児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

海事補佐人奥村徹の初仕事

 訴訟とは手続が違うのでブゥブゥ文句言いながら主張・立証しましたが、因果関係の切断に成功しまして、
    受審人の所為は,本件発生の原因とならない。
ということです。
 扶助なので、受審人に負担無し。補佐人の日当・交通費は自弁。
 漁師なので、業務停止は死活問題でしょ。

平成16年神審第57号
裁決
漁船z丸プレジャーボートk丸衝突事件
受審人
職名z丸船長
補佐人奥村徹
本件について,当海難審判庁は,海難審判庁理事官a出席のうえ審理し,次のとおり裁決する。
主文
本件衝突は,灯火設備を有しないk丸が,無灯火で漂泊したことによって発生したものである。
理由
(海難の事実)
4事実の経過
z丸は,受審人が1人で乗り組み,さわら網漁の目的で,船首0.2メートル船尾1.0メートルの喫水をもって,法定灯火を表示し,平成15年9月7日04時45分徳島県徳島○○港w地区の定係地を発し,レーダーの電源を入れたのち休止とし,同港北東方沖合3.5海里の漁場に向かった。
04時51分わずか過ぎ受審人は,○○飛行場灯台(以下「飛行場灯台」という。)から287度(裏方位,以下同じ。)480メートルの地点で,針路を024度に定め,夜明け前でまだ暗く,右舷前方に約10隻のたちうお釣りの釣船の灯火を認めたので,機関を半速力前進にかけ,16.0ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で,レーダーを休止としたまま,舵輪の後方に立って手動換舵により進行した。
04時51分半わずか過ぎ受審人は,飛行場灯台から315度540メートルの地点に達し,針路を043度に転じたところ,正船首方200メートルのところにk丸が漂泊しており,同船と衝突のおそれがある態勢で接近する状況となったが,k丸が無灯火のため,同船を視認することができず,同船に向けて続航した。
その後,受審人は,漂泊するk丸に向首していることに気付かず,衝突を避けるための措置をとることができないまま進行中,04時52分飛行場灯台から336度570メートルの地点において,同針路,原速力のまま,z丸の右舷船首部が,k丸の右舷後部に前方から40度の角度で衝突した。
当時,天候は晴で風力1の北西風が吹き,視界は良好で,潮侯は下げ潮の初期で,日出は05時39分であった。
両船が離れたのち,受審人は,頭を左舷側に向けて横たわるk丸船長と言葉を交わして無事を確認したものの,k丸が,次第に陸岸方向に流されたので,来援した喫水の浅い僚船に救助を依頼し,救急車の手配や海上保安部への連絡にあたった。
また,k丸は,y船長が1人で乗り組み,たちうお釣りの目的で,船首0.15メートル船尾0.20メートルの喫水をもって,同日04時30分徳島○○港横須地区の船着場を発し,法定灯火を表示しないで,徳島○○港○○区の洲端西岸沖合150メートルの釣場に向かった。
y船長は,長年小型底引き網漁に従事していたが,3年ほど前に漁を止め,以後趣味としての釣りに,k丸をときどき使用していたが,同船には,竣工時から法定の灯火設備がなく,日没から日出までの間の航行が禁止されていることを知っていた。
04時45分y船長は,前示衝突地点に達し,船首を183度に向け,機関を中立として漂泊を開始した。
その後y船長は,機関室後部の船尾右舷側に立ち,釣糸を海中に入れて調整していたところ,04時51分半わずか過ぎ右舷船首40度200メートルのところに,z丸のマスト灯と両舷灯を視認でき,同船が衝突のおそれがある態勢で接近する状況となったが,漂泊を続けた。
こうして,k丸は183度に向首したまま前示のとおり衝突した。
衝突の結果,z丸は,右舷船底のビルジキールに破損及び船首部船底から右舷側船尾部船底にかけて擦過傷を,k丸は,右舷船尾部ブルワーク及び外板に破口を,主機換縦レバーに折損をそれぞれ生じた。また,y船長(昭和6年3月10日生,一級小型船舶換縦士免状受有)は,多発骨折による出血性ショックで死亡した。
(証拠の標目)
1海難審判庁理事官の受審人及びy船長の妻に対する,並びに理事官の受審人,丸船長及び丸船長に対する各質問調書
2z丸の一般配置図写
3k丸の船舶検査証書及び船舶検査手帳抜粋各写
4理事官の照会に対する受審人の衝突後の両船の態勢等についての,丸船長の周囲の他船等についての及び○○市消防本部の救急出動要請を受けた時刻についての各回答書
5理事官作成のz丸の船体についての,k丸の船体についての及び本件発生地点の水路状況についての各検査調書
6医師s作成のy船長に対する死亡診断書及び死亡届各写
