状丸写しの判決書で明暗分かれた。
 一般に、検察官は
   起訴状の訴因=判決の罪となるべき事実だ
   証拠もありますよ。
といって起訴して立証しているわけでしょ。
 その訴因にも犯罪事実にも特定の構成要件事実が欠けていたら、共倒れになるはずですよ。
 裁判所には厳しいけど、検察官には甘いんじゃないか?
 とにかく、条文通りに書いておけば問題がないわけで、関係各位はご注意ください。

東京高裁H17.12.26
3訴因が不特定であるとして訴訟手続の法令違反をいう論旨(控訴理由第9)及び罪となるべき事実が法7条3項の製造罪の構成要件をみたさないとして法令適用の誤り,訴訟手続の法令違反をいう論旨について(控訴理由第10)
その論旨は,要するに,起訴状の公訴事実には「姿態をとらせ」と記載されていないのであって,本件公訴は訴因不特定の違法があるにもかかわらず,公訴を棄却することなく実体判断をした原半り決には訴訟手続の法令違反があるというのである。確かに,起訴状の公訴事実には,「(被害児童)を相手方とする性交に係る同児童の姿態等を撮影し」と記載するにとどまり,「姿態をとらせ」と明記されていないことは所論指摘のとおりである。しかしながら,起訴状の公訴事実は,別紙一覧表によって,被害児童の姿態の内容を明記して特定している上,罰条として,法7条3項,1項及び法2条3項各号を明示して特定しているのであるから,訴因が不特定であるとまではいえない。また,公訴事実のかかる記載の不備は,被告人の防御に実質的な不利益を与えなかったものと認められるから,その不備を是正させなかった裁判所の手続上の瑕疵が直ちに判決に影響を及ぼすものとまでは認められない。この点の所論は採用できない。
 さらに,所論は,原判決が認定した「犯罪事実」には,「姿態をとらせ」と記載されておらず,犯罪を構成しないにもかかわらず有罪とした原判決には法令適用の誤り,訴訟手続の法令違反があるというのである。
 そこで原判決の説示内容を検討するに,原判駄が,その「犯罪事実」の頓において,「被告人は,別紙一覧表記載のとおり,・・・,携帯電話機附属のカメラを使用して,児童である・・を相手方とする性交に係る同児童の姿態等を撮影し,その姿態を視覚により認識することができる電磁的記録媒体であるフラッシュメモリ1個に描写し,もって,同児童に係る児童ポルノを製造した。」と認定し,その別紙一覧表において,児童ポルノの種類として法2条3項各号に該当する姿態の内容を明記し,「法令適用」の項においては,別紙一覧表の各行為について,法7条3項,1項及び2条3項各号を適用していることからすれば,原判決の判断は,被告人の各行為について法7条3項の児童ポルノ製造罪が成立するものと認定する趣旨ないし意図であることは明らかである。
 しかしながら,法7条3項は,「児童に第2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ,これを写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより,当該児童に係る児童ポルノを製造した者」とし,「児童に姿態をとらせ」という行為をその犯罪構成要件として規定していることは明らかである。児童に姿態をとらせる行為が他の不可罰的な行為とを画する重要な行為要素であることなどにかんがみれば,原判決には罪となるべき事実の記載に理由の不備があるというほかはない。訴因の記載上の不備と異なり,判決のこのような理由上の不備を見過ごすことはできない。したがって,その余の控訴趣意に対して判断をするまでもなく,原判決はこの点において破棄を免れない。

 なお、従来の判例は・・・

名古屋高裁金沢支部平成17年6月9日
第1 控訴趣意中,訴訟手続の法令違反等の論旨について(控訴理由第7,第11 ないし第13,第15,第17)
1 所論は,・・・②公訴事実には,ミニディスク,メモリースティック,ハード ディスクの作成につき,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の 保護等に関する法律(以下,単に「法」という。)7条3項に規定する児童ポ ルノ製造罪の構成要件である「姿態をとらせ」に該当する事実が記載されてい ない,のに,公訴を棄却せず,実体判決をした原判決には訴訟手続の法令違反があるというのである。

2 しかしながら,・・・所論②については,確かに, 公訴事実には,「姿態をとらせ」に当たる事実の記載がなく,それを明確に記 載するのが望ましいとはいえるものの,平成16年10月20日付け起訴状で は,第1で被害児童と性交するなどして児童買春をした旨の記載があり,それ に引き続き第2の事実が記載されており,第2の罰条について法7条3項が挙 げられていることからすると,被告人の言動等によって,当該児童が性交に伴 う「姿態」等をとったことは,上記起訴状記載の公訴事実の記載から理解する ことができる。したがって, 「姿態をとらせ」の文言が記載されず,それに該当する事実が明示されていなくても,訴因が特定されていないとはいえず,これをそのまま認定した原判決に違法な点があるとまではいえない。

見た人にしかわかりませんが、「コピーして貼ったような」同じ控訴理由で、判断が異なりました。