名古屋の女の処分が伝わってきませんが、名古屋地裁h16.1.22は、よく読むと、わいせつ図画頒布・販売罪は成立しないと言ってますよね。未公開裁判例。
これが警察にフィードバックされていれば、逮捕されなかったでしょうね。公判に持ち込めば販売・頒布は成立しない。
また、弁護人に伝わっていれば、早期に勾留取消も可能ではないか。余罪はわからないけど。
なお、名古屋地裁h16.1.22が公然陳列罪を肯定したことは判例違反だと思います。「不特定多数が同一の有体物を見た」と言えないと陳列じゃないんですが、MLだと、受信者が画像を見た時点では送信メールサーバーにはデータが(必ずしも)残っていないですから。
この事件では児童ポルノ法の大阪高裁H15.9.18が刑法175条の解釈にも端的に影響を与えています。どうしてわかるかというと、奥村弁護士が名古屋の弁護人に大阪高裁H15.9.18を提供したからです。
刑法学者は大阪高裁H15.9.18は特別法の判例と見ているようですが、実は刑法判例です。
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20041007/p4
名古屋地裁h16.1.22児童ポルノML送信を公然陳列罪とした事例
(犯罪事実)
被告人は,
第2 Y株式会社がインターネット上で提供しているメーリングリストサービスに登録されているグループのメンバーであるが,同グループの管理者で,同グループのメールアドレスに送信された電子メールの配信を承認する権限を有するBと共謀の上,メーリングリスト機能を利用して児童ポルノ等を同グループの不特定多数のメンバーに閲覧させようと企て,平成15年5月8日午前6時57分ころ,被告人方において,パーソナルコンピュータを使用し,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び被告人の性器をあわせて撮影した画像データ1画像を,ビル内に設置された前記Y株式会社が管理するサーバーコンピュータに電子メールの添付ファイルとして送信し,その記憶装置内に記憶,蔵置させた上,同月9日午前零時3分ころ,前訂Bが,ウェブ上で同メールを閲覧してその配信を承認し,よって,同画像データをCら不特定多数の者の受信用メールサ−バーに配信して,同画像を同人らのパーソナルコンピュータで再生閲覧可能な状態を作出し,もって児童ポルノかつわいせつ物を公然と陳列したものである。なお,判示第2の事実について,検察官は,別紙起訴状記載のとおりの児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下児童買春児童ポルノ禁止法という。)違反(児童ポルノ頒布)及びわいせつ図画頒布の訴因を主位的訴因として掲げているところ,弁護人は,本件において,当該画像データの各頒布罪が成立するとするには法律解釈上疑義があり,当該画像データを記憶,蔵置させたMOディスク又はハードディスク等の記憶装置について児童ポルノ及びわいせつ物の公然陳列罪が成立すると解するべきである旨主張する。この点について検討するに,児童買春児童ポルノ禁止法が頒布の目的物となる児童ポルノとして例示している物がいずれも有体物と解されることからすると,本件画像データは,被告人が判示のサーバーコンピュータの記憶装置内に記憶,蔵置させた電磁的記録であって有体物ではなく,判示画像データ自体が児童ポルノに直接該当すると判断するには疑義があり,同様に,同データ自体が刑法上のわいせつ図画ないしわいせつ物に直接該当するというのにも疑義がある。また,児童ポルノ及びわいせつ図画の各頒布罪にいう頒布行為は,不特定又は多数の者に対する販売以外の方法による交付行為をいうものであるところ,共犯者による同画像データの配信行為については各画像データ自体の占有支配が前記Cらに移転するものではないことから,前記配信行為が頒布に該当するという点についても疑義があるというべきである。
この事件、結局、検察官も弁護人も裁判所もだれも擬律がわからないまま陳列罪で有罪にしてしまった感じです。
これも被告人は教員でしたよね。
懲戒されてるんでしょ。
感心はしないけど、結論的には公然陳列罪も成立しないというべきであって、気の毒でした。国選弁護事件。
擬律の問題だから、控訴してくれればいいんですけど、検挙前にはこれだけ大胆なことをやっていながら、検挙されると、全く文句いわないんだよな。先生は。退職金とか教員免状とかかかってる重大問題なんだから、もう少し粘って欲しいところです。
なお、実際、同じことをした教員が、逮捕の報道に驚いて、奥村弁護士を選任した上で、別の県警に自首した事案では、
被疑者「罪を犯しました」
弁護人「被疑者が認めた事実関係では犯罪不成立と考えるが、
逮捕事例もあり、
被疑者は逮捕が怖いので自首するというので、それも理解できる。
慎重に捜査してください」
という微妙な対応をして、身柄不拘束の捜査が続いて、結局「不起訴(罪にならず)」でした。懲戒処分もなし。
追記050829
ここで吠えてたら影響あったらしいですよ。名古屋の事件。
大阪高裁H15.9.18と名古屋地裁h16.1.22が今ごろ常滑に到達。で、どうするんだ?