児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

1ヶ月以上後の焼き増しも製造罪一罪とした事例(千葉地裁)

 

千葉地裁
8/23 被告人は販売目的をもって児童らの姿態を写真撮影した上、
写真店において情を知らない店員にフィルムを現像させ、
8/27ころ、現像フィルムから情を知らない店員をして3号児童ポルノ写真 枚を焼き付けさせて、
10/9ころ、現像フィルムから情を知らない店員をして3号児童ポルノ写真 枚を焼き付けさせて、
もって児童ポルノを製造した

この被告人は売るために撮影して、売るために焼き増ししているのだから、8/27の売り先と10/9の売り先は違うはずですよね。それでも1罪になっています。

 銀塩カメラの事例は少なくなりましたが、未現像フィルム状態で既遂。現像も製造罪、焼き付けも製造罪。

 なお、大阪高裁h14.9.10も「有体物を記録媒体とするものであれば」って判示していて、これが大阪高裁H15.9.18のテコになっています。

阪高裁 平成14年9月10日
③ 上記撮影及び現像行為については,本件の場合には,リバーサルフィルムでなくネガフィルムが使用されていたため,撮影後フイルムが未現像の段階は勿論,フイルムが現像された後の段階でも,視覚により認識が可能とはいえず,焼付けがなされ,写真となって初めて認識可能になるから,未だ児童ポルノ製造罪は成立しないのに有罪の認定をした点において(控訴理由第2,第6),また,児童ポルノの撮影によりその製造罪が成立するとすれば,その後の現像までの行為は不可罰的事後行為と解されるのに,現像行為を含めて児童ポルノ製造罪にあたるとして有罪の認定をした点において(控訴理由第3),原判決は児童ポルノ法7条2項の解釈,適用を誤ったものであり,以上①ないし③は判決に影響を及ぼすことが明らかである,というのである。
しかしながら ③については,児童ポルノとは,「写真,ビデオテープその他の物」であって「視覚により認識することができる方法により描写したもの」であることを要するが,有体物を記録媒体とする物であれば,必ずしもその物から直接児童の姿態を視覚により認識できる必要はなく,一定の操作等を経ることで視覚により認識できれば足りるから,写真の場合は現像ないし焼付け等の工程を経てこれが可能になる未現像フイルムや現像済みネガフィルム(以下,撮影済み及び現像済みネガフィルムを「ネガ」という。)は,これに当たると解するべきであるから,本件の場合,児童ポルノ製造罪は撮影により既遂になると解するのが相当である。また,上記第1記載の児童ポルノの頒布,販売目的等による製造等を処罰することにした趣旨からみて,新たに児童ポルノを作り出すものと評価できる行為はいずれも製造に当たると解するのが相当であるところ,これを写真についてみてみると,上記のとおり児童ポルノ製造罪は撮影によって既遂となるが,現像,焼付けもまたそれぞれ製造に当たるものと解され,各段階で頒布,販売等の目的でこれを行った者には児童ポルノ製造罪の適用があり,ただ,先の行為を行った者が犯意を継続して彼の行為を行った場合には包括一罪となるものと解される。従って,本件では現像行為は不可罰的事後行為とはならないから,現像行為を製造とした原判決には法令適用の誤りはない(もっとも,原判決は撮影,現像を単純一罪とするものか包括一罪とするものか定かではないが,単純一罪とするものであるとしても判決に影響しない。)。