わいせつ画像のweb掲載については、公然陳列罪だという判例があるものですから、改正後も「公然陳列罪構成」が続くものと思われます。
同じくデータは受信者に行っちゃってるのに、web掲載の場合は公然陳列罪、メール送信の場合は頒布罪。
改正によって、一朝一夕に電磁的記録の頒布罪という構成に変更されるとは思いません。有体物神話も根強いのでしばらく混乱期が続くと思います。
大谷先生は御安心されていますが、奥村弁護士は安心していません。
学者先生は気楽だと思います。擬律が混乱してても警察は取り締まらなあかんし、逮捕勾留される人もでてくるわけですよ。
折角、ネット上のわいせつ情報への適用法条を整理する機会だったんですけどね。
大谷実「最近の刑事立法について」同志社法学307号(57巻2号)P290
まず、刑法の改正としましては、電子計算機を使用する目的で不正なデータを作る行為(いわゆるコンピュータウイルス)、これを処罰する「不正指令電磁的記録作成罪」を新設することにしました。また、しばしば判例で話題となった 「わいせつ画像」 の処罰を明確にするために、画像それ自体をわいせつ物頒布罪の客体とするように刑法一七五条の構成要件を拡張する改正を図っています。こうすれば、画像自体をわいせつ物であるというように無理な解釈をしなくても済むわけです。
一方、コンピュータに関連する手続法の整備も、日本は大変遅れていますので、その点の改正も検討されました。特に、コンピュータのデータが証拠として必要な場合、現行法では電磁的記録の媒体でありますコンピュータそのものを差押さえなければならないのですが、それに代えて、データを複写してデータだけを差し押さえることができるような改正案を国会に提出いたしており、刑法および刑事訴訟法の一部を改正する法律として、次の通常国会で可決・成立するものと思います。