児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノの芸術性を争う場合

 京都地裁の基準があって、別件の大阪高裁も追認してますので、それでいくのが楽。
 立証は、学者先生でも尋問するしかないが、人選が限られる。 

事実誤認〜芸術性について
本件写真集はいずれも芸術作品であるから、児童ポルノに該当しない。
したがって、本件写真集を児童ポルノに該当するとした原判決は事実誤認により破棄を免れない。
なお、原判決の「芸術性と児童ポルノ該当性は別次元である」という判断は、京都地裁の従来の判断と相反する。判断が分かれているところであるから、控訴審裁判所は判断を回避することは許されない。

第9−1芸術性は構成要件該当性の問題である。
立法の中心的メンバーであって、現法務大臣森山眞弓衆議院議員の著書「よくわかる児童買春、児童ポルノ禁止法」P47〜49は、芸術性は性欲刺激要件該当性・構成要件該当性の問題であると考えていた

「よくわかる児童買春、児童ポルノ禁止法」
(18)性欲を興奮又は刺激する」という要件を付したのは、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態を描写した者の中には、水浴びをしている乳幼児の自然な姿を撮影したものや、医学図書に掲載された児童の身体を撮影したものが含まれることになり、このようなものを処罰の対象から除外するためです。
(19)結局、第3号の児童ポルノの具体的な例としては、全裸又は半裸の児童に扇情的なポーズをとらせた姿態を描写した写真集等が考えられます。

芸術・学術目的で児童の姿態を描写したものについてまで構成要件該当性を認めることは、芸術学術活動を不当に制約することになる。3条はそのような不当な制約を諌める趣旨で、わざわざ設けられた規定である。

第3条(適用上の注意)
この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。

第9−2京都地方裁判所判決/平成12年(わ)第61号
京都地方裁判所判決/平成12年(わ)第61号は、芸術性は児童ポルノの要件のうち性欲刺激要件の判断に影響があり、芸術性を具える場合には児童ポルノに該当しないことがありうると判示した。

わいせつ図画販売、わいせつ図画販売目的所持、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反)被告事件
【事件番号】京都地方裁判所判決/平成12年(わ)第61号
【判決日付】平成12年7月17日
【判示事項】一いわゆる児童ポルノ法二条三項三号の解釈及び判断方法
二右条項の児童ポルノに該当するとされた事例
【参照条文】児童売春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2−3
【参考文献】判例タイムズ1064号249頁

第9−3原判決
原判決は「芸術的価値のあるものであっても、これを児童ポルノに該当するものとすることは差し支えない」と述べ、芸術作品でも児童ポルノに該当すること、芸術性と児童ポルノ該当性が別次元の問題であると判示した。

弁護人は、前記「天使のひみつ」、「BestSelection!」、「何でもないよ 磯崎祥子」の各作品は芸術作品であるから児童ポルノに該当しないと主張する。
しかしながら、芸術的価値のあるものであっても、これを児童ポルノに該当するものとすることは差し支えないから、弁護人の主張は、その余について判断するまでもなく理由がない。

第9−4原判決の問題点
第9−4−1判断方法
芸術性が児童ポルノ該当性に与える影響については、前の京都地裁判決が「判断の方法」として示すところが正当である。
つまり、児童ポルノ法3条の趣旨からは、芸術性があるものについては、児童ポルノ該当性が否定されることが有りうる。