7奥村補佐人提出の同人作成の衝突地点付近の写真撮影報告書及び平成15年天測暦抜粋写
8徳島地方気象台の気象資料
9当廷における受審人の供述
(事実認定の根拠)
1z丸の運航模様については,受審人に対する質問調書中,
「9月7日04時45分法定灯火を表示し,徳島○○港w地区の定係地を発し,同港北東方沖合3.5海里の漁場に向かった。レーダーを休止し,立って手動操舵により進行した。」旨の供述記載により,これを認める。
2受審人の見張り模様については,同人に対する質問調書中,「衝突地点の陸岸寄りに約10隻のたちうお釣りの船がいるのを認めた。白灯及び両色灯が見えた。」旨の供述記載により,これを認める。
3定針時刻については,受審人に対する質問調書中,「04時51分わずか過ぎに定針した。」旨の供述記載により,これを認める。
4定針地点及び定めた針路については,受審人に対する質問調書中,「飛行場灯台から287度480メートルの地点で,針路を024度に定めた。」旨の供述記載に同調書添付の航跡図を照合し,これを認める。
5速力については,受審人に対する質問調書中,「定針した頃は,夜明け前でまだ暗かったので,機関を半速力前進にかけ,16.0ノットの速力で進行した。」旨の供述記載及び定針,衝突両地点間の航程と経過時間によって求め,16.0ノットと認める。
6衝突時刻については,受審人に対する質問調書中,「04時52分に衝突した。」旨の供述記載により,これを認める。
7衝突地点については,受審人に対する質問調書中,「飛行場灯台から336度570メートルの地点で衝突した。」旨の供述記載に同調書添付の航跡図を照合し,これを認める。
8z丸の衝突時の船首方向については,受審人に対する質問調書中,「043度に転針したのち,そのまま衝突した。」旨の供述記載により,043度と認める。
9衝突角度については,z丸の衝突時の船首方向及びk丸の損傷模様により,40度と認める。
10k丸の運航模様については,yの妻に対する質問軍書中,「9月6日夜,主人は明朝04時20分頃に釣りに出かけると言っていた。k丸の船着場まで5分もあれば十分行ける。」旨の供述記載及びs船長に対する質問調書中,「k丸の速力は,約5ノットで,普通に走って,釣場の洲端沖まで約20分くらいかかる。k丸のようなたちうお釣りの船は,釣りの準備を終えたのち,釣れるところに移動していく。」旨の供述記載により,04時30分に出航し,04時50分に漂泊地点に達したと認める。
11k丸が竣工時から法定の灯火設備を有していなかったことについては,船舶検査手帳抜粋写中の記載により,これを認める。
12k丸が漂泊していたことについては,s船長に対する質問調書中,「2本の釣り竿のうち,1本は完全に残っていたので,k丸は釣りの準備中で,漂泊していたものと思う。」旨の供述記載により,これを認める。
13k丸の衝突時の船首方向については,z丸の衝突時の船首方向及び衝突角度から求め,183度と認める。
(本件発生に至る事由)
1.z丸
事実認定の根拠1及び5より,受審人が,レーダーを休止したまま,機関を半速力前進にかけて進行したこと
2k丸
事実認定の根拠10,1.1及び12より,y船長が,夜間,無灯火のまま釣りのために漂泊したこと
(航法の適用)
本件は,徳島県徳島○○港において,法定灯火を表示しないで漂泊中のk丸と漁場に向かうため北上するz丸とが衝突したもので,海上衝突予防法上,航行中の動力船と無灯火で漂泊中の船舶との衝突には,適用すべき規定がないので,海上衝突予防法第39条の規定によるのが相当である。
(原因の考察)
z丸において,受審人が,レーダーを休止したまま,機関を半速力前進にかけて進行したことは,本件衝突に至る過程において関与した事実であるが,肉眼で十分な見張りを行っており,k丸が灯火を表示していたならば,同船を早期に視認することが可能であったので,本件と相当な因果関係があるとは認められない。しかしながら,これは海難防止の観点から是正されるべき事項である。
k丸は,竣工時から法定の灯火設備がなく,無灯火で漂泊していたが,自船の存在を周囲に知らしめる灯火を表示していれば,z丸が,k丸を早期に視認し,同船を避けることが可能であったものと認められる。
したがって,y船長が無灯火で,漂泊したことは,本件発生の原因となる。
(海難の原因)
本件衝突は,夜間,徳島県徳島○○港において,灯火設備を有しないk丸が,無灯火で漂泊したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
受審人の所為は,本件発生の原因とならない。
よって主文のとおり裁決する。

平成16年11月9日
神戸地方海難審判庁