児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

日本人大使館員に罰金判決 「裁判免除の特権ない」

 珍しい事例ですが、これ前例になるので、真剣にやっとかないと。
 外交官特権の条約の趣旨を重視すると、外交官の活動を保護する方向ということで、日本人職員にも免除を及ぼすべきことになるんでしょうが、そういう主張なんでしょうか。

http://www.asahi.com/national/update/1110/026.html
岡田裁判長は「刑事裁判権の免除には国内法の定めが必要。
しかし、日本にそんな法律や明文の定めは全く見あたらない」と述べ、
主張を退けた。 (11/10 20:33)

 なお、条文上、31条の訴追免責は「外交官」だけ。
 「使節団の事務及び技術職員並びにその家族の構成員でその世帯に属するものは、接受国の国民でない場合」については、37条で免責されますが、「接受国の国民である場合」については38条2項。「外交職員以外の使節団の職員又は個人的使用人であつて、接受国の国民であるもの又は接受国内に通常居住しているものは、接受国によつて認められている限度まで特権及び免除を享有する。もつとも、接受国は、その者に対して裁判権を行使するには、使節団の任務の遂行を不当に妨げないような方法によらなければならない。」ということで、接受国が決めることになってて、日本には特別法がないので、ダメだっていう結論になるんですね。

外交関係に関するウィーン条約
【法令番号 】昭和三十九年六月二十六日条約第十四号
【施行年月日】昭和三十九年七月八日外務省告示第九十一号
 この条約の当事国は、すべての国の国民が古くから外交官の地位を承認してきたことを想起し、
 国の主権平等、国際の平和及び安全の維持並びに諸国間の友好関係の促進に関する国際連合憲章の目的及び原則に留意し、外交関係並びに外交上の特権及び免除に関する国際条約が、国家組織及び社会制度の相違にかかわらず、諸国間の友好関係の発展に貢献するであろうことを信じ、
 このような特権及び免除の目的が、個人に利益を与えることにあるのではなく、国を代表する外交使節団の任務の能率的な遂行を確保することにあることを認め、この条約の規定により明示的に規制されていない問題については、引き続き国際慣習法の諸規則によるべきことを確認して、次のとおり協定した。
第一条 この条約の適用上、
 (a)「使節団の長」とは、その資格において行動する任務を派遣国により課せられた者をいう。
 (b)「使節団の構成員」とは、使節団の長及び使節団の職員をいう。
 (c)「使節団の職員」とは、使節団の外交職員、事務及び技術職員並びに役務職員をいう。
 (d)「外交職員」とは、使節団の職員で外交官の身分を有するものをいう。
 (e)「外交官」とは、使節団の長又は使節団の外交職員をいう。
 (f)「事務及び技術職員」とは、使節団の職員で使節団の事務的業務又は技術的業務のために雇用されているものをいう。
 (g)「役務職員」とは、使節団の職員で使節団の役務に従事するものをいう。
 (h)「個人的使用人」とは、使節団の構成員の家事に従事する者で派遣国が雇用する者でないものをいう。
 (i)「使節団の公館」とは、所有者のいかんを問わず、使節団のために使用されている建物又はその一部及びこれに附属する土地(使節団の長の住居であるこれらのものを含む。)をいう。

第三十一条 1 外交官は、接受国の刑事裁判権からの免除を享有する。外交官は、また、次の訴訟の場合を除くほか、民事裁判権及び行政裁判権からの免除を享有する。
 (a)接受国の領域内にある個人の不動産に関する訴訟(その外交官が使節団の目的のため派遣国に代わつて保有する不動産に関する訴訟を含まない。)
 (b)外交官が、派遣国の代表者としてではなく個人として、遺言執行者、遺産管理人、相続人又は受遺者として関係している相続に関する訴訟
 (c)外交官が接受国において自己の公の任務の範囲外で行なう職業活動又は商業活動に関する訴訟
2 外交官は、証人として証言を行なう義務を負わない。
3 外交官に対する強制執行の措置は、外交官の身体又は住居の不可侵を害さないことを条件として、1(a)、(b)又は(c)に規定する訴訟の場合にのみ執ることができる。
4 外交官が享有する接受国の裁判権からの免除は、その外交官を派遣国の裁判権から免れさせるものではない。


第三十七条 1 外交官の家族の構成員でその世帯に属するものは、接受国の国民でない場合には、第二十九条から第三十六条までに規定する特権及び免除を享有する。
2 使節団の事務及び技術職員並びにその家族の構成員でその世帯に属するものは、接受国の国民でない場合又は接受国に通常居住していない場合には、第二十九条から第三十五条までに規定する特権及び免除を享有する。ただし、第三十一条1に規定する接受国の民事裁判権及び行政裁判権からの免除は、その者が公の任務の範囲外で行なつた行為には及ばない。前記の者は、また、最初の到着にあたつて輸入する物品について、第三十六条1に規定する特権を享有する。
3 使節団の役務職員であつて、接受国の国民でないもの又は接受国に通常居住していないものは、その公の任務の遂行にあたつて行なつた行為についての裁判権からの免除、自己が雇用されていることによつて受ける報酬に対する賦課金及び租税の免除並びに第三十三条に規定する免除を享有する。
4 使節団の構成員の個人的使用人は、接受国の国民でない場合又は接受国に通常居住していない場合には、自己が雇用されていることによつて受ける報酬に対する賦課金及び租税を免除される。その他の点については、その者は、接受国によつて認められている限度まで特権及び免除を享有する。もつとも、接受国は、その者に対して裁判権を行使するには、使節団の任務の遂行を不当に妨げないような方法によらなければならない。

第三十八条 1 接受国の国民である外交官又は接受国に通常居住している外交官は、その任務の遂行にあたつて行なつた行為についてのみ裁判権からの免除及び不可侵を享有する。ただし、接受国によつてそれ以上の特権及び免除が与えられる場合は、この限りでない。
2 外交職員以外の使節団の職員又は個人的使用人であつて、接受国の国民であるもの又は接受国内に通常居住しているものは、接受国によつて認められている限度まで特権及び免除を享有する。もつとも、接受国は、その者に対して裁判権を行使するには、使節団の任務の遂行を不当に妨げないような方法によらなければならない。