三判断の方法
そして、性欲を興奮させ又は刺激するものであるか否かの判断は、児童の姿態に過敏に性的に反応する者を基準として判断したのではあまりにも処罰範囲が拡大してしまうことから、前記のとおり、児童ポルノの定義から最高裁判所判例の掲げる「普通人の正常な性的羞恥心を害し」という要件が割愛されているとしても、法の一般原則からして、その名宛人としての「普通人」又は「一般人」を基準として判断するのが相当である。
もっとも、三号児童ポルノの範囲が拡大すると、表現の自由や学問の自由等の憲法上の権利を制約することになりかねないという懸念もあろう。児童ポルノ法三条も、この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならないと定めているところである。
そこで、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態(以下「児童の裸体等」という。)を描写した写真または映像に児童ポルノ法二条二項にいう」性器等」、すなわち、性器、肛門、乳首が描写されているか否か、児童の裸体等の描写が当該写真またはビテオテープ等が全体に占める割合(時間や枚数)等の客観的要素に加え、児童の裸体等の描写叙述方法(具体的には、(1)性器等の描写について、これらを大きく描写したり、長時間描写しているか、(2)着衣の一部をめくって性器等を描写するなどして性器等を強調していないか、3児童のとっているポーズや動作等に扇情的な要素がないか、(4)児童の発育過程を記録するために海水浴や水浴びの様子などを写真やホームビデオに収録する場合のように、児童の裸体等を撮影または録画する必然性ないし合理性があるか等)をも検討し、性欲を興奮させ又は刺激するものであるかどうかを一般通常人を基準として判断すべきである。そして、当該写真又はビデオテープ等全体から見て、ストーリー性や学術性、芸術性などを有するか、そのストーリー展開上や学術的、芸術的表現上などから児童の裸体等を描写する必要性や合理性が認められるかなどを考慮して、性的刺激が相当程度緩和されている場合には、性欲を興奮させ又は刺激するものと認められないことがあるというべきである。

立法の中心的メンバーであって、現法務大臣森山眞弓衆議院議員の著書「よくわかる児童買春、児童ポルノ禁止法」P47〜49でもそう説明されている。

「よくわかる児童買春、児童ポルノ禁止法」
(18)性欲を興奮又は刺激する」という要件を付したのは、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態を描写した者の中には、水浴びをしている乳幼児の自然な姿を撮影したものや、医学図書に掲載された児童の身体を撮影したものが含まれることになり、このようなものを処罰の対象から除外するためです。
(19)結局、第3号の児童ポルノの具体的な例としては、全裸又は半裸の児童に扇情的なポーズをとらせた姿態を描写した写真集等が考えられます。
立法者意思としては、芸術性は性欲刺激要件該当性・構成要件該当性の問題であると考えていたことは明らかである。

「芸術的価値のあるものであっても、これを児童ポルノに該当するものとすることは差し支えない」という原判決は法3条を無視するものであり国民の権利を不当に侵害するものであるから許されない。

第9−4−2認定方法
芸術性が児童ポルノ該当性に与える影響については、個々の姿態毎に児童ポルノ該当性が判断されることからは、個々の写真ごとに検討することが必要である。この点については前の京都地裁判決が「各写真集等についての認定」として示すところは写真集毎にしか検討を加えておらず、児童ポルノの本質を見誤ったものであり極めて不充分と言わざるを獲ない。
そして、その際には写真集全体の壮丁等が考慮されるべきである。この点については前の京都地裁判決が「各写真集等についての認定」として示すところが正当である。
原判決は、芸術性について何の検討も加えていない点で、一審裁判所としての職責を怠っており、言語道断である。

第9−5本件写真集の芸術性
そこで前掲京都地裁判決の認定方法に従って本件写真集を検討すると、
いずれの写真集も
表現方法に性器等を強調する傾向がない。
性欲を興奮又は刺激する内容がない。
児童のポーズに扇情的な要素はない
児童の純真さを表現するという撮影者の意図が明らかである
装丁も芸術作品に相応しいもので、いわゆるエロ本とは思われない
と言う点で、性欲刺激要件に欠けるから、児童ポルノには該当しない。

本件写真集には、扇情的なポーズは全くない。立法者も、本件写真集のようなものは児童ポルノに該当しないと説明されている。

「よくわかる児童買春、児童ポルノ禁止法」
(18)性欲を興奮又は刺激する」という要件を付したのは、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態を描写した者の中には、水浴びをしている乳幼児の自然な姿を撮影したものや、医学図書に掲載された児童の身体を撮影したものが含まれることになり、このようなものを処罰の対象から除外するためです。
(19)結局、第3号の児童ポルノの具体的な例としては、全裸又は半裸の児童に扇情的なポーズをとらせた姿態を描写した写真集等が考えられます。

したがって、本件写真集を児童ポルノに該当するとした原判決は事実誤認により破棄を免れない。