児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

盗撮はOKで、承諾撮影はNGなのか?

 改正で7条3項の製造罪というのができて、検挙起訴事例も出ているわけですが

児童ポルノ提供等)
第七条 
2 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
3 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。

 この製造罪については、島戸検事の解説しかない。
 要するに、何か、ポーズを取らせて撮影すること。

島戸純「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律」現代刑事法'04.10
「姿態をとらせ」とは、行為者の言動等により、当該児童が当該姿態をとるに至ったことをいい、強制によることは要しない。描写される児童が当該製造について同意していたとしても同様である(8〉。
(8) もっとも、児童と真筆な交際をしている者が、児童の承諾のもとでその裸体の写真を撮影する等、児童の承諾があり、かつこの承諾が社会的にみて相当であると認められる場合には、違法性が阻却され、犯罪が成立しない場合もあり得る。


島戸「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集57-08
「姿態をとらせ」
「姿態をとらせ」とは、行為者の言動等により、当該児童が当該姿態をとるに至ったことをいい、強制によることは要しない。
いわゆる盗撮については、本項の罪に当たらない(22)。一般的にそれ自体が軽犯罪法に触れるほか、盗撮した写真、ビデオ等を配布すれば名誉毀損の罪も成立し得るし、他人に提供する目的で児童ポルノを製造すれば、第7条第2項、第5項により処罰されることとなる。
22)盗撮された児童は、盗撮の事実に気付かず何ら特別の性的行為を強いられ・あるいは促されるわけではないから、直ちに性的虐待を受けたものとはいえないし、提供目的を欠く場合、盗撮の結果が児童の心身に悪影響を及ばす危険が具体化しているともいえないから、盗撮を手段とした単純製造の行為を直ちに児童ポルノに係る罪として処罰する必要はない。他人に提供する目的がある場合は、第7条第2項又は第5項の罪が成立する。
23)もっとも、例外的に、児童が他者に対して執拗、積極的に自身の児童ポルノを作成させるよう働きかけたような場合に、製造罪の共犯が成立することは理論上考えられる。

 他方、捜査研究2004年12月号の大橋検事は、児童買春に伴う盗撮事例を指摘しており、改正法によれば処罰対象となったとも読めるのだが、島戸検事によれば、盗撮の場合は単純製造罪は成立しない。

ハイテク犯罪の捜査 捜査研究2004.12.
近時の携帯写メールや安価なデジタル・カメラ(ビデオ)の普及により,最近は,一般サラリーマンはおろか,高校生ですら.容易に児童ポルノを製造(盗撮)できるようになり,デジタル児童ポルノ製造の容易化・一般化・低年齢化の傾向化が現れてきている。素人による児竜ポルノの製造は.いわゆる「ハメ撮り」の形態が多く.児童買春の機会になされることが多い。

 こういうところは、弁護人に付け込まれるし、裁判所の判断も微妙。どうして盗撮ものはOKなのか?どうせ児童ポルノを撮影するなら、「盗撮」だというのでしょうか?

 児童ポルノ罪の保護法益は、基本的に個人的法益ですが、被害者が承諾しても犯罪阻却しないが、被害者が承諾していない場合は犯罪不成立だという。
 取締の必要性から単純製造罪での処罰範囲を拡げようとすると、被害者の承諾・協力を強調することになって、処罰根拠が薄まります。
 なんなんだこの改正法は?