児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」(同法2条3項3号)に当たるか否かを判断するに当たって,表現の自由や芸術活動を不当に侵害しないようにする必要があることは,同法3条が「この法律の適用に当たっては,国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。」と規定していることからも明らかである。そして,上記の判断に当たっては,当該画像等の具体的な内容に加え,それが作成された経緯や作成の意図等のほか,その画像等の学術性,芸術性,思想性等も総合して検討し,性的刺激

 児童ポルノの定義上、学術芸術を除外する規定がないのですが、性欲刺激要件の問題として除外される可能性があるというのです。
 芸術性と児童ポルノ該当性は別問題だと言い切った京都地裁判決もありましたが。

東京高裁H29.1.24
オ 芸術活動(表現の自由)等との関係
(ア)所論は,芸術分野においては,実在する児童のモデルにポーズをとらせてその姿を描写することは広く一般的に採られてきた方法であり,描かれたモデルがどこの誰であるかまで判明している作品も少なくないところ,原判決を前提とすると,このように長年優れた芸術とされてきた過去の名作の展示,販売,模写等が児童ポルノ法で禁止されることになる上,原判決の基準は,一般人からみて同一といえるか否かという曖昧なものであり,このような曖昧な基準によると,芸術活動に萎縮的効果を与えることになり,相当でない,このことは,現行児童ポルノ法3条の趣旨にも反するものである,などと主張する。
(イ)児童ポルノ法上の「児童ポルノ」に該当するかどうか,すなわち,「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」(同法2条3項3号)に当たるか否かを判断するに当たって,表現の自由や芸術活動を不当に侵害しないようにする必要があることは,同法3条が「この法律の適用に当たっては,国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。」と規定していることからも明らかである。そして,上記の判断に当たっては,当該画像等の具体的な内容に加え,それが作成された経緯や作成の意図等のほか,その画像等の学術性,芸術性,思想性等も総合して検討し,性的刺激等の要素が相当程度緩和されていると認められる場合には,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に当たらず,「児童ポルノ」には該当しないと解すべきである。
 所論が指摘するような歴史的絵画の展示や模写等については,そもそも,被写体の児童性や同一性が立証できない場合が少なくないと考えられるが,仮にこれらの立証が可能な場合であっても,このような学術性,芸術性,思想性等を総合して判断することにより,児童ポルノに該当しないと判断される場合が十分あり得るというべきである。
(ウ)なお,所論は,T意見書を引用し,原判決が,芸術性等の判断の考慮要素として,児童の裸体等を用いる必要性や合理性等を挙げた点を,表現の自由を否定するものと批判した上,本件CGは,人体の美しさの表現やその技術を追求するものであると主張する。しかし,本件CGの作成の動機及び作成方法については,原判決が認定したとおり,少女のヌード写真が児童ポルノ法で禁止されたため,CGで再現したいなどという動機から,その写真集等の画像データをパソコンに取り込んで切り貼りし,加工を施すなど,画像編集ソフトの機能を使い,半透明,透明のレイヤーを重ねて,写真の画像データをなぞるようにして輪郭線を描き,色を着け,陰影を着けるなどして作成したものであると認められるところ,本件CGの内容自体に加え,このような作成の動機や方法等に照らしても,本件CGが,芸術性等の観点から性的刺激が緩和されたものとして,児童ポルノヘの該当性が否定されるとは到底いえないことは明らかである。
 また,被写体となった人物と画像に描かれた人物との同一性の判断に関する基準の曖昧さを理由として,芸術活動に萎縮的効果を与えるとの点についても,前記のとおり,通常の判断能力をもつ一般人からみて同一性が認められる場合にのみ処罰の対象となるのであるから,法規範としての明確性を欠くものとはいえず,所論は前提を欠く。
(エ)なお,所論は,本件後に児童ポルノ法2条3項が改正され,児童ポルノの定義について,前記の文言に加え,「殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部,臀部又は胸部をいう。)が露出され,又は強調されているもの」(3号)という文言が加わっているところ,これが刑の変更(廃止)に当たり,現行法の定義を前提とした要件該当性を検討していないなどと主張する。しかし,平成26年法律第79号附則2条により,改正法施行前の行為については,従前の規定を適用する旨規定されているのであるから,この点に関する所論は前提を欠く。

阪高裁平成14年9月12日
所論は(2)本件各写真集はいずれも芸術作品であり,児童ポルノに当たらない・・・というのである
(2)の点についても,所論は,芸術性が児童ポルノ該当性に与える影響について,個々の写真ごとに検討すべきであるとの前提に立った上,本件各写真集は,いずれも,①表現方法に性器等を強調する傾向がない,②性欲を興奮又は刺激する内容がない,③児童のポーズに扇情的な要素がない,④児童の純真さを表現するという撮影者の意図が明らかである,⑤装丁も芸術作品に相応しいものであるから,児童ポルノに当たらないと主張する。しかしながら,芸術性が児童ポルノ該当性に与える影響については,本件各写真集をそれぞれ全体的に見て検討すべきである上,本件各写真集は,いずれも,全裸あるいは半裸姿の児童が乳房,陰部等を露出している写真が相当部分を占めており,上記①②及び④は妥当しないし,また,そのため,仮に,上記③及び⑤が妥当するとしても,本件各写真集が児童ポルノに当たらないとはいえない。