名古屋地裁h16.1.22はMLの場合をわいせつ物・児童ポルノ公然陳列罪としました。
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20041007/p4
名古屋地裁h16.1.22児童ポルノML送信を公然陳列罪とした事例
一方で,本件は,判示のとおり,被告人が前記画像データを電子メールの添付ファイルとして判示のサーバーコンピュータに送信し,その記憶装置内に記憶,蔵置させた上,共犯者がメーリングリスト機能を利用して判示メーリングリストサービスに登録されているグループのメンバーのメールサーバーに配信した事案ではあるが,前掲証拠によれば,前記グループは,その入会アドレスに自己のアドレス等を送信すれば自動的に入会でき,メンバーが投稿した画像データについて,同グループの管理者が承認すると,同グループの不特定多数のメンバーに自動的に配信されるシステムになっていると認められることからすると,前記配信行為は,判示のサーバーコンピュータの記憶装置に記憶,蔵置された本件画像データについて不特定多数の者に閲覧可能な状態を作出した行為といえる。
サーバー上に違法情報があって、それを送信する行為を公然陳列とする理屈は
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20050827/1125109505
に書きました。
判例の理屈は、電気通信回線を、あたかも「のぞきめがね」と見なして、クライアントPCからサーバーPC(有体物)を見ていると理解しろということです。
本当は、クライアントに送られてきたデータを見ているのですが、お約束でこう解釈するのだと。
確かに、サーバー上の違法画像は誰が見に行ってもそこにあるわけです。うまく考えたものです。有体物であるわいせつサーバーをみんなで見ているといえないでもない。
ではメールの場合はどうなのか?
簡略化すると、
送信者PC
↓
送信メールサーバー
↓
受信メールサーバー
↓
受信者のPC
というルートで伝送される。
この場合、陳列罪の実行行為は、早めに考えても、送信メールサーバーから受信メールサーバーへの送信完了時点で完了していると思います。
ところで、受信者PCでメールを受信した(閲覧前)時点で、違法情報はどこにあるのかというと、受信者PCにあることは確かですが、
それ以外の
送信者PC
送信メールサーバー
受信メールサーバー
には、必ずしも存在しないですよね。メーラーの設定による。基本的にメールはバケツリレーです。
とすると、受信者が違法情報を読んだ時点で、どこにある情報を見ているのかというと、受信者PCの情報、つまり、自分のPCを見ているとしか考えられないですね。
これを「のぞきめがね」でサーバー(送信サーバーOR 受信サーバー)を見ているという判例の考え方で救えるでしょうか?もはやサーバーに存在しないデータは「のぞきめがね」理論でも見えないものは見えないというしかないですよね。
結局、web掲載を有体物であるサーバーの公然陳列罪とした判例理論もここまでは及ばない。
判例の「のぞきめがね」理論はここで破綻するわけです。メール送信を網羅できない。
この際、メールにしてもwebにしても、やっぱり受信者PCのデータを見ているのだということを素直に評価すべきじゃないかと思います。