児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

公務員・児童買春・淫行条例違反・児童ポルノ製造・販売・懲役3年6月実刑となった事例 

あるイベントであった教員から、教員の児童買春で実刑になることはないのかという質問があったので、再掲します。

 公務員は懲戒免職になると「一定の社会的制裁を受けた」として減刑されるのですが、ここまでやるとだめですね。
 原判決後の贖罪寄附5万円では減刑されませんでした。
 判決文で見る限り、謝罪や被害弁償や示談交渉の痕跡はありません。

 「製造→所持→販売は牽連犯」という主張もして欲しいですね。

横浜地裁川崎支部H12.9.1
神奈川県青少年保護育成条例違反、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件

被告人を懲役3年6月及び罰金二〇〇万円に処する。
未決勾留日数中五〇日を右懲役刑に算入する。
右罰金を完納することができないときは、金五〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
(犯罪事実)
被告人は
第一
平成一一年九月上旬ころ、Aが18歳に満たない青少年であることを知りながら、結婚を前提とせず、単に自己の欲望を満たすためにのみ同女と性交しもって青少年に対し、みだらな性行為をし
第二
同年一一月一九日、日航ホテル客室内において、Bが満一八歳に満たない児童であることを知りながら、同女にその対償の供与を約束して同女と性交するなどし、もって児童買春をし
第三
別表一記載のとおり、同月一九日ころから平成一二年五月四日ころまでの間、前後三回にわたり同ホテルほか二か所において、C他1名が一八歳に満たない児童であることを知りながら、プチホテル「」客室内において、甲らに児童買春の相手方として引き合わせ、いずれもそのころ、右.日航がほか一名の児童に対し、.対償の供与の約束して性交させ、もって児童買春の周旋を業とし
第四
販売する目的で、同年三月二〇日ころから同年五月一一ニ日ころまでの間、ホテル「サ」一〇三号室及びホテル「キ」においてDが一八歳に満たない児童であることを知りながら、同児を相手方とする性交類似行為に係る同児の姿態をビデオカメラで撮影収録して、「アユミ」、「アユミ2」と題するビデオテープを製造し、もって児童ポルノを製造し
第五
販売する目的で、同年五月二三日、被告人方において、児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態を録画した児童ポルノであるビデオテープ合計二〇巻及びCD−R一枚を所持し、
第六
 別表二記載のとおり、同月三日ころから同月二六日ころまでの間、前後一〇回にわたり、
乙ほか九名に対し、運輸株式会社相模原若松営業所等から乙方ほか九か所に、児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を録画した児童ポルノであるビデオテープ合計二八巻を代金合計二〇万九〇〇○円で宅配ないし郵送の方法で送付して販売し
第七
平成一一年一〇月中旬ころ、東日本旅客鉄道株式会社川崎駅西口公衆トイレ付近において、B及びCの両名に対し、両名がみだりに吸入することの情を知りながら、興奮、幻覚又は麻酔の作用を有する劇物であって、政令で定めるトルエン約二00ミリリットルを授与したものである。
(量刑の理由)
本件は、多数の児童と買春により性交し、その際児童の性器や性交類似の卑猥な姿をデジタルカメラやビデオカメラで撮影し、これを利用して、販売目的で児童ポルノであるビデオテープやCD−Rを製造し更に、これをインターネットを通じてホームページに乗せたり電子メールを送付して広く宣伝して多数販売し、児童買春の周旋までして多額の利益を得ていた上、児童の歓心を買うために児童に対しトルエンを持ち出して授与したという案件であって、児童に対する性的搾取、虐待の限りを尽くした極めて悪質な犯行であり、被害児童の未熟さに付けこみ、その心身の健全な発育を阻害し、取り返しっつかない傷を与えたものである。しかも、社会に与えた衝撃の大きいことからも、被告人の刑事責任は非常に重いと言うべきである。
したがって、被告人は、身柄拘束を受け、現在では、悔やんでも悔やみ切れないなどと述べていて、反省している様子も窺えないではないこと、本件の発覚により職を失なったばかりか本件が報道されて非難にさらされ、同居しそいた母親も家に居れなくなるなど既に被告人自身強い社会的制裁を受けていること、被告人のために有利に掛酌すべき情一状を十分に考慮しても主文の刑が相当である。

公務員が児童買春・淫行条例違反・児童ポルノ製造・販売により懲役3年6月の実刑とした原判決を維持した例 東京高裁H13.2.27

東京高裁H13.2.27
主文
本件控訴を棄却する。
当審における未決勾留日数中110日を原判決の懲役刑に算入する。
理由
本件控訴の趣意は,弁護人作成名義の控訴趣意書記載のとおりであるから,これを引用するが,所論は,要するに,被告人を懲役3年6月及び罰金200万円に処した原判決の量刑は,重過ぎて不当であるというのである。
そこで,原審記録を調査し,当審における事実取調べの結果を併せて検討することとする。
本件は,被告人が,平成11年9月上旬ころ,ホテル客室において,女子高校生を相手として,みだらな性行為をし(原判示第1の事実),同年11月19日,同市内のホテル客室において,別の女子高校生を相手として,児童買春をし(同第2の事実),同月19日ころから平成12年5月4日ころまでの間,合計3回にわたり,上記ホテルほか2か所において,男性2名に女子高校生ら2名を児童買春の相手方として引き合わせるなどして,児童買春の周旋を業とし(同第3の事実),同月20日ころから同年5月13日ころまでの間,ホテルの客室において,女子中学生らを相手として,性交類似行為に係る同児の姿態を撮影して,児童ポルノのビデオを製造し(同第4の事実),販売目的で,同年5月23日,被告人方において,上記と同様の児童ポルノのビデオ20巻及びCD−Rを所持し(同第5の事実),同月3日ころから同月26日ころまでの間,合計10回にわたり,上記と同様の児童ポルノのビデオ合計28巻を代金合計20万9000円で販売し(同第6の事実),平成11年10月中旬ころ,JR川崎駅西口公衆トイレ付近において,女子高校生ら2名に対し,両名がみだりに吸入することの情を知りながら,劇物であるトルエン約200ミリリットルを授与した(同第7の事実)という事案である。
被告人は,己の欲望の赴くままに2名の女子高校生を相手にして違法に性交渉を持ったほか,多くの児童の姿態を撮影した児童ポルノを製造して,これを自ら開設したインターネット上のホームページ等を通じて知り合った者らに販売したり,児童買春の周旋を業として行ったりするなどの行為に及び,さらには交際していた児童の歓心をつなぎとめるため,トルエンを無断で持ち出してこれを授与するまでに至っているのであって,未熟な児童の心身の健全な成長を著しく損なう各種の行為を,常習的に行っていたものであり,また,げオの販売等により得た利益は,遊興費等に費消しているのであって,犯行態様,動機いずれの点からみても強い非難を免れない。加えて,規範意識の鈍麻は顕著というほかない。′これらの事情に照らせば,犯情は悪く,被告人の責任は重いというほかない。
そうすると,被告人が反省の態度を示していること,
原判決後5万円を贖罪寄付していること,本件によって一定の社会的制裁を受けていること,当審において実母が今後の監督を誓っていること,その他被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても,被告人を懲役3年6月及び罰金200万円に処した原判決の量刑は,やむを得ないものであって,それが重過ぎて不当であるとはいえない。以上の次第で,論旨は理由がない。