児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

全裸写真をメールで販売 岐阜県の23歳女を逮捕

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050810-00000133-kyodo-soci
 前から愛知県における法令解釈に疑問を持っています。東京・大阪に挟まれていて、東京・大阪と違う。

 大丈夫か?愛知県警。
 気づくか?愛知県の弁護士、地裁半田支部(半田簡裁)。

 刑法改正を先取りするつもりでも、罪刑法定主義(遡及処罰の禁止)というのがあるからなぁ。
  ↓↓

http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htm
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000416220050712026.htm
第26号 平成17年7月12日(火曜日)
○大林政府参考人 三点について御質問がありました。
 まず、わいせつ物頒布等の罪を今回改正する理由について申し上げますと、最近、電子メールによりわいせつな画像の電磁的記録を送信するような行為が見られますけれども、こうした行為は、わいせつ物の頒布行為と実質的には同様の行為であるにもかかわらず、ビデオテープのような有体物のやりとりを伴わないため、現行法による的確な対応に疑義が生ずるに至っております。
 そこで、今回の改正では、こうした有体物のやりとりを伴わないインターネット上でのわいせつな画像の電磁的記録の頒布等についても処罰できることを明確に規定するなどの改正を行うものとしたものでございます。
 次に、このようなもので、その頒布にかわり公衆送信の用語を用いるべきではないか、こういう御意見がございます。
 わいせつな電磁的記録送信頒布罪における頒布は、有体物の頒布に準じて解釈することができ、その意義は明確であると考えております。その罪の成立には、不特定多数の者の記録媒体にわいせつな電磁的記録を存在するに至らしめることが必要でございます。
 これに対し、公衆送信は、具体的な定義規定を置かなければその意味が不明確である上、仮に、「公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うこと」、これは著作権法二条一項七号の二に規定されているわけでございますが、わいせつな電磁的記録を公衆送信したというような構成要件にいたしますと、相手方における記録の存在はもちろん、相手方の受信を要せず、送信の段階で犯罪の成立を認めることになりますので、そのような規定ぶりは適当ではないというふうに考えておりますし、また、公衆送信という規定ぶりでは、公衆とは言えない多数人に送信するような行為が含まれるというような問題もございますので、いかがかというふうに考えております。

かろうじて公然陳列罪?これも、同一の有体物を不特定多数が見る場合じゃないと難しいよ。

 なお、児童ポルノの場合は1対1のメール送信でも提供罪。
 これだけ厳しい特別法の児童ポルノ法でさえ、有体物から離れられないのに、刑法がいきなりデータを処罰するなよということなんですが、ご理解いただけますでしょうか?

参考
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20050405/1112667306
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20041007/p4
名古屋地裁h16.1.22児童ポルノML送信を公然陳列罪とした事例
(メール送信行為が、簡裁では頒布罪、地裁では陳列罪となった。別の地方では不起訴事例もある。)

http://courtdomino2.courts.go.jp/Kshanrei.nsf/webview/27642C03FB01140B49256E6700180854/?OpenDocument
所論は,原判示第2の事実について,饒有体物に化体しない画像データそのものは児童買春児童ポルノ禁止法2条所定の児童ポルノに該当せず(控訴理由第1),また,饌有償の譲渡行為といえるためには現実の交付を伴うことが必要であるところ,本件ではこれがない(控訴理由第2)にもかかわらず,それぞれ児童ポルノである画像データを販売したと認定した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というものである。
そこで,検討するに,原判示第2の事実は,被告人が,各購入者に対して,自己がサーバーコンピューター上に開設したホームページのアドレス及びパスワードをメールで送信し,B及びCに対してはそれぞれの自宅に設置されたパーソナルコンピューター内のハードディスクにダウンロードさせる方法で(原判示第2の1及び2の各事実),Dに対してはその自宅に設置されたパーソナルコンピューター内のフロッピーディスクにダウンロードさせる方法で(同3の事実),児童ポルノである画像データを販売した事実を認定していることが明らかである。ところで,【要旨】児童買春児童ポルノ禁止法2条3項は,「『児童ポルノ』とは,写真,ビデオテープその他の物であって,次の各号のいずれかに該当するものをいう。」と規定しており,「その他の物」については,その例示として掲げられている物が写真,ビデオテープであることからすれば,文理解釈上,これらと同様に同条項各号に掲げられた視覚により認識することができる方法により描写した情報が化体された有体物をいうものと解すべきであるところ,関係各証拠によれば,本件において児童ポルノに該当するとされている画像データは,被告人において,契約を結んだ東京都千代田区a町b丁目c番地d所在の株式会社E管理のサーバーコンピューターにホームページを開設し,同コンピューターの記憶装置であるディスクアレイ内に記憶,蔵置させた電磁的記録であり,このような電磁的記録そのものは有体物に当たらないことは明らかである。そして,児童買春児童ポルノ禁止法7条の児童ポルノ販売,頒布罪における販売ないしは頒布は,不特定又は多数の人に対する有償の所有権の移転を伴う譲渡行為ないしそれ以外の方法による交付行為をいうものであるところ,本件において,上記B,C及びDは,それぞれ,被告人から教示されたホームページアドレス等を自己のパーソナルコンピューターにおいて入力することにより,被告人が開設した上記会社管理のサーバーコンピューター内のホームページにアクセスし,同サーバーコンピューターのディスクアレイに記憶,蔵置された本件の画像データをそれぞれ自己のパーソナルコンピューターにダウンロードし,ハードディスクないしはフロッピーディスクにその画像データを記憶,蔵置させて画像データを入手していることが認められるが,上記サーバーコンピューターのディスクアレイ上に記憶,蔵置された画像データそのものは上記Bらのダウンロードによってもその電磁的記録としては何らの変化は生じていないのであり,画像データの入手者であるBらに上記サーバーコンピューターに記憶,蔵置された電磁的記録そのものの占有支配が移転したと見る余地もなく,この点で原判示第2に認定された事実のもとでは児童ポルノの販売に該当する事実もないというべきである。
そうすると,原判決には児童買春児童ポルノ禁止法7条所定の児童ポルノ販売罪に該当しない事実を同罪に該当するとして有罪とした法令の解釈適用の誤りがあり,この誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかである。
論旨は理由がある。

 なお、大阪高裁h15.9.18では、検察官はいろいろ下級審裁判例横浜地裁川崎支部平成12年7月6日判決 同部同年11月24日判決)を紹介して反論して、データのわいせつ図画性・児童ポルノ性を主張されましたが、排斥されています。
 さらに大阪高裁h15.9.18の上告審(最決H16.1.21)では弁護人から「やっぱり高検の検事さんがいうようにデータが児童ポルノじゃないですか?」という上告理由が主張され、排斥されています。
 そこで、改正時に児童ポルノの有体物性を維持しつつ、メール送信を処罰する規定を作りました。
 今回の刑法改正案でも「わいせつ図画・物」の有体物性を維持しつつ、メール送信を処罰する規定が提案されています。