被害児童1名に、数回撮影して、1個の媒体に追加記録した場合の罪数について、東京高裁H17.12.26の自判部分は、媒体が1個なら1罪としています。
同じ裁判体は東京高裁H15.6.4では、撮影行為ごとに1罪としていました。
弁護人は何度でも法廷に来ますが、被告人は1回きりしか裁判を受けられないので、どっちかに統一してもらわないと不公平感が残ります。
奥村説としては、包括評価に反対ですから、この場合も行為ごと、媒体ごとに細かく切って製造罪を認定して、後は法定の罪数処理でいいと思います。その方が処断刑期が広くなって、適正な量刑が可能になって、最近の最高裁の傾向に合うでしょう。
東京高裁H17.12.26
破棄自判
(罪となるべき事実)
被告人は,別紙一覧表記載のとおり日から平成月日までの間,前後6回にわたり,方において,携帯電話機に装着されたカメラを使用し,児童をして同表「児童ポルノの種類」欄記載の各姿態をとらせた上,これを撮影して,それら姿態を視覚により認識することができる電磁的記録媒体であるフラッシュメモリ1個に描写し,もって,同児童に係る児童ポルノを製造したものである。
(法令の適用)
被告人の判示別紙一覧表番号1ないし6の各所為は,包括して児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項,1項,2条3項1号ないし3号に該当するので,所定刑中懲役刑を選択し・・・
東京高裁H15.6.4
④原判決は,児童ポルノ製造罪について撮影行為を基準に1回1罪としているが,弁護人の主張に対する判断では媒体を基準にして罪数を判断すべきであると判示しており,理由齟齬であり,また,MOに関しては1個しか製造していないから,撮影行為が何回に及んでも1個の製造罪であり,ビデオテープは12本製造されているから12罪であって,法令解釈の誤りがある・・・などと主張する。
しかしながら・・・④については,一個の機会に撮影して製造した物は一罪と解するべきであるが,本件のMOについては,全く別の機会に製作されたファイルが追加記録されているのであるから,媒体は同一でも追加記録は別罪を構成するものというべきである。原判決の「弁藩人の主張に対する判断」の1は,画像データが同一でも別の媒体に複写すれば製造に当たる旨を説示したにすぎず,媒体が同一であれば一罪になる旨判示したものではなく,所論は原判決を正解しないものといわざるを得ない。